凡語 京都新聞トップへ

水木さんと昭和の日

 妖怪は鏡のような存在-。国際日本文化研究センターの小松和彦所長からこう聞いたことがある▼鬼や河童(かっぱ)、天狗(てんぐ)…。いずれも人間の心の闇、恐怖心を映し出したもので、人々は負の感情を重ねた。戦国時代や幕末など社会の情勢が不安定になると、必ず妖怪ブームが起こったという▼妖怪で浮かぶのは、漫画家の故水木しげるさんだ。93年の生涯をたどる「ゲゲゲの人生展」が大丸ミュージアム京都で5月8日まで開かれている。会場には少年期の習作や戦地のスケッチ、貧乏を極めた貸本漫画家時代の原稿、人気漫画の原画が並ぶ▼水木さんが残した傑作は妖怪だけではない。「コミック昭和史」(全8巻)もその一つ。ページをめくると、戦時のにおいをたっぷり含んだ昭和の気配が漂ってくる▼関東大震災から戦争、原爆投下、好景気、公害、天皇崩御まで自身の体験を交えながら、時代の光と影を描く。最終章では、平成に変わって「あの戦争へのやり場のないいかり(・・・)から解放された」と記した。きょうは昭和の日▼昨今、そんな時代をほうふつさせる影が覆う。「教育勅語」や「共謀罪」「朝鮮半島有事」、それぞれの事柄がどこかでつながっているよう。北朝鮮を巡る情勢は深刻さを増す。妖怪ブームの再来はいいが、暗い歴史は繰り返したくない。

[京都新聞 2017年04月29日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)