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ハイジからアカデミー賞へ

 40年以上前、あるテレビアニメが日本中の子どもたちを魅了した。とろけるチーズや干し草のベッドをせがまれて困った親が、どれほどいたことだろう。「アルプスの少女ハイジ」の印象は強烈だった▼当時の制作現場の詳細が、ちばかおりさんの著書「ハイジが生まれた日-テレビアニメの金字塔を築いた人々」に記されている。宮崎駿、高畑勲両氏をはじめ、後にアニメ界の巨匠と称される人々がいた▼海外旅行が一般的でなかった時代に、海外ロケハンを敢行したことに驚く。演出、レイアウト、作画や美術の各分野に優秀な仕事師がそろっていた▼過酷な仕事を乗り切れたのは、楽しみに待つ子どもたちの存在があったからだろう。宮崎氏は自著で「ぼくらはいい仕事をしたと、今でも誇りに思っています」と振り返る▼26日(日本時間27日)、米アカデミー賞が発表される。高畑氏の携わった「レッドタートル ある島の物語」が長編アニメーション部門にノミネートされている▼トランプ大統領就任で、受賞者のスピーチも注目されることだろう。かつてアカデミー名誉賞を受けた宮崎氏は「私たちの国は50年で一度も戦争をしなかった。このことが僕らの仕事にとって大きな力になった」と語った。揶揄(やゆ)や中傷でない、こんな力強い言葉を聞きたい。

[京都新聞 2017年02月26日掲載]

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