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地図を共有する

 町歩きの楽しみの一つは、案内してくれる人の視点や地域愛を共有できること。さまざまな人の視点を地図に上書きして誰でも見ることができれば、きっと楽しさが倍増する▼奈良市の奈良町で今日、それを試行する催し「超珍(ちょうちん)inならまち」がある。事前に参加登録した市民や観光客が、町で見つけた珍しい物事を書き留め、京都のベンチャー企業が開発したネット上の地図共有サービス「ストローリー」で一つの地図に仕上げ、皆で観賞する▼元興寺旧境内を中心に、町家が並ぶ奈良町。夏の夕暮れ、そぞろ歩きを楽しむ「ならまち遊歩」(16~25日)が今年始まった。町家の軒先に堤灯がともり、猿沢池に納涼床が出ている。周遊の仕掛けが「超珍」だ▼企画を担うNPOならそら代表の山本あつしさんは「この人と一緒に町を歩きたい」と思えるような地元ガイドや町歩き事業を生むきっかけにと願う▼「町には人々が営んできた物語や思い出が集積している。『何も無い町』なんて無い。自分と違う視点に気付ければ、日常生活も観光も、もっと面白くなるはず」▼自分なら奈良町で何を書き留めるだろう。昭和の薫り漂う椿井市場、京都とデザインの異なる仁丹の町名表示板…。地図に満載された人々の発見が、次の発見を生む。そんな循環を見たい。

[京都新聞 2017年08月19日掲載]

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