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もう1票の重み

 左手に持つてんびんは正邪を測る正義を、右手で高く掲げる剣は力を表すという。「正義の女神」テーミスは司法・裁判の公正さの象徴とされ、最高裁判所大ホールにもブロンズ像が飾られている▼ギリシャ神話に登場する女神なら「憲法の番人」の仕事ぶりをどう裁くのか。3極対決となった衆院選の陰に隠れてはいるが、もう1票の重さを忘れてはならない。きょう22日、同時に投票する最高裁裁判官に対する国民審査だ▼常に法にのっとり公正的確に判決を下すべき番人としての適否を国民が直接見定める仕組みであり、辞めさせたい裁判官の名前に「×」印を付ける。「×」票が有効投票の半数を超えると、その裁判官は罷免される▼18歳以上なら誰もが裁判官の見識や実績を確かめ、投票できる意義は大きい。参院「1票の格差」や再婚禁止規定、GPS捜査などを巡る司法判断に携わった7人が今回審査を受ける▼だが、国民の関心は必ずしも高くない。白紙委任で投票箱に入れる人が圧倒的に多い。戦後延べ172人が審査を受けたが罷免はなく、真剣に審査されたのか疑問が残る▼裁きに際して、時の政権への忖度(そんたく)は寸分もなかったか。先入観を封じる目隠しをしたテーミスが多いが、最高裁の像にはない。有権者も目を見開いて1票を投じたい。

[京都新聞 2017年10月22日掲載]

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