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現代アートユニット Yotta

派手な外見、包みこむノスタルジー

歴史や文化反映、ギャップに魅力

 週末の昼下がり、大型複合施設「グランフロント大阪」前の路上で「ドーン」と大きな音が響いた。トヨタ・ハイラックスの荷台にある「大砲」から「煙」が上がる。派手なTシャツの男2人が大砲から取りだしたのは、ポン菓子だった。すぐに、親子連れの長い列ができた。

知り合いの紹介で出会った2人。「ちょっとアートでもしようか、と始めた」という。石焼き芋販売車「金時」と木崎(左)と山脇(大阪府守口市)
知り合いの紹介で出会った2人。「ちょっとアートでもしようか、と始めた」という。石焼き芋販売車「金時」と木崎(左)と山脇(大阪府守口市)

 Yotta(ヨタ)の2人が表現する場は路上だ。美術館に収まりきらない巨大な創作物、行為、空間そのものが作品となる。ユニット名は、ギガやテラなど国際基準の情報単位で現在の最上級、10の24乗のヨタと、与太をかけている。山脇弘道は「二つ相反する意味が共存しているのが面白い」。イメージのギャップという面白さの探究は、象徴的に作品に表れる。

 代表作「金時」は石焼き芋販売車だ。高級車センチュリーにデコトラのど派手な電飾が載り、後部に那智黒石を敷いた特注の窯、ヤンキー仕様のマフラーみたいな煙突。劇的なミスマッチが魅力だ。木崎公隆は「小さいころ、光ってる車にすれ違っていいなあと思って。焼き芋を車で売るのも日本だけ。なくなるかもしれない日本の文化が残ってほしいという気持ちがある」。改良を重ね、数年後に東京の路上へ。ツイッターで拡散し、話題を集めた。今では毎冬、東京や関西で販売し、好評だ。

「金時」後部
石焼き芋販売車「金時」の後部

 「金時」は15年、「美と力と味と道が合体した」と岡本太郎現代芸術賞岡本太郎賞に輝いた。二人は翌年の展示で、岡本が「冷凍された5年間」として描かなかった戦争をテーマにした。そこで発表したのがポン菓子製造車「穀(たなつ)」だ。ポン菓子は戦時中、大阪の小学校の先生が児童をお腹いっぱいにしたいと願い、敵国アメリカの穀類膨脹機の図面をもとに兵器も作る工場で生まれた。生と死、戦争と平和、兵器と食糧。今でも世界の紛争地では、砲台を取り付けたハイラックスなど日本車が勝手に戦闘に使われている。その複雑さを内包した作品は、聖と俗など相対概念を矛盾のままぶつける岡本の対極主義に通じた。

「花子」 2011年(大阪市北区・中之島公園「おおさかカンヴァス2010」)
「花子」 2011年(大阪市北区・中之島公園「おおさかカンヴァス2010」)

 路上はある意味、社会の表象だ。山脇は小さいころ、天王寺公園で日雇い労働者たちが1曲100円で歌う青空カラオケを見ていた。学校前で妙な玩具を売る人がいた。「昔は怪しい文化が路上にあった。今はきれいになりすぎて社会に寛容さがない」。青空カラオケを題材に昨年、宮城・石巻で開かれた芸術祭に出品した。かつて捕鯨で栄えた牡鹿半島のその漁師町は、花街もカラオケ文化も津波で流された。ヨタは、地域の信仰の島を望むホテル屋上に特設ステージを作り、歌を奉納してもらった。地元住民、デイサービスの老人、芸術祭参加者が島に向かって熱唱した。突如出現した歌謡空間、歌う行為、それを聴く人、空の下で一つの作品になった。

「青空カラオケ」 2017年(宮城県石巻市)(c)Reborn-Art Festival 2017
「青空カラオケ」 2017年(宮城県石巻市)(c)Reborn-Art Festival 2017

 一見大がかりな装置や仕掛けに目を奪われるが、土地やものの歴史や文化について丹念な調査、聞き取りが基層になっていて、作品は奥が深い。「文脈が作品の中に入ってくる」。常に改良、更新しながら、日本のアイデンティティーを伝える。

ヨタ

 2010年結成。六本木アートナイト2010で「金時」を発表。15年、岡本太郎現代芸術賞岡本太郎賞受賞。「イッテキマスNIPPON」シリーズとして制作する。

木崎公隆(きさき・きみたか)
 1979年大阪生まれ。京都工芸繊維大繊維学部応用生物学科卒。

山脇弘道(やまわき・ひろみち)
 83年大阪生まれ。京都造形芸術大映像舞台芸術学科卒。京都造形芸術大非常勤講師。

【2018年05月26日掲載】