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時の重みが語る寺院建築の美

 京都には、数々の文化財がありますが、今、まさに平成の大修理とも呼べる文化財の修理、修復が行われています。
 それは、日本の寺院建築の平面積で五番目に大きい知恩院御影堂(みえいどう)と十番目の集会堂(しゅうえどう)。法然上人八百年大遠忌の記念事業で、平成十七(二〇〇五)年から三十一年まで十四年をかけた、総工費約六十五億円の大修理事業です。現在は、先に修理に取り掛かった集会堂が屋根瓦を降ろし、小屋組みを半解体し、破損材の補修、取り換え、締め直し、補強などが行われています。十月八日には、知恩院門主、関係者と伝統装束を纏(まと)った工匠たちにより、「曳綱(ひきつな)の儀」と永久に建物が朽ちないように祈願する「槌打(つちうち)の儀」という上棟式が厳かに行われました。
 集会堂は、寛永十(一六三三)年に火事により御影堂とともに焼失、十二年に再建されました。仏間、上段の間と畳二百九十七畳一室を持つ、法要の際に準備し、集合する建物であり、小分けにもできる機能的なお堂です。
 現場を指揮される京都府教育委員会文化財保護課の奥野裕樹技師(56)から、「集会堂を含む知恩院は非常にプロポーションの良い建物で美しく、実際より小さく見え、見た目の約一・五倍が本当の大きさになる」と伺いました。徳川家光時代に再建され、本当に上質の材料で丁寧に細かな仕事がされています。徳川家の威信と名誉を広く伝えるためだったのではないでしょうか。
ベテランから若手へ。文化財の修復には多くの人がかかわり、次の時代へと守り伝えられる
(写真上)文化財修復は「どこを直したかわからない」と言われるのがベストという。古材に合わせた微妙な古色塗りも重要な要素
(写真下)床の板材は、根太の幅に合わせて、微妙な凹凸が刻まれていた。「1枚の板も無駄にできない」という、文化財修復ならではの丁寧な仕事だ
 文化財の仕事は、一つ一つ補修が大切。古い部材を傷めず、埋め木をし、古色塗りをする。古色も色、調合、水加減は大工各々(おのおの)のレシピがあるそうです。また、間近で見た鴨居(かもい)を柱と柱の間に入れ込む作業は、釘(くぎ)など金具を一切使用せず、木の木質を計りながら削り、仕口を作り組み込んでいく迫力に圧倒されました。海外にはない、檜(ひのき)の木質が大工の技術を向上させたのでしょう。
 百年先の建築へ、時の重みと木々が語る日本の寺院建築の素晴らしさを実感します。