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動物への愛 羊毛で再現

フェルト作家 菅原由貴さん
フェルト作家 菅原由貴さん
フェルト作家 菅原由貴さん

 愛らしい目をしたキャバリア犬が、じっとこちらを見つめる。実際は羊毛だけで作り上げた額絵だ。額縁から浮き出るほどの立体的な仕上がりの秘けつを「目と鼻と口の位置が何より重要。ミリ単位の繊細さが問われる」と語る。

 宮城県石巻市出身。おとなしく、人見知りな幼少期は手芸に熱中した。高校卒業後、周囲の勧めで県職員の道へ。「安定しているし、ずっとここで働くわけでもないだろう、というくらいの気持ちだった」と打ち明ける。

 結婚、出産、離婚を経験して子育てに追われる中、2011年3月11日の東日本大震災に直面した。自身や家族は無事だったものの、津波に襲われて実家は全壊。変わり果てたふるさとの姿にぼうぜんとした。県職員として復興の仕事にも関わるうち、考えが変わり始めた。

 「やりたいことをやらないのは、自分にうそを付くこと。うその人生で終わってしまう。人って、本当にいつ死ぬか分からないから」。震災前から続けていたフェルトの小物作りを仕事にしようと、15年4月に川島テキスタイルスクール(京都市左京区)に入学。縁がなかった京都の地を初めて踏んだ。

 フェルトはふんわりとした手触りが魅力の一方、蒸し暑い夏場には需要が落ちる。そこでペットの額絵を考案し、16年7月に個人事業としてprefeM(同区)を設立した。針を刺す「ニードルフェルト」という手法で、ペットの写真を見ながら毛並みや色合いを天然のウールだけで再現する。何度もウールを重ね、独特の厚みや質感を出す技術を確立した。

 死んだペットの写真を額絵にしてほしいと依頼する人も多い。自身も飼っていたインコが死んだ際には「ショックで県庁での仕事中に涙が出た」と苦笑するほど。動物にひとかたならぬ愛情を寄せる。

 「写真とうり二つな出来栄えを見て、涙するお客様もいる。額絵が、ペットとの記憶をよみがえらせてくれるものならば、それはただのものづくりにとどまらないはず。誰かの心の癒やしにつながるという使命感を持って続けていきたい」

すがわら・ゆき 高校卒業後、宮城県庁へ入庁し、25年間勤務。2015年に退職し、同年4月川島テキスタイルスクール本科に入学した。現在はフェルト作家として活動する。注文は075(755)4150。京都市左京区在住。46歳。

【2018年06月10日掲載】