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(5)拠点再編

浮沈かかる地域経済
建物が解体された大同マルタ染工本社工場。歴史ある事業所の閉鎖が相次いでいる(京都市南区)
 京都市下京区の照明器メーカー、クロイ電機の本社は機械や仕事机が運び出され、がらんとしていた。窓の外に目を向けた黒井剛社長(58)は社歌の一節を口にした。「『仰ぐ比叡の山よりも』か。その比叡山も見えなくなるな」。昨年末、創業から五十六年構えた本社を京都府京丹波町の工場に移した。
 移転の最大の理由は、住宅着工の減少による照明器具の販売不振だ。「京都を去るのは悔しいが、本社と工場の二拠点を維持するのは難しい」と苦しい胸の内を明かす。
 「市内に残るよう強く要望したが…」。京都市産業振興課は落胆を隠さない。企業の流出は税収や雇用の減少を招く。市内ではほかにも歴史ある事業所の閉鎖が相次いでいる。
 創業六十六年の染色会社、大同マルタ染工(南区)は四月にも親会社の東洋紡によって清算される。「高級寝具の染色市場が縮小し、事業価値がなくなった」(東洋紡広報)。すでに工場は閉鎖され、大阪市の不動産会社に売却、約三万平方メートルが更地となった。フジックス(北区)は糸染め工場の山之内事業所(右京区)を昨年末に閉鎖、約七十年の歴史に幕を下ろした。東近江市の滋賀事業所に生産統合するためだ。
 市は新たな企業誘致を探るが、状況は芳しくない。市助成制度(従業員五人以上など)を活用した企業立地は〇六年度に十四件あったが、〇七、〇八年度は六件の見込み。「先行きも厳しい」(市産業振興課)とみる。
 景気悪化に伴う生産拠点の再編は府北部を直撃している。府が〇二年に分譲開始した福知山市三和町の工業団地「エコートピア京都三和」は、約三十万平方メートルの工場用地の一割しか売れていない。「進出に前向きな企業も十社ほどあったが、不況でみなトーンダウンした」。府商工部の幹部は頭を抱える。
 打開を目指す動きもある。京都市は昨年六月、大学の集積を生かし研究開発拠点を誘致する新指針を打ち出し、立地助成を従来の高度集積地区など二地区から市全域に広げた。
 府は今後も成長が期待できる環境関連や医療機器などの企業をターゲットに据える。知事自らセールスに出向き、長田野工業団地(福知山市)にジーエス・ユアサコーポレーション(京都市南区)の次世代ハイブリッド車用電池の研究開発拠点を誘致した。
 「不況に強い業種や成長企業を見つけ、いち早くアタックする」(府商工部)。生き残りに向けた企業の拠点再配置と将来投資をどう取り込むか、地域経済の浮沈がかかる。
【2009年1月13日掲載】