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日ロ首脳会談  領土問題にどうつなぐ

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領がモスクワで会談した。
 安倍政権が「新たなアプローチ」と位置づける北方領土での共同経済活動について、現地への合同調査団の派遣で合意するなど着実な具体化をアピールしたが、「本命」の領土交渉につなげられるかは見通せないままだ。
 北朝鮮、シリア情勢を巡って米ロ関係が緊張する中、米国に歩調を合わせる日本へのロシア側の不満も影を落としている。板挟みとなった日本が領土問題解決の糸口を探る難しさが改めて浮き彫りになったと言える。
 両首脳の会談は17回目で、個人的関係を土台に、昨年12月の山口会談で合意した共同経済活動をどう前に進めるかが注目された。
 5月にも始める現地調査は、事業案に優先順位をつけるためだ。昨年掲げた8項目の経済協力のうち都市開発、医療で一部具体化が進み、元島民の墓参で空路利用や手続き拠点の追加にも合意した。高齢化が進む元島民が往来しやすくなることは歓迎されよう。
 身近で実利のある成果を急ぎ、両国世論を味方に付けたいのが日本側の考えで、首相は「協力を積み重ね、双方の努力の向こうに平和条約(締結)がある」と改めて領土問題解決に意欲を示した。
 だが、共同経済活動の協議は北方四島の帰属問題を議題にしないことで一致しており、重ねても解決に直接結び付かない。日本側は現地で日本人が活動できる「特別な制度」整備を通じて領有権の議論に引き込みたい考えだが、ロシア側は「自国の法律に矛盾しないことが条件」として溝は深い。事業計画を先行させても実現は不透明と言わざるを得ない。
 ロシアのかたくなな姿勢は、冷戦後最悪とされる米ロ関係も影響している。今回、日ロは北朝鮮にさらなる挑発の自制を働き掛けることで一致した一方、プーチン氏は米国による軍事的な圧力を批判した。米国のシリア攻撃に理解を示し、北朝鮮対応で日米同盟の強化を急ぐ日本もけん制した形だ。
 一連の交渉でロシアは、東アジアで米軍の存在感の強まりに警戒感を示し、北方領土に新型ミサイルも最近配備した。日本が領土問題につなげようとするほど態度を硬化させかねず、米ロの間で難しいかじ取りを迫られている。
 国連のほか、北朝鮮問題の6カ国協議など対話の道を広げて緊張緩和を図るとともに、地域の安定と日ロの交流、協力の場として北方四島の将来像を共有できるかが事態打開の鍵となろう。

[京都新聞 2017年04月29日掲載]

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