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新幹線の安全   運行中止の選択あった

 半世紀以上、安全で正確な列車運行を誇ってきたJR新幹線への信頼が揺らぐトラブルである。年末年始の帰省シーズンを前に、徹底した原因究明が求められる。
 博多発東京行き「のぞみ34号」が走行中に車両から異臭や異常音がして、名古屋駅で運休にした事故で、運輸安全委員会は深刻な事故につながる恐れがあったとして、新幹線では初めての重大インシデント(事件やミス)と認定した。
 列車はきのう未明まで、停車したままで、事故のあった車両を切り離し、車両所に移動を始めた。新幹線を運行するJR5社は4800両の全台車を緊急点検する。
 運輸委員会の調査では、先頭から4両目の13号車で台車枠に亀裂ができていたことが分かった。台車枠が破損すると、脱線につながる可能性があるという。
 モーターの駆動を車輪に伝える管が黒く変色しており、付近に油が漏れていた。台車枠の破損は過去になく、車両を保有するJR西日本の対応は迅速さに欠ける。
 残念なのは、異常に気付いてから列車を止めるまでに約3時間を要したことだ。博多駅出発後、すぐに乗務員が何かが焦げたにおいに気付き、岡山駅では乗客が車内に「もやがかかっている」と告げている。岡山駅からは保守担当者が乗り込み、うなるような異常音を確かめ、京都駅付近でも異臭がしたのに、そのまま名古屋駅まで運行を続けていた。
 16両編成で走るのぞみやひかりには1千人前後の乗客がいる。列車が脱線した場合、対向してくる列車にも危険が拡大する。分、秒刻みの正確な運行が新幹線の魅力だが、乗客の安全こそ最優先すべきだ。いったん列車を緊急停止させれば、車両の床下の点検で車両異常を発見でき、運行を中止できた可能性がある。
 東京駅でひと運行を終えた車両の発車準備の慌ただしさはよく知られる。わずかの時間で車内清掃を終えて再び出発させる係員の手際の良さに驚く。しかし、肝心の車両の点検にどれだけ時間をかけているのか。
 今回は新大阪駅でJR西日本からJR東海に乗務員を交代したが、トラブルが正確に伝わったのか。社員間の情報交換の方法について検証が必要だ。
 鉄道の基幹部分である台車に亀裂が入った原因を究明し、部材に弱さがなかったのか、設計段階を含めて調べてほしい。運行前日に行ったという車両の目視点検や車両点検が十分だったのか、吟味することも大切だ。

[京都新聞 2017年12月16日掲載]

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