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北朝鮮実験中止  非核化の道筋描けるか

 「非核化」実現に向けた一歩になるのかどうか、慎重に見極めなくてはならない。
 北朝鮮が朝鮮労働党の中央委員会総会で、北東部の核実験場廃棄や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止を表明した。事実上の核開発凍結宣言である。
 しかし、非核化そのものへの言及はなかった。実験場の廃棄のスケジュールなど具体的な手順も示していない。
 一方で、決定書は「わが国に対する核の威嚇がない限り、核兵器を絶対に使用しない」と明記し、現有の核兵器維持を前提にした内容となっている。
 金正恩(キムジョンウン)委員長は「国家核戦力建設という大業を短い期間で完璧に達成した」と主張した。核保有国としての地位を国際社会に訴えようとする意図もうかがえる。
 米朝首脳会談実現に向け、実験中止によって非核化の真剣さをアピールし、主導権を握ろうとの思惑がありそうだ。日本にとっては、日本を射程に収める短・中距離弾道ミサイルが凍結の対象外となっている点も看過できない。
 日米が北朝鮮に求めているのは「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」が基本である。現時点で事態が大きく前進したとは言えないだろう。
 北朝鮮は6回にわたって核実験を繰り返し、国際社会から厳しい経済制裁を受けている。過去には国際的な枠組みによる核放棄の約束がほごにされたこともある。
 とはいえ、平昌五輪をきっかけとしたここ数カ月の融和、対話ムードの高まりで、北朝鮮を巡る情勢が新たな局面を迎えているのは間違いない。
 背景には「先制攻撃」も辞さないトランプ大統領を北朝鮮が本気で恐れていることや、制裁の効果で政権維持が危うくなっていることもあるとみられる。
 この流れを朝鮮半島の平和と安定へどう結びつけるか。「最大限の圧力」を方針とする日本も、あらためて戦略を練り直す必要がありそうだ。
 今回の決定に、トランプ米大統領は「北朝鮮と世界にとって非常に良いニュースだ」と歓迎し、韓国大統領府は「非核化に向けた意味ある進展だ」と評価した。安倍晋三首相も「前向きな動きと歓迎したい」と歩調を合わせた。
 27日に迫った南北首脳会談で北朝鮮がどんな出方をしてくるかは依然不透明だ。いかに具体的な非核化への道筋に誘導するか、日米韓の結束も問われよう。

[京都新聞 2018年04月23日掲載]

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