The Kyoto Shimbun

高精度の手仕事継承

長島精工(宇治市大久保町)

 若い技術者が中腰の姿勢で工作機械用部材の金属面を削る。長さ約50センチもあるのみ状の工具に体重をかける。2、3分も続けると額に汗がにじむ。組み立て前に部材がすれ合う面を限りなく平らに近づける。この「きさげ」という重要な工程は、すべて手作業となっている。

 部材の金属面は完全な平面同士だと真空状態になり、動かない。このためきさげで金属がすれ合うのに最適な凸凹の形状を作り、凸部分の高さを3−5マイクロメートルにそろえる。作業は3個の部材を対象に同時に進める。3個の部材に粉をつけ、相互にすり合わせて見比べると、2個を比べるよりも確認のパターンが増え、きさげの精度が一段と向上する。この確認作業を「三面ずり」と呼んでいる。

 きさげと三面ずり。この仕事は「きちんと高さがそろい、計測数字が出るまで終わらない無制限の勝負」。長島善之社長(64)は数カ月間にわたる手作業の厳しさをこう表現する。

 長島精工が製造しているのは、超精密平面研削盤などの工作機械。半導体や電子部品などの生産に不可欠な金型を作る装置で、半導体の微細化や高性能化によって求められる加工精度は年々高まっている。

 人の手できさげと三面ずりを施した工作機械は、金型の材料となる加工対象物を0・2マイクロメートル単位で研削できる。コンピューターによる数値制御(NC)の工作機械でも実際にこれだけの精度は出せないという。


職人技が光るきさげの工程。金属面の凸凹の高低差を数マイクロメートルにそろえる(宇治市大久保町)
 表面が均一のため作動にぶれがなく、耐久性も業界最高水準。国内外の半導体や電子部品などの大手メーカーからは注文が途切れない。最初の自社製品を発売した1985年以降、累計1000台以上を出荷した。

 きさげと三面ずりの工程はかつて多くの企業が日常的に行っていた。だが体力や忍耐が必要な手作業だけに、80年代に入ると担い手が減った。多くの企業で技術伝承が途絶えた結果、「きさげと三面ずりを昔からの技術でそのまま受け継いでいるのは世界でも当社だけになった」(長島社長)。

 長島社長は15歳で技能養成工として三菱重工業に入り、25歳で旧労働省認可の一級技能士に合格した。退社後も「手作りでないと本当の精度は出ない」と信じ、まだ29歳だった1973年に個人創業した。下請けからの出発だった。

 部材の製造は外部委託しているため、約3400平方メートルの本社工場には製造装置が見当たらない。工場には社員の手作業の音だけが響く。

 現在、技能士資格を持つ社員は33人に上り、全社員の7割以上を占めるまでになった。「うちはメーカーだが設備は何もない。だから社員が一番大事」と長島社長。たゆまぬ技術継承が最先端のものづくりをこれからも支え続ける。

=おわり

[京都新聞 2008年3月16日掲載]

 脈々とものづくりの技が受け継がれている京都と滋賀には、こだわりの技術を磨き上げ、業績を伸ばしている企業が数多くある。大手企業の製品を影で支える京滋の中小企業の独自技術に光をあて、ものづくりの原点を探る。  毎月第3日曜日に掲載します。

≪メモ≫長島精工
1973年創業、77年に株式会社化した。資本金1千万円。従業員43人。売上高は約13億円。京都中小企業優秀技術賞受賞。経済産業省が選んだ2007年版「元気なモノ作り企業三百社」に名を連ねる。今年1月、旧日産車体跡地を活用した工業団地「京都フェニックス・パーク」内に新本社が完成した。京都府の要請で長島社長が技術指導に訪れた中国・西安市にも工場を持つ。

手仕事で高性能、長寿命を実現した超精密平面研削盤

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