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合同巡行の48年 前祭・後祭再び

(上)安定

観光収入、風情を代償に

室町通を北進する大勢の見物客。前祭の宵山の賑わいが後祭地域へとなだれ込む(2012年7月、京都市中京区)
室町通を北進する大勢の見物客。前祭の宵山の賑わいが後祭地域へとなだれ込む(2012年7月、京都市中京区)

 昨年8月、八坂神社(京都市東山区)で、後祭(あとまつり)巡行の再開を発表する記者会見が開かれた。席上、祇園祭山鉾連合会理事長の吉田孝次郎さん(77)が語った。「観覧席からの収入によって、巡行補助金が毎年支給されるようになった。これが合同巡行で得た一番大きいことかもしれません」

 48年にわたった合同巡行を端的に総括してみせた。

 祇園祭の主役は本来、八坂神社の神輿(みこし)だ。それゆえに、神輿渡御(とぎょ)の「先触れ」と位置づけられる山鉾巡行は、毎年7月17日の神幸祭に伴う前祭(さきまつり)と、還幸祭が行われる24日の後祭に分かれていた。

 ところが戦後、「信仰か観光か」の議論を喚起しつつ合同巡行へと突き進む。1956(昭和31)年、前祭の巡行路が松原通から広い御池通に移り、有料観覧席が設けられた。時はまさに高度成長期、64年の東海道新幹線開業も追い風に観光客は増え続ける。そして66年、観光化の象徴として、当時の前祭20基に後祭9基が吸収される形で、17日の合同巡行が始まった。

 この間、府や市、市観光協会などから祇園祭協賛会を通じて毎年、巡行補助金が山鉾町に注がれてきた。近年は8千万円超が連合会に託され、大型の山鉾を持つ10保存会は一律482万5600円、他の保存会にも収入に関係なく各135万2千円が配られている。

 後祭の役行者(えんのぎょうじゃ)山保存会によると、年間の経常費用は約630万円。一方、ちまき販売など事業収入は140万円ほどだ。「山の修繕費も必要。巡行補助金がなければとてもやっていけない」と、同保存会理事長の林寿一さん(61)は話す。

 かつて後祭の宵山は「そぞろ歩きのできる静かな祭りだった」(浄妙山保存会理事長の高谷皎二さん)という。今や前祭の宵山の人出が蛸薬師通以北にまでなだれ込み、往時の風情は見る影もない。その代償として、ちまきや関連グッズなどの販売収入を手にした。

 昨年までの25年間で、宵山3日間の人出は計2365万人。33保存会の2012年度の経常収入は計約5億1千万円で、うち8割を前祭の23保存会が占める。関連グッズや初穂料などの収入では5千万~30万円台の格差があるが、合同巡行が一定の「安定」をもたらしたことは間違いない。

 今年、「祭り本来の姿に戻す」として巡行が分離される。後祭復活に伴い、自主警備費や広報費などのうち835万円を、33保存会が収入に応じて分担することを決めた。費用面で、前祭の協力がなければ後祭が成り立たないのが実情だ。

 後祭の宵山では露店は出ず、前祭でも縮小する。祭り全体の収入減を危ぶむ向きもある。「数年後もやっていけるのか」。そんな声が早くも山鉾町から聞かれる。

         ◇

 今年の祇園祭で、7月24日の後祭巡行が復活し、前祭(17日)と分離されたかつての姿に戻る。「祭りの本義」とは異なる観点から行われてきた「合同巡行」は何をもたらしたのか。48年間を振り返り、今後を展望する。=3回掲載します。

【2014年7月3日付京都新聞朝刊掲載】

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