京都新聞 こころのわ きづく つながる ささえあう

「こころのわ~きづく つながる ささえあう~」 座談会

子どもたちの「こころ」の悩みに周りの大人や地域がどう気付き、寄り添うことができるかを考える
京都新聞主催のキャンペーン「こころのわ ~きづく つながる ささえあう~」。今回、キャンペーンの総括として
苦しむ子どもに寄り添う活動を続ける、NPO法人チャイルドライン京都理事長の外村まき氏、
長年いじめや不登校などの問題に取り組んでいる、京都教育大教育臨床心理実践センター長・教授の本間友巳氏、
高校時代に不登校を経験し、現在は書道家として活躍する武田双鳳氏に、
親や地域・社会が取り組むべき課題や役割などについて語り合っていただきました。

受容と共感で寄り添い、心の居場所づくりを

外村まき氏

子どもの自己解決能力を信じて受け止める NPO法人チャイルドライン京都 理事長 外村まき氏

本間友巳氏

休養の必要性を認め、包括的な支援が必要 京都教育大 教育臨床心理実践センター長・教授 本間友巳氏

武田双鳳氏

すべての人が心に余裕を持てる社会環境へ 書道家 武田双鳳氏

-いじめの認知件数や不登校が近年増加しています。また、インターネットや会員制交流サイト(SNS)の普及で子どもたちのコミュニケーションも変容してきたといわれます。子どもたちを取り巻く状況についてお聞かせください。

本間◉最新のいじめの認知件数は全国で約32万件(文部科学省2016年度問題行動・不登校等調査)と過去最多です。都道府県別では京都府がこの数年最多です。認知件数の増加は、先生や保護者がいじめを見落とさないように積極的に報告・対処している現れという評価もできます。今の子どもは、昔の子どもと比べると友達との人間関係に非常に気を使っていると思います。
外村◉チャイルドラインは18歳までの子ども専用電話で、年間の着信件数は約20万3千件にもなります。かけてきた動機は「誰かに話を聞いてほしい」「(人と)つながっていたい」などが多いです。最近はSNSで今すぐ返事をしなければ友達とつながっていられないという訴えが目立ちます。
武田◉私の書道教室に通う生徒からもSNSのグループに入ると返信のやりとりだけで一日が終わるという話を聞きます。大人もですが「いいね」の数を競い、それで自分の評価を決めてしまうことがあるようです。私は高校時代、不登校でした。引きこもりの子は自分に自信がないといいますが、子どもが自分の中にある自信に気付く環境づくりが大事ではないかなと感じています。
外村◉電話で子どもの話を受けるとき、子どもには自己解決能力があると信じて話を聞くと随分違ってきます。子どもの問い掛けに大人はつい問題解決思考で答えがちですが、子どもが自分で答えを見つけられるよう、気持ちに寄り添って聞くように心掛けています。
武田◉電話でしゃべりながら、子どもは自分の心の声に気付くわけですね。
本間◉自分の心の声は、ダイアローグ(対話)で他者を介さなければ聞こえにくい。不登校の子やいじめに遭っている子は自己否定感を持ちがちですが、気持ちを丸ごと受け止めてもらえると楽になり、ネガティブな感情が中和され変化するきっかけにもなりますね。

-子どもの「居場所」をつくることが大切だといわれます。武田さんの不登校の経験をお聞かせください。

武田◉学校に行きたくないわけではないけれど朝、起きられなくなりました。学校に行けば楽しいのに、体が向かない。それが何だったのかはいまだに分かりません。ただ集団行動が多少苦手で、今でも大勢でのバーベキューなどは苦手です。でも自分が教える立場だと、相手が何十人いても大丈夫です(笑)。
本間◉学校には集団独特の圧力や空気がある。なじみやすい子もいればなじみにくい子もいて、武田さんは後者だったのでしょう。2017年2月に施行された教育機会確保法には、不登校児の休養の必要性を認めて支援しようと明示されています。武田さんも引きこもってエネルギーを蓄えることが必要だったのかもしれませんね。
武田◉私が引きこもりから抜け出せたきっかけは、高校の修学旅行でした。集合時間に遅れていましたが、母が「今なら間に合う」と新幹線の駅まで車を飛ばしてくれて。京都に来てみたら、すごく楽しかった。九州から出たことは、とても大きな経験だったと思います。
外村◉「学校に行きたくない」ということは、子どもの一つの意思表明。武田さんは体でそれを訴えたのでしょうね。その後つらい状況から脱出できたけれど、50歳になっても抜け出せない人もいるので、そういった人たちへの支援も必要だと思います。
本間◉休養し過ぎると現状から抜け出せなくなるという問題は確かにあります。1980年代までは不登校の子は本当に居場所がなかった。90年代から文科省の施策も変わり、学校以外に学べる場所が増えました。教育支援センター(適応指導教室)は90年初めは約20カ所だったのが、今では約1400カ所です。京都市には不登校を経験した生徒を受け入れている特例校(京都市立洛風中学校、京都市立洛友中学校)や、多様なニーズを持つ生徒を積極的に受け入れている高校(京都府立清明高校)があります。民間のフリースクールも含め居場所の多様化が、この20年で進んでいます。
武田◉学校以外の居場所があると、休養から抜け出しやすいのかなと思います。書道教室に通う生徒の中には中学3年間は不登校だったけれど、この春から高校に進学し通っている子もいます。
本間◉居場所には二つの機能があります。一つは安心感が持てる、もう一つは何かを遂行、達成できる。being(いられる)とdoing(する)の二つがそろうと、その子を発達、成長させる場所になると思います。

-95年から始まったスクールカウンセラー制度も、子どもの問題解決を支える一つとして期待されています。

本間◉京都府内では臨床心理を学んだ専門家約200人が中学を中心に配され、週1回程度活動を行っています。大事なのは、教師と子どもしかいない集団に、異なる専門性を持った人が入るということです。違う感性、考え方を持つ人との出会いで教師の見方が広がったり、気持ちが楽になる子も生まれます。
武田◉私の子ども3人は小学生ですが、いじめの調査が頻繁にあり先生も大変だと思います。子どもを受け入れる側の先生も、心の余裕を持つことができる環境が大事でしょう。
本間◉確かに保護者と地域が力を合わせて解決するようにしていかないと、先生の過労の問題も解決しません。
外村◉チャイルドラインでも、先生が話を聞いてくれない、話をしたいのに話せる空気ではないとよく聞きます。先生だけでなく周りの大人が子どもの気持ちに寄り添って傾聴し、受容し、共感していくことができたら、子どもたちも「話せて良かった」という気持ちになり、自分で気付くこともあると思います。
本間◉相手の気持ちを理解しようとする「受容」「共感」は人間関係の基本で、相手を変える大きな力になる。大事なのは当事者が受容されたと感じること。受け入れられたと思えたときに子どもは少し元気になり、そこから次の段階に進める。同時に保護者のサポートもとても重要です。いじめられた子の親はこれまでの子育てを否定された気分になったり、複雑な思いのぶつけどころがなかったりと、あらゆる矛盾が心の中で起きる。そんな保護者の気持ちを受け止めながら、問題の解決に向かっていくことが大切です。
武田◉親が子どもにできることは限られているような気がします。立派な大人に育てなければと思った時点で、親も子どももしんどくなる。親も一人の自分に戻る“楽屋”みたいな所が持てたらいいのではないかと思います。随分心配をかけた母も、書道という場に救われていたのだろうと思います。

-大人も子どもも、自分の「居場所」を見つけることが大切ですね。最後に、子どもたちへのメッセージをお願いします。

本間◉人生には嫌なこと、つらいことは必ずあり、トラブルのない人間関係はありません。でも、それが人間としての厚みや豊かさをつくっていくのは間違いない。遠慮することなく周囲の人の力を借りながら、乗り越えた後に開ける見晴らしの違う新しい景色を、ぜひ見てほしいと思います。
武田◉心地よい感覚が体に生まれると、勇気につながる気がします。今つらさを感じている子どもには、まず深い呼吸ができるように体を整えてほしいですね。いつかきっと輝ける時が来ると思います。
外村◉チャイルドライン京都を始めて18年。今ではいろんな話を子どもが聞かせてくれます。「相談」と構えなくていい。悩みじゃなくても、どんな日常のささいなことでも、何でも私たちは受け止めます。話を聞いた人が地域でつながり、子どもは今こんな思いなのだねと、温かなまなざしを注ぐ。そういう人たちに包まれているのだよと伝えたいです。

◉虐待、いじめ、不登校、引きこもり。現代の子どもたちを取り巻く環境が大きく変わり、各種件数で過去最多を更新しています。生きづらい現代社会でさまざまなしんどさを抱える思春期の子どもたちにどう向き合うべきか。SOSにいち早く気付き、支え合うこころ豊かな社会の実現に向けて考えなければいけない現実です。

  • 2018年5月公開 心の居場所づくりを
  • 2017年11月公開 ゆっくり、じっくり歩もう
  • 2017年9月公開 多様な世代との交流体験
  • 2017年7月公開 地域が一体となって 子どもたちを見守り続ける
  • 2017年5月公開 遊びの場を作ることが大切です。
  • 2016年10月公開
  • 2016年08月公開 90270人
  • 2016年06月公開 3888人
  • 2016年04月公開 1.51人
  • 2016年02月公開 86.3%
  • 2015年10月公開 美しく優しい言葉
  • 2015年08月公開 気付きはよりどころです。
  • 2015年06月公開 つながりは明日です。
  • 2015年04月公開 思いやりは未来です。
  • 2015年02月公開 無関心は暴力です。
  • 2014年12月公開 想像力はきずなです。
[主催]
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