京都新聞 こころのわ きづく つながる ささえあう

子どもたちの元気のために、子どもたちの笑顔のために、子どもたちの未来のために、子どもたちの可能性のために、支え合うことのできる豊かな社会。たとえそれが理想だとしても、粘り強く目指していきたい。児童虐待件数は7万件を超え、小中高校でのいじめの認知件数は20万件に迫るという無視のできない現実。そんな現代社会だからこそ、人とのつながりの中に生まれる豊かな関係性が、傾きかけた子どもたちの心の支えになる。「きづく つながる ささえあう」、そんな温かい「わ」が、静かに、そして確かに広がる社会。社会に、大人に、自分自身に問いたいキャンペーンです。

想像力はきずなです。

京都新聞創刊135周年

子どもたちの心の叫びに耳を傾けていますか

子どもたちに優しさを

水谷 修

花園大客員教授

1991年秋のバブル経済の崩壊以降、 20年以上にわたる閉塞的な経済状況の中で、 今、 日本の社会全体が、 いらいらした嫌な社会になってしまいました。 みなさんにお聞きしたい。 みなさんの家庭では、 この一年間、 温かい、 優しい、 思いやりのある言葉と、 ひどい、 きつい、 思いやりを忘れた言葉、 どちらが多かったですか。 私は、 講演会のたびに、 来て下さった方々に聞いていますが、 ほとんどの人が、 後者に手を上げます。 みなさんの会社や地域ではどうですか。
この社会全体のいらいらが、 社会の中で最も弱い立場の子どもたちのところに集約されています。 そして、 家庭でも学校でも、 認められるより否定され、 褒められるより叱られ続けた子どもたちが、 四つの大きな問題を、 私たち大人に突きつけてきています。 元気のいい子は、 ふてくされ、 親も先生も自分のことなんてどうでもいいんだと、 夜の世界に。 そして、 非行、 犯罪や、 一時の救いのために薬物乱用に走ります。 何とか、 日々耐え続けた子どもの一部は、 自分のいらいらを、 仲間をいじめることによって解消しようとします。 また一部の子どもは、 耐えきれず、 こころを閉ざし、 不登校や引きこもりに。 そして、 まじめでこころの繊細な子どもは、 こころを病み、 リストカットや自死へと向かっています。
みなさんにお願いがあります。 優しさには、 お金は必要ありません。 ただ少しのこころの余裕があればいいのです。 どうぞ、 みなさんの家庭で、 地域で、 子どもたちに、 一日30個は、 美しい言葉、 優しい言葉、 褒めてあげる言葉をかけてあげてください。 愛されている自覚のある子どもは、 決して夜の世界には入りません。 受けた愛を裏切ることのないように、 しっかりとまじめに生きてくれます。 また、 自分に自信のある子どもは、 決して人をいじめません。 それどころか、 いじめられている仲間を守ってくれます。子どもたちは、 今、 みなさんからの優しさを待っています。

水谷 修(みずたに・おさむ)

1956年、横浜市生まれ。上智大文学部哲学科卒業。横浜市にて、高校教員として勤務。中・高校生の非行・薬物汚染・心の問題に関わり、生徒の更生に取り組んでいる。現在、花園大客員教授、上智大文学部哲学科講師。

子どもたちの笑顔があふれるために

外村 まき

NPO法人 チャイルドライン京都代表

午後4時、 チャイルドライン京都ラインルームの電話のベルが鳴り始めます。 午後9時までの5時間で80件余り。 「何を話してもいいのですか?」 「いじめられているんです」 「地球の果てまでいくと、 どうなるのですか」 子どもたちからの声が届きます。
チャイルドラインは、 18歳までの子どもが、 誰でもいつでも、 どこからでもかけることができる子ども専用電話です。 全国71団体と連携し、 指示や指摘をせず、 ありのままの子どもたちの声を受けとめています。 2013年度1年間の着信件数は約21万件。 この着信件数を私たち大人はどう受けとめたらいいのでしょう。
チャイルドラインにかかってくる内容は、 人間関係・雑談・性への興味関心・身体やこころに関すること・いじめ・恋愛・学びや進路・将来について。 その子どもたちの言葉からは 「聴いてほしい、 誰かとつながっていたい」 という気持ちが、 ひしひしと伝わってきます。
話の中から見えてくるのは、 「大人は支配的で権威を振りかざす存在」 と思っている子が少なくないこと。 しかも、 「大人たちに、 言いたいことが言えない」 環境に置かれているということ。 私たち大人は子どもたちのこの気持ちに気付いているのでしょうか? 子どもが話しているときに子どもたちの話を聞かず、 ついつい大人の立場から口を挟んでいませんか。
子どもたちが話し始め、 最後まで話し終えるのを待つことはできていますか。 子どもたちは自分の本音を受けとめ、 自分たちと本気で向き合ってくれる大人の存在を求めています。
人は話すことで次の一歩を歩み出せます。 家庭や、 学校、 地域で、 子どもたちに温かい眼差しで、 子どもが話してくれるのをじっくり待ち、 そのこころを受けとめませんか。
「聴いてほしい、 つながっていたい」 という気持ちに気付くことで、 地域社会が活性化し、 子どもたちの笑顔があふれ、 大人も子どもとともに心豊かに生きることのできる社会が実現すると信じています。

外村まき(とのむら・まき)

1947年、高知県生まれ。京都で看護師として働く傍ら子どもの健全な育成に関わる団体のメンバーとなる。2000年、NPO法人京都子どもセンター設立に関わり理事長に就任。11年、NPO法人チャイルドライン京都を設立し、事務局長に就任。14年代表に就任。

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