京都新聞 こころのわ きづく つながる ささえあう

子どもたちの元気のために、子どもたちの笑顔のために、子どもたちの未来のために、子どもたちの可能性のために、支え合うことのできる豊かな社会。たとえそれが理想だとしても、粘り強く目指していきたい。児童虐待件数は7万件を超え、小中高校でのいじめの認知件数は20万件に迫るという無視のできない現実。そんな現代社会だからこそ、人とのつながりの中に生まれる豊かな関係性が、傾きかけた子どもたちの心の支えになる。「きづく つながる ささえあう」、そんな温かい「わ」が、静かに、そして確かに広がる社会。社会に、大人に、自分自身に問いたいキャンペーンです。

想像力はきずなです。

京都新聞創刊135周年

子どもたちの心の叫びに耳を傾けていますか

現代の子どもたちの世界

原 清治

佛教大教授・教育学部長

今、 社会全体で子どもたちを守ろうという機運が高まっています。その成果もあって、 実際、 いじめの発生件数は減ってきています (文部科学省、 2012年19.8万、 2013年18.5万件)。 ただ、 それに代わって、 最近の子どもたちの間では、 ふざけに近い 「いじり」 という名の他者攻撃が増えつつあります。 いじめの形が変容してきているのです。 昔は仲間はずれにするという 「排除」 の現象がいじめの総体でした。 しかし、 今の子どもたちは仲間集団の中に 「いじる」 対象の子を組み込んでいますから、 周囲からは一緒にふざけているようにしか見えません。 いじられている本人も、 いじめられていると認識するのが怖いために楽しく遊んでいるようにふるまいがちです。 そのため、 周囲はそれに気付きにくくなるのです。
近年のネットツールは子どもの人間関係のあり方を変えました。 従来の対面型のコミュニケーションであれば、 相手の表情などから行間を読むことができましたが、 パソコンやスマートフォンなどでのコミュニケーションでは誤解が生じやすいのです。 さらに、 若い世代はいつの時代も仲間内でしか伝わらない多義性を持たせた言葉を作り出します。 その言葉をどう解釈するかは受け手側に委ねられています。 それがネットツールを介することで、 一層誤解を生む機会を増幅させるのです。 だからこそ、 現代の子どもたちは仲の良い友達に一番気を遣い、 相手が自分をどう思っているのか不安なのです。 そのため、 いつもネットでつながっているわりに仲間同士の帰属意識が弱く、 数多くのグループとのつながりを持っていないと怖いのです。
そんな現代の子どもたちのために何が重要なのでしょうか。 それは、 直接型のコミュニケーションだと思います。 たとえば親子間でしっかりと対話し、 互いに共有できるルールをつくることで行動規範やコミュニケーション力が自然に身に付きます。 現代は、 親子で対話する時間が極端に少なくなっていますが、 まずは子どもたちの世界をより深く知ろうとすること。 指導を急がず、 子どもの話を注意深く聞いて理解し、 共感すること。 すべてはそこから始まります。

原 清治(はら・きよはる)

1960年、長野県生まれ。神戸大大学院博士後期課程修了。学術博士。専門は教育社会学。子どもの学力低下問題やいじめなどの学校病理現象について広く研究している。現在、京都府いじめ問題有識者会議委員や大津市インターネット等いじめ対策アドバイザーなどを務める。近著に『ネットいじめと学校』など。

広い世界を想像する力を

越水利江子

作家・日本ペンクラブ「子どもの本」委員

私はデビュー時から、 いじめをテーマにした物語を書いてきました。 それは、 自身の体験であったり、 実際にいじめに遭った少女と学校の先生に取材したものであったり色々です。 けれど、 現在、 いじめは携帯電話を通じたネット世界に拡がり、 いじめられ追い込まれた子が自殺してしまう事件も多々起こっています。 少しでもいじめをなくそうとの活動は必要ですが、 いじめは形の変化こそあれ、 昔からなくならないものでもあります。
では、 どうすればいいのか…。 私には一つの答えがあります。 子どもであれ、 大人であれ、 いじめの起こった教室や学校、 近所、 パソコンや携帯でのSNSなど、 どんな世界でも心の中にその世界だけしかなければ、 誰もが追い込まれてしまうのです。 私の本の読者には少女たちが多いのですが、 その中にもいじめに遭った子たちはいました。 でも、 その子たちには逃げ場があったのです。 夢中になれる本や物語の世界です。 そして、 そこには、 顔を知らなくても同好の士ともいえる友達が多くいました。 いじめに遭った時、 逃げ場となる心の世界を持っているかどうかで、 何より大切な命が守られるともいえるのです。
想像する力を蓄えることは、 いじめを行う子にとっても大切です。遊びのつもりでいじめを行う子は、 いじめに遭った子がどれほど辛い思いをしているのか、 自分に置き換えて考える力がないのです。 ないから、 人を死に追い込むほどいじめてしまうのです。 世の中はゲームのように、 何でも解き明かしてはくれません。 人は、 他人の痛みを想像する力を養ってこそ、 人間力があると言えるのです。 人の心の深さ、 美しさ、 はかなさ、 強さ…を自ら想像して、 自ら答えを導き出す力を養うことが重要です。
思春期、 私は本の世界で遊ぶことで救われた一人でした。 逃げ場となり、 想像を楽しめる心の世界を持たせてあげること、 子どもたちが、 心躍らせ夢中になれるものを作ってあげること、 大人たちはそんな手助けをしてあげるべきだと思います。

越水利江子(こしみず・りえこ)

高知生まれ京都育ち。1994年度芸術選奨新人賞、日本児童文学者協会新人賞、2003年度日本児童文芸家協会賞を受賞。近著に『杉文 真心をつくした吉田松陰の妹』『忍剣花百姫伝』『恋する新選組』シリーズ、いじめに遭った少女を描く『もうすぐ飛べる!』など。

実際の掲載紙面の全体データはこちら(PDFファイル)

  • 2017年7月公開 地域が一体となって 子どもたちを見守り続ける
  • 2017年5月公開 遊びの場を作ることが大切です。
  • 2016年10月公開
  • 2016年08月公開 90270人
  • 2016年06月公開 3888人
  • 2016年04月公開 1.51人
  • 2016年02月公開 86.3%
  • 2015年10月公開 美しく優しい言葉
  • 2015年08月公開 気付きはよりどころです。
  • 2015年06月公開 つながりは明日です。
  • 2015年04月公開 思いやりは未来です。
  • 2015年02月公開 無関心は暴力です。
  • 2014年12月公開 想像力はきずなです。
[主催]
京都新聞
[後援]
京都府・滋賀県・京都市・大津市・京都府教育委員会・滋賀県教育委員会・京都市教育委員会・大津市教育委員会・京都府警察本部・滋賀県警察本部・京都地方法務局・
大津地方法務局・京都弁護士会・滋賀弁護士会・京都府私立中学高等学校連合会・滋賀県私立中学高等学校連合会・京都私立小学校連合会・
(公社)京都府私立幼稚園連盟・(公社)京都市私立幼稚園協会・(公社)京都市保育園連盟・(一社)滋賀県保育協議会・京都小児科医会・チャイルドライン京都・しがチャイルドライン

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