こころのわ きづく つながる ささえあう

  • 相談窓口
  • 後援
  • 賛同社
  • お知らせ
  • メッセージ
  • 募集
  • 読者の声
  • Facebook

子どもたちの元気のために、子どもたちの笑顔のために、子どもたちの未来のために、子どもたちの可能性のために、支え合うことのできる豊かな社会。たとえそれが理想だとしても、粘り強く目指していきたい。児童虐待件数は7万件を超え、小中高校でのいじめの認知件数は20万件に迫るという無視のできない現実。そんな現代社会だからこそ、人とのつながりの中に生まれる豊かな関係性が、傾きかけた子どもたちの心の支えになる。「きづく つながる ささえあう」、そんな温かい「わ」が、静かに、そして確かに広がる社会。社会に、大人に、自分自身に問いたいキャンペーンです。

気付きはよりどころです。

京都新聞創刊135周年

子どもたちの心の曇りを受け止めていますか

視野を広げ子どもの視線に立つ

松村陽子

京都市児童福祉センター  児童精神科医

何度言ったらわかるの!」 「どうしてみんなと同じようにできないの?」。 児童精神科の外来を訪れる発達障害の子どもたちは、 こんなことをよく言われています。
学校から体操服や給食袋を持って帰るのをしょっちゅう忘れるAちゃん。 言われたときは、 今度はちゃんと持って帰ろうと思うのですが、 学校では他にもやることがいろいろあって、 つい忘れてしまいます。 平仮名や漢字を書くことが苦手なBくん。 文字の形がうまくとれず枠からはみ出てしまったり、 トメやハネも上手にできません。 先生やお母さんからは 「もっと丁寧に書きなさい」 と言われ続けています。 休み時間はいつも教室で一人で本を見ているCくん。 先生からは 「お友達と遊びなさい」 といつも言われています。 運動場で皆がしているドッジボールに入ったこともありますが、 全然楽しくありません。 他の子どもから怒られたり、 からかわれたりすることもあり、 運動場には行きたくありません。
人は、 自分が苦労せずにできたことを、 頑張ってもできない人がいるということがなかなか理解できないようで、 「やる気の問題」 「努力が足りない」 「甘えている」 と思って頑張らせようとします。 いつまでもできないとイライラして叱りつけてしまうこともあります。
発達障害がある子どもは、 脳の働き方や発達の仕方が違っていて、 多くの人がたやすく習得できることがなかなかできないことがあります。 本人たちは頑張っていても、 その頑張りは周りに分かってもらえず否定され続けてしまいます。 そんな経験が続くと 「できない自分がダメなんだ」 と自信をなくしてしまうのです。
人は一人一人違います。 背の高い人もいれば背の低い人もいます。 運動が得意な人も苦手な人も、 お酒が強い人も全然飲めない人もいます。 それぞれにできることや苦手なことが違います。 できないことはゆっくり少しずつやればいいし、 もしできないままでも、 できることで補ったり、 人に助けてもらったりすることもできます。 大人の側が少し視野を広げて、 心のゆとりを持って本人の視線に立ってあげられたら、 子どもたちはずいぶん楽になれるのではと思います。

村松陽子(むらまつ・ようこ)

京都市で生まれ育つ。1991年より京都市児童福祉センター、よこはま発達クリニックなどで児童精神科医として子どもの心や発達の診療に携わる。2010年より京都市発達障害者支援センターかがやきセンター長を兼務。

助けを求められる環境を育む

岡本美香

emiru coco

発達障害の一つ、 学習障害(LD)。 私は22歳のころ、 躁鬱(そううつ)病になったことをきっかけに初めてこの障害であることが分かりました。 幼いころから九九が苦手で、 忘れものが激しく、 なぜ自分は人よりできないことが多いのか思い悩んでいました。 普通学級にいたころの私は、 学習理解度が低く、 ついていくことのできるのは国語と体育と音楽だけでした。 中学時代には、 他の子より大きな声で歌ったことがきっかけでいじめられるようになりました。 「もう学校に行きたくない」 と打ち明けたとき、 支えとなったのは、 その思いを受け止めてくれた母の存在でした。
成人になり、 学習障害と診断されたとき、私は正直ほっとしました。 自分自身、 長年、 悩まされてきた原因はこれだったのかと。 現在でも学習障害であることを示す手帳はありませんが、 自らの悩みの理由について知ることができたのは、 私の中では大きなことでした。 個性の大切さが叫ばれる時代にはなりましたが、 実際は、 「人」 は “違い” を受け入れることがなかなかできません。 大人の社会もそうですが、 特に子ども時代には、 他の人と違うことが、 いじめの原因になるのです。
近年、 理由はさまざまですが、 いじめを苦に自殺をしてしまう子たちが後を絶ちません。 心配をかけたくない。 理解されるか不安。 私もそうでしたが、 自ら周囲へ救いを求めることはなかなかできるものではありません。 頑張りすぎなくていいんだよ、 時には逃げることも重要なんだよと、 受け止めてくれる人の存在や周りの環境が重要だと私は経験から強く感じます。
障害により、 他の人と比較するとできないことが多いですが、 その分、 人の痛みを知ることができ、 思いやりを持つことができると私は信じています。 一人の人間が、 障害を抱えるということは、 周りの人も多くの困難を乗り越えなければならないことを意味します。 ぜひゆっくりと時間をかけ寄り添い、 いざというとき本人が助けを求めることのできる環境を温かい見守りの中で育み、 その支えになってもらえたらと願っています。 その先には一人の人間としての自立した成長と、 いつかかなえられる多くの夢があると信じて。

岡本美香(おかもと・みか)

1984年、京都府生まれ。中学2年生から障害児学級(現特別支援学級)で学ぶ。中学卒業後は養護学校(現特別支援学校)高等部に進学。2014年、自身の半生をつづった「スワン 学習障害のある少女の挑戦」(アリス館)が出版される。現在、絵本作家を目指し、ここから笑みが広がるという意味を込めたペンネーム「emiru coco」で積極的に活動している。

実際の掲載紙面の全体データはこちら(PDFファイル)

ページトップへ