京都新聞 こころのわ きづく つながる ささえあう

いじめの現況と背景

―2013年3月、奈良県の公立中学校1年の女子生徒が同級生によるいじめや中傷などが原因で自ら命を絶ちました。いじめは、仲間外れや無料通信アプリLINE(ライン)上での嫌がらせなどで、彼女の日記には「何かしたんかな? 自分はいらん子なんかな? 死ねるものなら死にたい」とつづられていました。

―群馬県桐生市では2010年10月、小学6年の女児がいじめを苦にして自殺しました。女児は継続的に仲間はずれにされており、給食も一人で食べていました。「きもい」「くさい」「風呂入ってるの」などと悪口をぶつけられ、楽しみにしていた校外学習では「なんで来るの」と言われ…。両親には「転校したい」と泣きながら訴えていました。

2014年度、全国の国公私立の小学校が把握したいじめは、前年度から3973件増の12万2721件となり、過去最多を記録しました(京都府全体では2万3973件、滋賀県は1534件)。小中高校など全体でも2254件増の18万8057件で過去最多を記録。千人当たりのいじめの認知件数では、京都府が、最少の佐賀県の約30倍となる85.4件で全国最多(※)となっています。
※各都道府県や市町村によって調査方法などの差異がある。京都府のアンケート調査では、いじめを受けた経験を質問するのではなく、「嫌な思いをしたことがあるか」とし、いじめと認めるケースの幅を広げている。

2011年、大津市の男子中学生がいじめを苦にして自殺した事件がきっかけとなり、「いじめ防止対策推進法」が13年7月に施行されました。しかし、その後もいじめを原因とした自殺や事件は全国的に後を絶ちません。近年、子どもの自殺は4月や9月など新学期が始まる時期に集中しているとの統計もあります。胸躍る新学期が、一部の子どもたちにとっては死を選ぶほどの苦痛であるという現実。昨今の深刻ないじめの背景には、生徒間の階級格差であるスクールカーストや、いじられキャラなどの「キャラ付け」、メールやLINEを通じたコミュニケーションの齟齬などが一因だと考えられています。しかし、そういったいじめにつながる悪ふざけや子ども同士のトラブルの多くは、大人の目に留まりにくいところで起こっています。

1.51人

~19歳の自殺 原因・動機

内閣府と警察庁のまとめによると、昨年1年間の20歳未満の自殺者は全国で554人。毎日1人以上(1日当たり1.51人)の若者が自ら命を絶っていることが示されています。その原因・動機は家庭問題や健康、経済・生活、勤務、男女、学校など多岐にわたりますが、全体の約半数を、家庭問題と学校問題が占めています。日本全国の自殺者数は、3万人を超えた1998年~2011年に比べ減少し、昨年は約2万4千人。そのうち20歳未満の自殺者の割合は全体数の約2.3%で、その他の年代が大半を占めます。しかし、文部科学省の調査(※1)によれば、全国の児童生徒の自殺者数は増加傾向にあり、厚生労働省の調査(※2)では、10代の最も多い死因は「自殺」でした。(20代、30代の死因のトップも「自殺」。ただし、その原因・動機は経済・生活問題や勤務問題など社会的要因が目立つ)

※1「平成26年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

※2「平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況」

改正自殺対策法施行 子どもたちに何ができるのか

2006年成立した自殺対策基本法。その施行からことしで10年。今月、改正自殺対策法が施行されました。改正法は、国だけに義務付けていた自殺対策の計画を、すべての都道府県と市町村が策定するよう定めています。また、子どもがいじめなどの悩みを1人で抱え込まないよう、教職員への研修の機会を設けるほか、学校が保護者や地域住民と連携し、児童や生徒への教育や啓発に取り組むことも規定しています。
このように、子どもの自殺阻止に向け体制を整えるよう促す法整備が、現在少しずつですが進んでいます。しかし、法が定めた制度や調査が、いじめや自殺を解決するわけではありません。子どもたちが自らの命を絶ってしまう前に、学校現場や親だけではなく、周囲の大人たちはいったい何ができるのでしょうか―。

昨今、子どもの貧困問題も声高に叫ばれています。「きづく つながる ささえあう」。現代社会の抱える問題について一度立ち止まって考えてみる必要があります。
子どもの自殺の特徴として、衝動性や影響されやすさ、独特の死生観など、そのきっかけは、大人から見ると何でもないような小さなことに思えるかもしれません。そして、何の前触れもなく、突然その選択に至ってしまっていると見えることもあるかもしれません。しかし、自らの子ども時代を思い返してみてください。誰もが誰かに支えられて大人になったはずです。翻って現代の子どもたちの取り巻く環境はどうか。子どもたちの、そのかすかなSOSをどうキャッチできるのか。あなたの身近なあの子が自死を選択してしまう前に、「すべてに絶望しないで」「誰でもいいから頼って」「失敗も挫折も当たり前」「一人ではない」そんな優しい言葉と思いを持って接してあげること。ただその一言、一歩の行動、その優しさの広がりが、1日24時間、1.51人という数字を0に近づける、そして、子どもたちの明日を開く鍵となるはずです。

全国の自殺者数および20歳未満の年代の比較推移

全国の自殺者数および20歳未満の年代の比較推移

いじめの認知(発生)件数の推移

いじめの認知(発生)件数の推移

24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)

たくさんの愛される体験を ~自ら助けを求められない子どもたちへ~

いじめにあったり、嫌な思いをしている子の数は、統計よりもっと多いと感じています。統計に表れないケースでは、多くの子は自分が嫌な思いをしている、疎外されていることに対して無自覚です。周囲の人から見たら疎外されている様子が明らかでも、本人は「いじられキャラだから」「こうやって友達同士で楽しんでいるから」と笑ったり、家ではもっと酷いことをされているからと無意識に我慢していたりします。そういう子が水面下に相当数いるのではと思います。統計に表れるのは自分の辛い状況に自覚的な子の数で、そういった子はまだ自分で助けを求めることができるともいえますが、自ら助けを求められない子たちのことも真剣に考えなければ問題の根本的な解決には至りません。自殺や殺人など大きな事件が表面化したときだけではなく、継続的に子どもの状況を気にしておくことが重要です。
自ら助けを求められない子どもたちに周囲の大人ができることは、表面的な言葉ではなく、たくさんの愛される体験をさせることです。「自分は愛されている」「大事にされている」と感じることができれば、子どもたちは学校でも家庭でも、自然と大人を信頼するようになるはずです。

滋賀県教育委員会スクールソーシャルワーカースーパーバイザー
幸重社会福祉士事務所代表 幸重忠孝さん

なくしたい なくならない なぜですか

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  • 2017年5月公開 遊びの場を作ることが大切です。
  • 2016年10月公開
  • 2016年08月公開 90270人
  • 2016年06月公開 3888人
  • 2016年04月公開 1.51人
  • 2016年02月公開 86.3%
  • 2015年10月公開 美しく優しい言葉
  • 2015年08月公開 気付きはよりどころです。
  • 2015年06月公開 つながりは明日です。
  • 2015年04月公開 思いやりは未来です。
  • 2015年02月公開 無関心は暴力です。
  • 2014年12月公開 想像力はきずなです。
[主催]
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