京都新聞 こころのわ きづく つながる ささえあう

不登校の現況

―晴れた日の昼下がり、図書コーナーのある2階の一室でピンポン玉が勢いよく弾む。京都府木津川市加茂町にあるフリースクール「夢街道国際交流子ども館」には不登校(※1)の12~15歳の子どもたち7人が通っています。ここでは、田植えや畑仕事などを行いますが、その活動に参加するかどうかは子どもたちが自分の意思で決めます。また、みんなで一緒に行う活動は、全員そろって話し合って決めるのです。卓球を楽しむ和人君(仮名)は小学6年生。このフリースクールに来るまでは、学校でうまく周囲と溶け込むことができず、家の中に閉じこもりがちでしたが、現在では、話し掛けると屈託のない笑顔を返してくれるようになりました。

―京都市内に5つの学習室が設置されている教育支援センター「ふれあいの杜」。ここも、不登校の子どもたちが通う学びと活動の場です。対象は、京都市立の小学4年生から中学3年生まで。学習活動やスポーツ、ゲーム、読書、音楽や陶芸、クッキングなど多彩な体験活動を個々の事情に応じて選択することができ、教員OBやカウンセラーらとともに集団での活動に慣れるよう活動しています。例年、年度末には100人近くの登録(2014年度末:104人、2015年度末:110人)になりますが、今年は現時点で、33人が登録し、毎日20人前後が通っています。

文部科学省の学校基本調査(※2)によると、2014年度の小中学校の不登校者数は全国で12万2902人(京都府2402人、滋賀県1486人。計3888人。最も多い都道府県は東京都の1万1124人(※3))となり、1997年度以降、毎年10万人以上に上っています。近年では、07年度の12万9千人をピークに徐々に減少していましたが、13年度に再び上昇に転じました。全児童・生徒に占める不登校者数の比率も年々上昇し、14年度では、小学校で過去最高の0.4%、中学校ではピーク時の07年度に迫る2.8%に上っています。

※1. 「不登校」=「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」(文部科学省)
※2.児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(確定値=2016年3月1日公表)
※3.1000人当たりの不登校児童生徒数は東京都で小学校4.5人、中学校27.0人。京都府では小学校3.8人、中学校26.5人、滋賀県は小学校4.8人、中学校25.1人となっている)

3888人

「学校に行かない」という選択

このように依然として高止まりの状態にある不登校者数ですが、昨年3月時点で約4200人の義務教育段階の子どもが、フリースクール(※4)など民間教育団体・施設に通っていることが分かりました。そして、このうち半数以上が本来在籍する学校において出席扱い(※5)となっていました(文部科学省の実態調査より)。学校基本調査からは、上述の和人君のように不登校となった子どもたちに関する相談や支援先として、学校内のスクールカウンセラーなどのほか、学校外の教育支援センターや児童相談所、保健所、病院などとともにフリースクールも大きな役割を果たしていることが明らかになっています。

※4.不登校の子どもを対象に学習支援や体験活動などを行う民間施設。全国で400カ所程度あるとされ、京都府内には10カ所前後。一部の不登校児童、生徒の受け皿になっている。

※5.法律上は、学校教育法が定める「学校」に当たらないため、通っても義務教育を終了したとは認められていないが、在籍する学校長の判断で出席扱いとなるケースが多い。

教育は誰のためのものか

このような状況下、昨年5月、フリースクールや自宅での勉強を、義務教育の一環と位置付ける法案の原案が超党派の議員連盟により公表されました。6月1日閉会した通常国会では、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保に関する法律案」(「多様な教育機会確保法」や「不登校の子どもの支援の法」とも呼ばれる)が審議不十分とされ、国会への法案提出には至りませんでしたが、今後もこの法案の行方が注目されます。
小中学校や特別支援学校に限定してきた戦後教育。子どもの「学ぶ権利」と保護者の「学ばせる義務」。今、私たちは「学校に行かない」という選択をどう捉え、考えればよいのでしょうか。

今年4月、文部科学省がフリースクールに通う子どもがいる生活が苦しい家庭に対し、通学費や体験活動費などを支援するモデル事業を始めました。京都府や滋賀県の各自治体でも昨今、民間とも連携し、さまざまな形で学び直しの機会が作り出されています。子どもの相対的貧困率(※6)が16.3%、貧困状態にいる17歳以上の子どもが300万人以上、12万人を超える不登校者がいる日本において、この流れは必然といえるかもしれません。

※6. 平均所得の半分に満たない人の割合

京都府、滋賀県に限定しても、3888人の不登校者数。その数だけ命があり、その数だけの人生があります。また、その子どもを支える家族の人生を含めるとどうでしょうか。「いじめ」や「虐待」、「貧困」など現代社会における子どもたちを取り巻く環境は複雑に絡み合い、厳しさを増しています。「不登校=悪」とし、単に不登校を防ごう、減らそうとするのではなく、子どもたちがなぜ不登校になるのか、その根本の要因を考え、どうすれば子どもたちが笑顔で次の日を迎えることができるのかを最優先に考える社会でなければなりません。

不登校児童生徒数の推移

不登校児童生徒の割合の推移(1000人当たりの不登校児童生徒数)

児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査:文部科学省調べ

(注)調査対象:国公私立小・中学校(2006年度から中学校には中等教育学校前期課程を含む)

24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)

子どもたちが安心できる居場所を ~笑顔で寄り添うことの重要性~

明るく頑張っていた子が、ある日突然学校に行けなくなる。いじめやケンカなど原因がはっきりした理由でなくても、ちょっとした失敗、つまづきで不登校になる子どもたちがたくさんいます。集団の中で自分の役割が見つけられない、学校のペースについていけない子どもたち。そんな子どもたちが自信を付け、回復していく過程においてまず必要となるのが、安心できる居場所です。
ふれあいの杜では、小さな集団での体験を通じて、他者との信頼関係や自身の存在意義、新たな生活への意欲を高めていってもらうようにしていますが、安心感を持ってもらうことから全ては始まります。現代の子どもたちは、家庭や地域、学校あらゆる生活環境において、対面のコミュニケーション経験が乏しく、傷つきやすいように思います。そんな現代社会であるからこそ、当館のような特別な場所だけではなく、各家庭で、地域で、学校で、さまざまな人たちが積極的に子どもたちに笑顔で寄り添ってあげることが重要だと思います。

教育相談総合センター ふれあいの杜
館長 井上義信さん

それは、明日のための選択です。

実際の掲載紙面の全体データはこちら(PDFファイル)

  • 2017年9月公開 多様な世代との交流体験
  • 2017年7月公開 地域が一体となって 子どもたちを見守り続ける
  • 2017年5月公開 遊びの場を作ることが大切です。
  • 2016年10月公開
  • 2016年08月公開 90270人
  • 2016年06月公開 3888人
  • 2016年04月公開 1.51人
  • 2016年02月公開 86.3%
  • 2015年10月公開 美しく優しい言葉
  • 2015年08月公開 気付きはよりどころです。
  • 2015年06月公開 つながりは明日です。
  • 2015年04月公開 思いやりは未来です。
  • 2015年02月公開 無関心は暴力です。
  • 2014年12月公開 想像力はきずなです。
[主催]
京都新聞
[後援]
京都府・滋賀県・京都市・大津市・京都府教育委員会・滋賀県教育委員会・京都市教育委員会・大津市教育委員会・京都府警察本部・滋賀県警察本部・京都地方法務局・
大津地方法務局・京都弁護士会・滋賀弁護士会・京都府私立中学高等学校連合会・滋賀県私立中学高等学校連合会・京都私立小学校連合会・
(公社)京都府私立幼稚園連盟・(公社)京都市私立幼稚園協会・(公社)京都市保育園連盟・(一社)滋賀県保育協議会・京都小児科医会・チャイルドライン京都・しがチャイルドライン

pagetop