京都新聞 こころのわ きづく つながる ささえあう

発達障害

―2013年、東京都江東区の小学校に通っていた女子児童が、上級生の少女から脅されて9階建てマンションの屋上から飛び降り、重傷を負った事件がありました。少女は事件後、発達障害の一種であるアスペルガー症候群との診断を受けました。

―ことし4月、山梨県韮崎市で、小学6年の長男の首を絞めて殺害したとして母親が逮捕されました。調べによると母親は「子どもに発達障害があり、育児に悩んでいた」と供述したとされています。

発達障害とは、生まれ持った発達上の個性(特性)があることで、日常生活に困難を来している状態をいいます。他人との意思疎通が苦手だったり、特定の物事へのこだわりが強かったりしますが、その特性や苦労は周囲には理解されにくく、親の育て方や本人の努力不足などと誤解されやすい障害です。抱える困難、持っている能力や個性などもさまざまなため、その人の特性や状況に応じた理解と支援が必要とされます。

発達障害はいくつかのタイプ(図参照)に分類されます。自閉症、アスペルガー症候群などを含む広汎性発達障害(PDD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、チック障害など。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があることが共通しており、同じ人にいくつかの発達障害があることも珍しくないため、同じ障害がある人同士でもまったく違うように見えることがあります。個人差がとても大きいという点が「発達障害」の特徴といえるでしょう。

90270人

発達障害が急増?

2012年、文部科学省が全国の公立小中学校の児童・生徒約5万人を対象に行った調査では、6.5%が発達障害の可能性があると推計されました。これは40人学級1クラスに2~3人程度が発達障害の傾向があるという計算になります。調査は特別支援学校に通っている児童は含まず、通常学級に通う児童生徒のみが対象のため、実際の割合は6.5%以上だと推計されます。また、同省の2015年度「特別支援教育に関する調査」によると、「通級指導※」の対象になった児童・生徒が、全国の公立小中学校で初めて9万人を超えました。
※比較的軽い障害がある児童・生徒が、特別支援学校や特別支援学級ではなく通常学級に在籍しながら、各教科の補充指導などを別室で受ける制度。
これは、教育現場を中心に発達障害への理解が広がってきたことや早めに医師の診断を受けるようになったこと、受け入れ態勢が整えられてきたことなどが背景とされています。かつては「落ち着きのない子」や「少し変わった子」などといった表現をされていた子たちが、現代社会では診断、定義され支援の対象となってきているのです。

※比較的軽い障害がある児童・生徒が、特別支援学校や特別支援学級ではなく通常学級に在籍しながら、各教科の補充指導などを別室で受ける制度。

発達障害者支援法改正・障害者差別解消法施行

自閉症やアスペルガー症候群の人を支える改正発達障害者支援法が、ことし5月の参院本会議で可決、成立しました。同法の改正は約10年ぶりで、就労と教育支援を強化することなどが柱となっています。発達障害がある子どもが他の子どもと一緒に教育を受けられるように配慮し、学校側が目標や取り組みを定めた個別の計画を作成。いじめ防止対策や福祉機関との連携も進める内容となっています。また、ことし4月には、2013年6月に制定された、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目的とした障害者差別解消法が施行されました。

このような状況下、今後社会は障害とどのように向き合っていくべきでしょうか。発達障害は医学的には先天的な要因が強く、大脳機能に何らかの問題があるとされています。したがって、親の育て方やしつけ、環境が障害の根本的な原因ではないとされています。適職に就くと能力を発揮し、その道でなくてはならない存在になる発達障害の人もいるように、必ずしもそれはハンディキャップではなく、負の側面ばかりではありません。発達障害を抱える人が実態として本当に増加しているかどうかも意見の分かれるところです。社会的な認知、受け入れ態勢が進んだ結果として数字上、顕在化しているだけなのかもしれません。また、現代の家族関係、社会環境が、個々人の先天的な素因を増幅、助長している側面もあるのかもしれません。

法整備などは着実に進んでいます。しかし、だからこそ、家庭、地域に目を向けてください。発達障害は、理解されにくいことから二次的な情緒障害(孤立感や劣等感)や社会現象(いじめや不登校、事件・事故)を生じやすくします。それを防ぐためには、障害を持つその個々人だけの問題に終始することなく、結局は家庭が、地域が、社会がまずは知り、相互に理解し合うこと。そして認め合い、助け合う、そのことができるかどうかが重要なのです。
(本文文責:京都新聞COM)

発達障害図解

通級による指導を受けている児童生徒数の推移(2003~2015年度)

発達障害者支援センター 京都府:075-644-6565/京都市:075-841-0375/滋賀県:077-561-2522

環境が障害を生む ~人と人との関わりのかなに~

障害を語る上で、個々人がどのような特性であるかは大きな要素ですが、置かれた環境によっても大きく左右されます。例えば車椅子の方が社会参加できるためにバリアフリー化が進めば、障害はある意味減っていくわけです。同時に反対のこともあるため、「環境が障害を生む」ともいえるかもしれません。社会生活の中で生きづらさを生じる発達障害はその典型でしょう。いじめや不登校、非行などとは違って、発達障害というのは、そういった社会現象(結果)を生み出す因子ともいえます。
現代の地域社会や核家族化は発達障害をクローズアップさせました。以前の地域社会や、例えば昔の大家族では、子どもは親に叱られても近隣の人たちや祖父母などに優しくされるといった逃げ場や心の支えがありました。しかし現代は自分を許してくれる、認めてくれる人や場所はそう多くありません。身近な人からの無理解な言動などが重なると、次第に自己肯定感を失い、心がつらく、しんどくなってしまいます。人との出会いや関わりのなかで、大きくも小さくもなり得る発達障害について考えることは、社会全体のありようについて考えることと同義だと思うのです。

京都府発達障害者支援センター はばたき
センター長 竹村忠憲さん

必要なのは、理解と支えです。

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  • 2017年5月公開 遊びの場を作ることが大切です。
  • 2016年10月公開
  • 2016年08月公開 90270人
  • 2016年06月公開 3888人
  • 2016年04月公開 1.51人
  • 2016年02月公開 86.3%
  • 2015年10月公開 美しく優しい言葉
  • 2015年08月公開 気付きはよりどころです。
  • 2015年06月公開 つながりは明日です。
  • 2015年04月公開 思いやりは未来です。
  • 2015年02月公開 無関心は暴力です。
  • 2014年12月公開 想像力はきずなです。
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