京都新聞:紙面特集

「ゴッホ展」
京都国立近代美術館

日本への夢 憧れ交錯

 オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90年)の画業に大きな影響を与えたのは、日本美術だった。浮世絵を夢中で模写し、色彩や構図を学び、多くの傑作を描いている。遠い極東の異国への憧憬(しょうけい)は、死後数十年を経て日本人へ伝わる。彼を慕う日本の画家や文学者はゴッホ終えんの地を巡礼、その夢想に触れた。京都国立近代美術館の「ゴッホ展」は、日本を夢見たゴッホと、ゴッホに憧れた日本人たち、両者の交錯を紹介する。

 同展は、オランダのファン・ゴッホ美術館との国際共同プロジェクト。第1部はゴッホの作品約40点と、同時代の画家、浮世絵など約40点、第2部は芳名録などゴッホ巡礼の資料約80点を展示する。

「芳名録II」(2冊目) 佐伯祐三一家と友人・木下勝治郎の1924年7月1日の署名

二代 歌川芳丸「新板虫尽」(部分) 1883年

「花魁(溪斎英泉による)」  1887年

「カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ」  1887年

「寝室」 1888年

「アイリスの咲くアルル風景」 1888年

 ゴッホが日本美術に関心を持ち始めるのは1886年、フランス・パリに出てきてからといわれる。印象派風の作品を描くゴッホは同時に、浮世絵の鮮烈な色彩に魅了された。雑誌の日本特集号の表紙を飾った浮世絵を拡大模写し、油彩画にしたのが「花魁(おいらん)」だ。絵の中には、浮世絵を参照したのかカエルも描き込まれている。

 88年、日本を理想化するゴッホは色彩を求めて南仏へ。大胆な構図を取り入れ、平たんな色面構成で表したのが「寝室」だ。日本文学も読み、日本文化、人々への崇拝を深めたが、ゴーギャンとの共同生活も、自分の耳を切る事件で破綻する。この頃から日本についてほとんど語らなくなるが、花とチョウを大胆にクローズアップした「蝶とけし」など力強い線と色彩の独自の油彩画へ進化させた。その1年後の90年、ゴッホはパリ近郊・オーヴェールで自らの命を絶った。

 ゴッホの生の軌跡をたどろうと、日本人たちが海を渡ったのは20世紀初め。ゴッホ最晩年に交流のあった医師一族のもとを多くの人が訪ねた。残されていた3冊の芳名録に記される日本人240人の名前には、佐伯祐三ら洋画家だけでなく、土田麦僊ら日本画家、斉藤茂吉ら歌人も名を連ねている。

「種まく人」 1888年

「芳名録II」は国立ギメ東洋美術館蔵 Photo©RMN-Grand Palais(Musée Guimet,Paris)/Thierry Ollivier/distributed by AMF-DNPartcom

「芳名録II」以外の作品はすべて、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵 ©Van Gogh Museum,Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)

特に表記のないものはフィンセント・ファン・ゴッホ作

案内
■会  期1月20日(土)~3月4日(日) 月曜休館(2月12日は開館、13日は閉館)
■開館時間午前9時30分~午後5時(金土は午後8時まで 入館はいずれも閉館30分前まで)
■会  場京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
■主  催京都国立近代美術館 NHK京都放送局 NHKプラネット近畿 京都新聞
■入 場 料一般1500円(1300円)大学生1100円(900円) 高校生600円(400円) かっこ内は20人以上の団体。中学生以下及び障害のある人と介助者1人は無料(要証明)。
■関連イベント▽記念トークショー=2月4日、圀府寺司氏と古賀陽子氏(画家)いずれも午後2時から。先着100人。当日午前10時から整理券を配布。聴講無料(要観覧券)
【2018年1月16日付京都新聞朝刊掲載】