布象嵌作品の制作を手掛けたのは10年前。「何か面白いものにならないかと、染めた布をスパーンと切ったのを覚えています」。切った布をずらして合わせ、また切ってずらす。しかし、ものにならないと感じて放っておいた。それが20センチ角ほどの小品として見ると、意外な面白さがあった。「それで小さいのから始めて、だんだん細かい仕事で大きな作品を手掛けるようになった」。つくる過程で、織りの方向の組み合わせが生む微妙な効果にも気付いた。 象嵌に使う布は、染めた後に紙で裏打ちする。次に4ミリ幅に切断し、他の染め布と組み合わせて裏打ちして、また裁断すると、4ミリ角の布片が並ぶ細い帯状になる。これを大画面に再構成する。「材料をたくさん用意しておき、仕事場いっぱいに広げて選びます」。再構成は「ハンカチをガラスに貼るみたいに」透明なプラスチック板に布の帯を貼っていく。帯の配列が生み出す表情を確認するためだ。伝統的な裏打ちの表具技術と、プラスチックという新素材の道具の取り合わせが、細密な象嵌を可能にした。「1から10までオリジナルというのでなく、伝統のアレンジの仕方によりオリジナルが生まれる」と話す。 京都生まれ。京都市立芸大で油絵を専攻した。2年生の時に父が倒れ、生活のため家業の染色を引き継いだ。「当時、ろう染めの着物はおしゃれ着で、面白いものが良いとされた。恐いもの知らずで、どんどん変わったものをつくりました」。着物づくりの一方で、輝くような斜線の染めが印象的な「風神」「雷神」の壁飾りなど、独創的な作品を発表してきた。
一昨年、韓国・清州(チョンジュ)の国際工芸ビエンナーレでグランプリを獲得。昨年は北京でのビエンナーレに出展するなど、海外での活躍も目立つ。今年5月にはベルギーでの国際展にも参加する。「そろそろ1枚の布作品に戻りたい気持ちの一方で、100万粒の象嵌に挑戦したいとも思っています」。その活動から今年も目が離せそうにない。
写真右=「スローライフや伝統性、地域性が再評価される中で、21世紀が工芸の時代になれば」と話す福本繁樹さん
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