The Kyoto Shimbun

(12)chori 「ポエトリー・リーディング」

「音楽としての言葉」繰り出す職業詩人として 有名になりたい


ビートに乗せて言葉を繰り出すchoriさん。ステージを包む空間や音と光、声の響きや言葉の意味が一つになって世界をつくる(1月23日、京都市中京区のライブハウス「VOX HALL」

 京都の繁華街にあるビル内のライブハウスで。雪がちらつくその夜の出演者は4組。ギターの弾き語りやハードロックと等分に、持ち時間45分で詩人choriさん(21)のポエトリー・リーディングが始まった。

 スポットライトに半袖のTシャツ姿が浮かび上がる。音楽が流れるとマイクを掲げ、小気味よいリズムで詩を歌い始めた。

〈「生きててよかった」も/「死んだほうがまし」も/あんまり変わんないよ//道しるべがなさすぎて/おれらは迷うことを知らない/うちに帰ったら裸でねむり/ファーストフードで飢えをみたす/放り出された惑星の気分/−中略−/コンバースのスニーカー履いて/ワンダフルワールド/コンバースで音、もっともっと鳴らして/ワンダフルワールド/うるさいくらいに/ワンダフルワールド/嘘/−後略〉(「素晴らしい世界」から)

 頭を反らし、体を揺らしながら、ビートにのせて詩を繰り出す。

 従来の朗読や歌とも、ラップ・ミュージックとも違う。「サヴァイヴ」「また明日」など8編が終わるころ、choriさんの詩の世界が残像として焼き付いていた。

 ギターを手にした中学3年の時に、オリジナル曲を作ろうと歌詞を書いたのが詩作への入り口だった。ノートに書き付けることも増え、高校生になるとネットで詩を発表し始めた。2年生の時に大がかりな朗読イベントの手伝いをしたのがきっかけで、ステージでの朗読に関心を持つ。当初は音楽も流さず、作品を手にして読む普通の朗読スタイルだったが、各種のイベントに出場するうちに現在の形に変化していく。

 「詩は作者そのもの」と言う。パフォーマンスも音楽も言葉も丸ごとが詩であるポエトリー・リーディングで、その言葉を具体化してみせる。

 「紙媒体の詩は、同世代でも書く人はたくさんいるから僕が書かなくてもいい」と言う。が、「紙媒体の詩だけが詩ではないことを知ってもらうには、紙媒体で認められることが必要」と、一昨年は詩の総合誌「詩学」に投稿を続け、20歳で詩学最優秀新人賞を受けた。選評で高く評価され、目的はクリアした。

 一方でライブに磨きをかける。多いときは月に10回、大会場から路上まで、ライブが研さんの場になる。集中してラップを聴き、日本語の韻の踏み方や間の取り方、リズムにのせたり微妙に外したりを独学で学び、自分の表現方法を探った。「以前はラップだったり、朗読だったりと、分離していたが、ようやく融合できたと思う」

 choriさんのライブは、BGMやクラブで踊るためのラップではない。「音楽としての言葉」で人を揺り動かそうとする。

 自身をスポークン・アーティストという詩人と位置づける。「僕は第1世代。だから有名にならなくちゃいけないんです」。かっこよくてお金ももうけて、とうらやまれるようにならなくてはと。「職業として認知されている詩人はほとんどいない。ミュージシャンはたくさんいるのに。僕のやろうとしているジャンルが定着すれば、きっと職業として詩人をめざす人がでてくる」

 次のステップは、効果的な演出を持ち込みもっと楽しんでもらえるライブにすること。「いいテキストと、エンターテインメントとを両立させたい。そのための装置を考えていきたい」。同時に紙媒体でも次の布石を打つ。今夏、京都の出版社から第1詩集を出す。

 「『詩人といえばchori』といわれるようになること」。目標へ、いちずに走る。

[京都新聞 2006年2月12日掲載]

美術、音楽、演劇、デザイン、パフォーマンスなど多様なジャンルの中から、次代を担う京滋ゆかりの表現者を選び、創作世界の広がりを紹介します。

chori(ちょり)
詩人。本名は千明史(せん・あきふみ)。1984年京都市生まれ。京都精華大人文学部2年在学中。京都市上京区在住。2005年詩学最優秀新人賞受賞。昨年7月から京都市内で月1回、言葉のパフォーマンスイベント「KSWS」を仲間と主催。今春から、狂言とのユニット活動も本格化させる。茶道裏千家家元千宗室氏の長男

「詩は僕自身。離れられない」と語るchoriさん(京都新聞社)

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