The Kyoto Shimbun

(13)北野嘉子 「ANTS NEST」

アリの力強さ、生命力強調ファッション通し、女性に理想の姿を


錦市場のファッションショーで発表したドレスの1つ

 「アリさんの体形はボン・キュッキュ・ボン。セクシーな女性のようでステキでしょ」。京都市中京区に住むファッションデザイナー北野嘉子さん(29)は、屈託がない笑顔を浮かべる。

 何よりも好きで、こだわり続ける作品のコンセプトはアリ。短大生だった1995年8月、「ANTS NEST(アリの巣)」の名でデザイナーズブランドを立ち上げた。自らの手で、デザイン、パターン(型紙)、縫製、企画、営業までを手がけ、結婚式のドレスや舞台衣装、パーティードレスなど、幅広く制作している。

 京都市内のど真ん中で生まれ育ち、家族で買い物する場所といえば、錦市場と大丸京都店だったという。「自宅の周囲はコンクリートとアスファルトばかりだったので、一番身近な生き物は、アリさんでした。幼いころは飽きもせず、地べたを忙しそうに歩き回る姿を、ずっと眺めることもあった」と語る。

 アリのイメージは、まず「働き者」。家庭や仕事で一生懸命働く現代女性と重なる。「アリのように働く」と言えば、マイナスイメージもあるが、彼女が強調したいのは、アリが持つ力強さや生命力だ。「大勢の中にいても、埋もれず、一番輝いて見える。そんな女性に着てほしい」

 デビュー当初は、宇宙服を思わせたり、アリの触覚を表現するなど、奇抜なデザインもあった。しかし最近では、20代後半から40代の女性を中心に支持を広げ、落ち着いた感じがするドレスが増えてきた。アリのような黒っぽい衣装が目立つが、赤やピンクといった原色を基調にしたあでやかな作品もある。

 「自分に妥協しない服です。腰元がきつく引き締まっていたり、背中や胸元を大胆にカットしている。自分に自信がないと着こなせないと思う。でも、いろんな女性に着たいと思わせたい。ファッションを通して、自分が理想とする姿を描いてもらいたい」

 ブランドを設立してから、ファッション業界では、倒産や閉店などが相次ぎ、若手デザイナーにとって厳しい状態が続いた。同じ時期に業界デビューしながら、辞めてしまった仲間も多い。それでも京都や大阪などを中心に、年1回のペースでファッションショーを手がけてきた。

 2003年10月には、歌舞伎400年を記念した錦市場のイベントがあり、ファッションショーに参加した。「妖艶(ようえん)」をテーマにしたドレスやワンピースを発表し、注目を集めた。「私が手がける服は、キチキチに見えるけど、意外と着やすいんです」

 創作のヒントにしているのは「女性の身体」だという。街を歩いている時、いろんな女性の姿を観察している。太っていたり、やせていたり、モデルのようにスタイル抜群だったりと、身体はさまざまある。

 「創作に思いをめぐらしていると、自然と、人のカタチに視線がいってしまう。この人はこれが似合うとか、あの人なら、こういうドレスがいいなんて、頭の中で、いろんな服を着せている」。そして、浮かんだデザインをパターン(型紙)に書いて、作品に仕上げていく。「飾らない、人の姿って、本当に面白い。私の頭にある創作意欲をビンビン刺激する」

 今は顧客ニーズを肌でつかむため、店舗販売はしていない。直接に注文を受け、1点ずつ仕上げている。「大きく展開すると、リスクと負担が出てしまう。自分を見失わないように、基本は着実にコツコツ、でも、力がつけば、大胆に」

 夢がある。制作拠点を京都に置きながら、世界にアリのファッションを広げたいという。「作品を通して、都会に生きるさまざまな命の力を感じてもらいたい」

[京都新聞 2006年2月19日掲載]

美術、音楽、演劇、デザイン、パフォーマンスなど多様なジャンルの中から、次代を担う京滋ゆかりの表現者を選び、創作世界の広がりを紹介します。

北野嘉子(きたの・よしこ)
ファッションデザイナー。1976年京都市生まれ。成安造形短大在学中の95年8月にデザイナーズブランド「ANTS NEST(アンツ・ネスト)」を設立。京都や大阪、福岡などでファッションショーを繰り広げているほか、国際的なイベント「福岡アジアコレクション」(2000年)などに参加した。

「女性の身体から創作のヒントがわく」と話す北野嘉子さん(京都市中京区のアトリエ)

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