The Kyoto Shimbun

(41)足田メロウ 「ライブペインティング」

音と混然一体、動く抽象画色と形が移ろう 過程自体が表現


ライブペインティングを行う足田さん(京都市中京区・アバンギルド)

 京都市中京区のライブハウス。ステージでは、3人の女性グループが打楽器スティールパンなどを演奏しながら、神秘的なメロディーの曲を歌う。同時に、後方のスクリーン上では、音楽に合わせて絵筆が動き、真紅の模様が次々と描き出される。画家の足田メロウさん(33)のライブペインティング。音と混然一体となった動く抽象画は、神秘的でさえある。

 足田さんはステージの近くで、箱の上に透明のプラスチック板とA4判の紙を置き、アクリル絵の具で、流れるような曲線や円形を音楽に合わせて描いていく。また、水を入れたコップの中に油や絵の具を垂らし、色が複雑に混ざる様子も一緒にビデオカメラがスクリーンに映し出す。曲調が変われば、紙を交換し今度は色調を変えて描く。「音楽に宇宙を感じ、惑星の表面にうごめく大気をイメージした」

 足田さんのライブペインティングは、カメラで投影するほかに実際、ステージに縦2メートル、横3メートルの大きさのキャンバスを持ち込むことも多い。刷毛でアクリル絵の具のしずくを飛ばしたり、手でこすったりと全身を使ってダイナミックに描く。「心が和んで欲しい」と動物や花など身近なモチーフが登場する。

 事前に描くものや構図は考えない。共演するバンドの躍動的なリズムなど、共演者から受ける刺激とその場の雰囲気に任せる。例えば画面に青色の線を一本引く。それが空に思えたら、連想する鳥を描く。色を重ねていくうちに描かれたものは変化、最後までどうなるか分からない。最初とは全く違った絵になることもあり観客を驚かせる。

 足田さんは、滋賀県立信楽高校デザイン科を卒業後、京都の関西美術院でデッサンを学んだ。ライブペインティングは、1999年にアクリル画の個展を見た知り合いのバンドメンバーから「絵のニュアンスがバンドの音に近い」と、共演を頼まれたのが最初だ。

 それ以来、一枚の絵を別の画家と左右から同時に描くコラボレーション(共同制作)や、バンドの一曲の演奏時間に合わせて絵を描き上げるパフォーマンスなど、即興音楽やコンテンポラリーダンス、詩の朗読などさまざまな表現者と共演してきた。

 「アトリエで描く普段の作品と違い、ライブペインティングは完成を目指すのではなく、制作過程それ自体がパフォーマンス。共演者の表現に刺激を受け、刻々と変わっていく内面・精神の動きそのものを、表現したい」とライブの現場にこだわる。持ち時間は約30分。一度描いたらやり直しができない緊張感がいつもある。

 「音楽のライブに足を運ぶ人は多いが、絵画やダンスや詩の朗読はさほど多くない。演奏の場を借りて、絵や詩、ダンスなどの良さを知ってもらい、さらにそれらが影響し合い、新しい表現が生み出せたら」と可能性に期待する。

 音や映像、ダンスを交えたイベント「オトエホン」を1年前から京都市内のライブハウスやカフェで主催、9月で13回目になる。一緒にパフォーマンスをしたいと思うアーティストに声をかけ、これまでに京都のコンテンポラリーダンサーの木村英一さんらとも共演した。

 普段は自宅アトリエで少女や動物が登場する繊細で柔らかな色彩のアクリル画を描いている。京都在住の詩人豊原エスさんと共作した6冊目の詩画集「嘘をつけばよかった」を8月に出版した。京都の若手画家2人と絵画映像グループを作り、アニメーションのビデオなども制作している。

 あまり自分の作品をアートだと意識はしていない。「お客さんには、目の前で色や形が変化していく様子を楽しんでもらい、心に残ってくれたらうれしい。絵は僕にとってコミュニケーションの一つ。あいさつみたいなもので、僕の世界の理解が広がっていけばうれしい」と気負いがない。

[京都新聞 2006年9月3日掲載]

美術、音楽、演劇、デザイン、パフォーマンスなど多様なジャンルの中から、次代を担う京滋ゆかりの表現者を選び、創作世界の広がりを紹介します。

足田メロウ(あしだ・めろう)
滋賀県信楽町生まれ。2003年に詩人豊原エスさんとの詩画集「歌いながら生きていく」を出版。05年に絵画映像ユニット〔amfjek〕を結成した。ライブペインティングのほかカフェなどの壁画制作も行う。4日午後7時半から京都市中京区木屋町通三条下ルの「アバンギルド」でイベント「オトエホン―13」を開く。京都市北区在住。

「線を一本引いて、そこから見えてくるものを即興で描いていく」と話す足田さん(京都市中京区のギャラリー・ニュートロン)

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