The Kyoto Shimbun

(42)パラモデル 「パラモデリック・グラフィティー」

レールが描くわくわく感創造、発明生み出す 「遊び」の相互作用


床、壁、天井と室内全体に、おもちゃのレールが「絵」を描く「パラモデリック・グラフィティー」(2005年、京都市中京区・京都芸術センター)=撮影・seiji toyonaga

 「ごっこ遊び」にどんどん熱中していくうちに、それがいつの間にか別の遊びになっていたりする体験が、子供時代になかっただろうか。青いプラスチック製のおもちゃのレールの軌跡が、流水紋や樹木、滝、雲のような「絵」に変ぼうし、床から壁、天井へと広がっていく室内は、遊びに特有のわくわくした感じにあふれている。

 昨年2月、京都芸術センター(京都市中京区)で、林泰彦さん(34)と中野祐介さん(30)が結成するユニット、パラモデルが制作した「パラモデリック・グラフィティー(パラモデルの落書き)」は、約1万個のレールの部品を組み合わせた作品。随所に配置されたミニカーや模型飛行機、砂山が、ジオラマのような、巨大な箱庭のような趣を醸し出し、見る者を魅了する。

 2004年に初めて発表して以降、遊び感覚で制作体験できることが人気を呼び、京都をはじめ高知、大阪、山口、茨城など各地から、子供たちと共同で行うワークショップへの引き合いが相次いでいる。

 「地方では、子供が素直なことにカルチャーショックを受けた」と、ワークショップの様子を話す2人は、ともに大阪府東大阪市の出身。「『何でこんなことせなあかんの』とか、言うもんと思ったのに」と笑う表情に、少年の面影が漂う。

 京都市立芸術大に在学中は、バンドなどの活動を通じた友人同士。デザインやメディアアートを学んできた林さんと、日本画科出身の中野さんが、アイデアや技術を出し合いながら創作するスタイルで、5年前からユニット活動を始めた。

 2003年に、方向性を強く打ち出そうとユニット名を決めた。「パラダイス」「パラドックス」…などを想起させる「パラ」と「モデル(模型)」を合わせた造語という。「極楽模型」と訳されることもある。「おもちゃを用いた作品を手がけるようになってから、制作がしっくりしてきた」と話す。

 「極楽」は、制作の大きなテーマとなってきた。「温泉に入ったときに『あー極楽』という、あの感じ。日常の中にあるチープな『極楽』が気になる」。温泉、観光地に取材した写真作品「極楽百景」、玩具の自動車をすしに乗せた「トミ寿司(すし)」など、パロディー的な笑いの感覚も持ち味だ。大阪・新世界の風景もモチーフの一つだ。極楽といえば、悟りの境地への入り口。「そこまで人を連れて行くには、楽しみの要素が大きかった。僕らの作品にも似たようなところがある」

 おもちゃなどの既製品の素材や、遊びの要素が入った作品は一見チープで、“芸術”らしくない。だが、遊びは、思っているほど単純なものではないという。

 「『ごっこ遊び』では、みんなが必ずしも同じ遊びを共有していない。一人ひとりが違った遊びをそこに見いだしているかもしれない。それでも相手を尊重して、バランスをとりながら世界を共有するのが遊びの世界」。まるでわれわれの世の中の話のようではないか。「ワークークショップの面白いところは、参加者のセンスを取り込めるところ」。創造や発明といったものが、個人を超え、遊びの場の相互作用を通じて生み出されるという見方には目を開かされる。

 作品制作は「やらずにはおれないノンストップゲーム。現代美術は、わかる人だけの世界になっている。それ以外の人をつなぐ役割もある」。どこまでも延びるレールはパラダイスを超えて、パラドックスのある詩的な世界へと誘うか。

[京都新聞 2006年9月17日掲載]

美術、音楽、演劇、デザイン、パフォーマンスなど多様なジャンルの中から、次代を担う京滋ゆかりの表現者を選び、創作世界の広がりを紹介します。

パラモデル
林泰彦さん(1971年―)と中野祐介さん(1976年―)が、京都市立芸術大大学院時代の2001年にユニットを結成、03年に「パラモデル」と命名した。京都を拠点に、アニメーション「テナシイヌ」、写真「極楽百景」など、さまざまな手法やメディアを用いて作品を制作している。

「『ごっこ遊び』が制作の原点」と話すパラモデルの林さん(右)と中野さん=京都市右京区のアトリエ

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