The Kyoto Shimbun

(47)微生部II 「微生物の世界」

CGと実写が生む神秘的光景ミクロの環境問題 ユーモアたっぷり


「微生物の世界」の一場面

「微生物の力を借りて自分たちの能力を超えた作品をつくりたい」と話す八百さん、小沢さん、西殿さん(左から)=東京都千代田区

 円形フレームの中、三日月型の微生物・ミカヅキモがゆらゆら、ゆらめく。まるで顕微鏡をのぞいているようなミクロの世界だ。ミカヅキモに、何やら球形の別の生き物が衝突した。その瞬間、「ポーン」という音だけが静かに響き、見る者を不思議な感覚にいざなう。これは本物なのか、作り物か。

 場面が変わり、小型ナイフのようなケイソウが動き回る。「シュッ、シュッ」とスピード感を醸す音。俊敏なケイソウが何倍もある大きな緑色の物体に突き刺さる。物体は音を立てて割れ始め、細かく砕け散った。

 続いて、数本のアオミドロを映した画面が少しずつズームし、水の中を突き進む。そこに現れたのは、水色に輝くクラゲのような微生物。たちまち群れをなして、ふあふあと画面いっぱいに広がり、紫、緑へと変色していく。見たこともない、神秘的な光景に圧倒される。

 ラストシーンは奇妙だ。暗闇に円形の小さな微生物が浮かぶ。円の中には人の顔のような模様が。こんな生き物が泳ぎ回り、消えていく…。4分14秒の短編。どこか割り切れない、不思議な余韻がある。

 映像作品「微生物の世界」は、今夏開かれた「長崎水辺の映像祭」の環境芸術部門でグランプリを受賞。「実写とCG(コンピューターグラフィックス)の境目がわからない技術の高さに加え、ミクロの世界で起きている環境問題をユーモアたっぷりに描いた」と高く評価された。

 「本物を観察しているように感じさせながら、アートの世界に引き込む。淡々と繰り返される生命のサイクル、微生物の奥深い世界を表現したかった」。制作した微生部IIのメンバー、八百悟志さん(22)は言う。

 作品は一昨年、京都精華大芸術学部のグループ制作で生まれた。自宅の動物病院の顕微鏡をよく使っていた八百さんが、友人の西殿謙一さん(23)と小沢貴弘さん(23)とともに発案。「微生物のユニークな形や意外な動きを借りて何かできないか」

 3人はまず、川や田んぼ、井戸などから水を採取し、超小型カメラ付きの顕微鏡で水中にすむ微生物を観察した。そのうち、ミジンコやゾウリムシなど予想もつかない生態を持っていたものだけを選んで撮影し、約2時間の映像資料を作った。

 これをパソコンに取り込み、微生物だけを切り取って別の背景に移したり、環境の異なる生物を同じ画面に配置。体色を変え、数を増やすなどCG加工を施した。最終的に約20種類の微生物を登場させ、ストーリー性豊かな作品に仕上げた。

 水中をリアルに表現するため効果音にも留意した。「生々しく、インパクトが必要」と音作りから制作に加わった森陽史さん(23)。ギターの弦をこすったり、割りばしを振ったりして動きを表現するなど、試行錯誤を繰り返して音を合わせた。

 メンバーは口をそろえる。「本物の微生物の動きは、それだけで本当に面白い。でも、そこに手を加えないとアート作品にはならない。僕らの意思をどこまで投入して加工すればいいのか。現実と非現実の境界であいまいさを出すのに苦労した」

 4人は個々の能力も高い。森さんは同映像祭で個人作品でもブロンズドラゴン賞を獲得。八百さんのアニメ作品は10月の京都映画祭のコンペで入選、小沢さんも北京芸術科学国際展覧会に自作を出品し、西殿さんは映像作家として活動する。

 微生部IIの目標は「バイオアート」の追求だ。昨夏、京都で開かれたアートイベントでは、改良した顕微鏡で、今回の映像を観賞させた。水中に万華鏡のような筒を沈ませながらその中で映像を見せるなど「仕掛け」も重視し、現実と非現実のはざまのアート作品を目指す。「4人で刺激しあいながら活動を続けたい」。好奇心を武器に、新たな表現世界を切り開く。

[京都新聞 2006年10月22日掲載]

美術、音楽、演劇、デザイン、パフォーマンスなど多様なジャンルの中から、次代を担う京滋ゆかりの表現者を選び、創作世界の広がりを紹介します。

微生部II(びせいぶつ)
バイオアート集団。京都精華大映像コースで学んだ4人が2005年に結成。「微生物の世界」は今秋の「みんなの映画プロジェクト第5回CG&アニメーション・フィルム・フェスティバル」の「水部門」でもグランプリを受賞。11月23日から栗東芸術文化会館で始まるアートイベント「サファリパークプロジェクトin栗東」に出品される。八百さんは神戸市、西殿、森さんは京都市、小沢さんは埼玉県在住。

「みんなのいい点を結集してグループでしかできない作品を」と語る森さん(京都新聞社)

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