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南座と祇園甲部歌舞練場休館 「空白」生まない仕掛けを

文化部 長谷川真一
耐震改修のために休館中の南座。顔見世は移転開催されたものの、恒例の「まねき上げ」は例年通り行われた(昨年11月25日・京都市東山区)
耐震改修のために休館中の南座。顔見世は移転開催されたものの、恒例の「まねき上げ」は例年通り行われた(昨年11月25日・京都市東山区)

 歌舞伎や日本舞踊など、京都の芸能文化を象徴する二つの劇場、南座(京都市東山区)と祇園甲部歌舞練場(同)が相次ぎ休館している。影響は長期に及ぶだけに、観客の関心を途切れさせない、意欲的な取り組みを期待したい。

 南座が休館を発表したのは昨年2月。前年から進めていた調査の結果、1929(昭和4)年に建設された建物が「改正耐震改修促進法」の基準を満たさないことが判明したためだ。およそ1年が経過し、内装の撤去など耐震改修に向けた前段階の工事などが進められている。

 劇場側は「歴史的な価値を生かし、引き継ぐ」との大方針こそ示すが、具体的な工法や再開場に向けたスケジュールは約1年が過ぎた今も公表に至らず、ファンを心配させる。急きょ休館に入っただけに、工事計画の策定を準備作業と並行して進める難しさもあり、簡単に見通しを示せない悩みを抱える。

 1913(大正2)年築の祇園甲部歌舞練場も、建物の耐震改修に向けた調査のため、昨年10月の舞踊公演「温習会」を最後に休館に入った。運営する八坂女紅場学園は耐震化には「3〜4年はかかる」との見通しを示す。祇園甲部のみならず、京の日本舞踊家の晴れ舞台としても愛された劇場だけに影響は大きい。

 拠点を失う期間、興行主や芸能の担い手はどう向き合うか、試行錯誤も始まっている。

 南座を経営する松竹は昨年の「吉例顔見世興行」を先斗町歌舞練場(中京区)に会場を移して開催、伝統の公演を守った。南座に比べて客席数が半減することが懸念材料だったが、かえって臨場感は満点に。役者の表情や息づかいが間近に伝わる、濃密でぜいたくな公演となった。昼夜2部制から3部制に変更し、観劇機会が減少する影響を最小限に抑えるなど、運営上の工夫も光った。ただ、今年の顔見世については、会場は発表されていない。

 京舞井上流は昨年末、先代家元の四世井上八千代さんの十三回忌を追善する節目の公演をホームグラウンドの祇園甲部からロームシアター京都(左京区)に移して開いた。井上流にのみ伝わる大切な作品「夕顔」などを披露し、決して舞踊向きとはいえない現代的な劇場で「祇園の未来のために」との強い意志を示した。今春の「都をどり」は京都造形芸術大(同区)の劇場「春秋座」で開く。

 改修は、法令や技術的な問題が絡む難事業だけに、関係者の意識はハード面の課題に向かいがちだ。ただ「空白」を生まないソフト面の目配りも欠かせない。取材した歌舞伎俳優中村七之助さんは昨秋に京都で舞踊公演を開いた際、「(南座)休館中の今しかできないことはあるはず」との前向きな言葉も聞いた。例えば南座なら、大規模な公演だけでない、小回りのきいた歌舞伎舞踊の公演など、やり方はあるはずだ。危機を転じるようなしたたかさな仕掛けを打ち出してほしい。

 

[京都新聞 2017年1月25日掲載]

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