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研究への寄付集め 意義説明に工夫を

報道部 広瀬一隆
「大学の森」として存続するための寄付を呼びかけている芦生研究林(伊勢准教授提供)
「大学の森」として存続するための寄付を呼びかけている芦生研究林(伊勢准教授提供)

 研究や教育に市民から協力を得ようと、京都大の研究者が寄付を募るケースが増えている。市民が研究に関心を持つきっかけにもなる意義のある試みだが、募る目的があいまいだったり現実味がなかったりする場合もあり、改善が必要だと感じている。

 「大学の森を守ろう」。京大の芦生研究林(南丹市)を維持するために寄付を呼びかける標語だ。京大は1921年、同研究林の敷地について地権者と99年契約で、樹木などを使える地上権を設定し教育や研究に活用してきた。契約が切れる2020年4月以降の更新が不透明な中、「大学の森」の大切さを知ってもらおうと、同研究林長の伊勢武史准教授が16年12月に寄付集めの基金を立ち上げた。

 伊勢准教授は記者会見で、作物を食べるシカや約35メートルに達する巨木の生態の調査など、同研究林での研究を紹介した。大学が森を手放すと、研究者の利用が制限される恐れがあるという。ただ、同研究林は京都丹波高原国定公園に指定された地域で、樹木の伐採には制限がある。大学が手放しても自然環境は守られ、研究者が立ち入れる可能性もあると説明した。正直、大学の森でなくなる「リスク」がよく分からなかった。

 また集まった寄付は同研究林内の京大所有地にある施設の維持・管理に使う予定で、20年以降の契約料に当てるつもりはないという。伊勢准教授は「基金を通して、大学や文科省に市民の声をアピールして契約更新につなげたい」と狙いを語るが、寄付の目的としては違和感が残った。

 先行きが見えない中、教育や研究を続けられる環境を維持したい思いは理解できる。ただ大学が森を持つ意義や、納得できる寄付金の使い道を明確に示してほしかった。

 一方で、寄付を募る理由は明確であるにもかかわらず、ビジョンが大きすぎて現実味に欠けるケースもある。

 20億円をかけて宇宙科学館を作る−。16年11月、運営が厳しさを増している京大理学研究科付属花山天文台(京都市山科区)が発表した将来構想だ。同天文台は1929年の設立以降、太陽観測などで成果を挙げつつ、アマチュア天文家が交流する拠点となってきた。現在も年間約70件の観望会や見学を受け入れる。しかし岡山県で新たな天文台が稼働する影響で、17年度以降も同様の活動を続けるには年間約1千万円の寄付を集める必要があるという。

 年間1千万円の寄付集めのめどが立たない中、20億円の構想には無理がないか。同台長の柴田一成教授は「多額の寄付をしてくれる個人や企業がいないかと思って提言した」と説明する。確かに夢のあるビジョンは必要だが、非現実的過ぎると逆に関心が離れる可能性もある。

 国立大の収入の柱である国からの運営費交付金が減少傾向の中、研究環境は厳しさを増している。市民の協力は不可欠だが、理解を得るには寄付の目的を分かりやすく、現実に即した形で示すことが大切と思う。試みが定着するためにも、研究者には一層の工夫をしてほしい。

[京都新聞 2017年2月15日掲載]

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