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岐路に立つ地域金融 「顧客第一」の視点、徹底を

報道部 柿木拓洋
関西の主な地方銀行の規模
関西の主な地方銀行の規模

 地域を基盤とする地方銀行や信用金庫の経営が、転換点に立っている。貸出金利の引き下げ競争が極限に近づき、取引先を確保するためには新たな価値を打ち出す必要があるからだ。従来の地域金融機関は「横並び」のイメージが色濃かったが、今では京都、滋賀でも独自の営業やサービスに踏み出す動きがみられる。こうした多様化を生み出す競争こそが、人口減・低成長時代に求められる地域金融の健全な姿だと考える。

 日銀が昨年2月に導入したマイナス金利政策から1年がたった。低迷する企業の投資や個人消費の活発化を狙った「奇手」だが、副作用として如実に表れたのは、低金利の貸し出し合戦による金融機関の収益低下だった。大手都市銀行と違って営業基盤がほぼ国内や地域内に限られる地銀・信金の影響は特に大きく、企業融資や住宅ローンは「我慢比べ」の様相となった。

 貸し出しの利ざやと地域人口が縮小する中、地銀業界では経営統合による規模拡大が加速している。関西でも三井住友フィナンシャルグループ系列の関西アーバン銀行(大阪市)とみなと銀行(神戸市)、りそなホールディングス傘下の近畿大阪銀行(大阪市)の統合計画が先ごろ明るみに出た。連結総資産は単純合算で11兆6千億円超。関西圏トップの京都銀行(京都市下京区)の規模を上回る巨大地銀グループが誕生する。

 地銀統合の最大の目的は、経営の合理化だ。同一地域の支店を減らすなどして経費を圧縮できる。だが、身近な店舗の閉鎖は住民や地元企業にとって利便性の低下につながりかねない。全国の地銀は105行。信金も加えると370に上る。京阪神を含めて「オーバーバンキング(銀行過剰)」と言われるが、その見地は顧客でなく金融機関側に立脚していないだろうか。

 経済の末端を支える地域金融機関の安定化には強い財務基盤が欠かせない。相次ぐ地銀統合は将来の財務に対する危機感の裏返しでもあるが、統合後も金利のたたき合いによる薄利多売営業から抜け出せなければ、さらなる再編にのみ込まれるだけだ。

 京滋の地銀・信金は、少しずつ自らの「色」を出し始めている。金融庁が金融検査・監督の軸足を不良債権処理から「顧客本位」の営業に移したこともあり、取引先企業と向き合いながら、リスクを取る融資や業務支援、ビジネス仲介などに取り組んでいる。

 「金利が高くても、それに見合う仕事や情報が得られれば全く問題ない」。地銀・信金をメインバンクとする中小企業の取材で、経営者の多くが語った言葉だ。独自のサービスは人件費などのコストがかさむ。一方で対価として適正な金利を求めやすく、企業とも深い関係を築ける。

 際限なき金利競争と行き着く果ての経営統合・再編。この波にあらがい、地銀や信金が地域で存立するには、「顧客第一」視点の徹底と、きめ細かいサービスや提案力を磨き続けるしか道はない。

[京都新聞 2017年3月1日掲載]

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