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活性化モデル目指す二条城 進む活用、保存と両立を

報道部 日山正紀
京都市が文化財を積極活用した観光振興に取り組む二条城。文化財関係者には「活用に前のめり過ぎ」と慎重さを求める意見もある(京都市中京区)
京都市が文化財を積極活用した観光振興に取り組む二条城。文化財関係者には「活用に前のめり過ぎ」と慎重さを求める意見もある(京都市中京区)

 世界遺産・二条城(京都市中京区)を維持管理する市が、文化財を積極的に活用した観光集客に力を入れている。非公開文化財の公開や集客行事に取り組み、文化庁が京都移転に合わせて新施策に掲げる文化財を生かした地方活性化の先行モデルを目指す。一方で4月には、建物や庭園の約50カ所に粉末がまかれたトラブルが起きた。集客増には文化財の損傷リスクも伴うだけに、保存と活用のバランスが課題になっている。

 二条城の集客強化は、1603年の築城以来初となる大規模修理の財源確保が大きな狙いだ。2011年度から20年間で約100億円が必要と見込むが、確実な財源は、国宝や重要文化財の国庫補助50億円。残りを入城料や寄付、国際的な会議などに使う「MICE」の使用料を積み立てた基金で賄う方針だが、現在の積み立て額は4億円弱と目標にほど遠く、不足分をさらなる集客策で補う構えだ。

 具体案は16年9月、有識者でつくる「二条城の価値を活かし未来を創造する会」が市に提言している。ガイド付きなどにして料金を上乗せする段階的な入城料金の導入、今年で150周年の大政奉還といった歴史的な行事の再現、江戸時代に存在した天守閣の将来的な復元など、大胆な内容を盛り込んだ。取りまとめ役を担った二条城特別顧問で文化財修復会社社長のデービッド・アトキンソン氏は「文化財を活用した新しい観光の手本を全国に示していく先例になってほしい」と話す。

 提言などを受け、市は国宝・重要文化財の建物計28棟のうち、常に内部を見られる二の丸御殿などに加え、非公開施設の公開も進める方針。16年度の有料入城者は約182万7千人とバブル期並みに達したが、上積みを目指す。

 ただ、文化財保護の専門家は「活用に前のめり過ぎ」と警鐘を鳴らす。2月の二条城保存整備委員会では、専門家の委員から積極的な集客に慎重さを求める声が出た。ある委員は「木の建物や紙の障壁画など日本の文化財は、欧米に比べて劣化しやすい」と強調する。「建物の公開では補強が必要だが、本来は使っていない鉄骨などで強化するため、文化財の価値を損なう恐れがある。集客増で補強の頻度も増すが、その費用を集客増による収益でカバーできるかは不透明で、単に劣化を進めることになりかねない」と懸念する。

 文化財保護法は文化財の取り扱いに関し、保存と活用の両立を求める。二条城の新たな取り組みは観光活用に軸足を置く印象が強く、文化財専門家から「保存や研究という地道な領域にも目を向けてほしい」という嘆きも漏れる。市は財政難を背景に「集客増で収益を稼ぎ、市の財政支出は最小限に」との姿勢だが、博物館機能の創設など、保存と活用の両面に役立ちそうな積極投資を前向きに検討しても良いのではないか。

[京都新聞 2017年5月10日掲載]

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