The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

大学の「カラ出張」防止策 国の緩和通達に違和感

報道部 松尾浩道
文部科学省が国立大に出した事務連絡文書。研究者に課される出張時の提出書類の簡素化を求めている
文部科学省が国立大に出した事務連絡文書。研究者に課される出張時の提出書類の簡素化を求めている

 今春以降、京都工芸繊維大と京都大は「カラ出張」で教員各1人を処分した。両大学とも、国内出張では領収書の添付が不要な制度を悪用されたとみられる。ところが文部科学省は3月、全国の国立大に対し、各大学が独自に設けた厳しいルールの見直しを求める事務連絡をしていた。公的資金の使途に関して社会から厳しい目が向けられる中、違和感を抱かざるを得ない。

 京都工繊大では25件計約110万円、京大では155件計約1100万円が不正受給されていた。鉄道やホテルの領収書の提出が義務付けられていれば、一定の抑止効果があったと考えられる。それなのになぜ提出不要の制度にしているのか。大学側は「研究者の負担軽減」と「事務処理の効率化」を挙げる。果たしてそうだろうか。

 国内出張でもホテルの領収書については提出を義務付ける京都府内の私立大の40代男性教員は「慣れれば別に手間ではない。サラリーマン時代は、鉄道の領収書も出すのが当たり前だったので大学はルールが緩いと感じる」と話す。切符などについても領収書は自動で発行されるのが今や当たり前で、それを大学に提出するのが研究者の大きな負担になるとは思えない。事務処理についても、領収書が添付されているのを形式的に確認するだけでよければ容易に済むはずだ。

 カラ出張防止に向けた取り組みを、大学が何もしてこなかった訳ではない。東京工業大は研究費の不正使用の発覚をきっかけに昨年1月、▽出張先で面会者にサインをもらう▽使用済みの特急券を大学に提出する―など、全国の大学の中でも厳しい独自ルールの運用をスタートさせた。学内の教員からは「学会の主催者は忙しいのにサインなど求められない」「特急券を手元に残さないといけないので自動改札を通れない」などとルールを非難する声も出たが、大学はサインをもらう相手の要件を緩和するなど柔軟な対応も取っていたという。

 そんな中、今年3月に文科省が「国立大学法人及び大学共同利用機関法人における研究費の管理・使用について」と題した事務連絡を出した。その文書には、旅費の証拠書類の取り扱いについて「鉄道利用は提出不要。特に使用済み特急券等の提出を求めないようにしてください」「ホテル等利用は提出不要」などの文言が並ぶ。不正防止に逆行しているとも受け取れる「指導」をした理由を、文科省国立大学法人支援課は「不正をする一部の教員がいるからといって、過度にルールを厳しくすると研究教育に支障が出る」と説明する。

 この事務連絡を受け、東工大は独自ルールを5月末で撤廃した。京都工繊大も、カラ出張の発覚を受けて設けた「現地で入手した資料の提出義務化」のルールを、わずか3カ月の運用で終えた。各大学の不正防止に向けた取り組みに、国はブレーキをかけるべきではない。

[京都新聞 2017年9月6日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP