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「京町家保全継承条例」成立 所有者実情、理解の契機に

報道部 相見昌範
京都市の街中に残る京町家。条例成立で、保全継承に向けた対策が本格的に動き出す(京都市下京区)
京都市の街中に残る京町家。条例成立で、保全継承に向けた対策が本格的に動き出す(京都市下京区)

 京都の街並みや文化を特徴づける京町家について、京都市が従来の施策から一歩踏み込んだ「京町家保全継承条例」を9月議会で成立させた。京町家の取り壊しに関し、所有者に市への事前届け出を求めたことが条例の柱だ。行政が保全に向けて幅広く「網」をかける内容と言える。一方、所有者が取り壊さずに済むような維持負担の軽減策は道半ば。市民レベルで京町家への関心を高めなければ、効果が限定的になりかねない。

 「年800軒、1日2軒のペースで取り壊されている」。市が今年5月に公表した2016年度の実態調査結果では、京町家の残存数は約4万軒で、前回の08〜09年度調査から約5600軒も滅失した。将来解体につながりかねない空き家状態の残存町家が占める割合は14・5%で、前回調査に比べ4ポイント上昇した。

 こういった危機的な状況を食い止める対策として、市が条例に盛り込んだのが事前届け出制度だ。市はこれまで、町家解体の動きを知るすべがなかったため、所有者に解体着手日の1年前までに取り壊しの意向を市に届け出るよう求める。市は「1年の猶予期間に京町家を残す活用法の提案や活用希望者とのマッチングを行い、解体を思いとどまってもらいたい」という。

 来年5月に始める事前届け出制度は有効に働くと考えられるが、万全ではない。届け出が義務化されるのは「景観や生活文化を継承する上で重要な京町家」や京町家が集積する「保全重点取組地区」に限られ、その他は努力規定にとどまる。

 所有者が京町家を手放す状況を生まない抜本的対策とも言い難い。条例案の市民説明会では、耐震改修費の負担や、地価高騰に伴う固定資産税の増加といった背景事情に目を向けてほしいとの声が上がり、「住み続けるための支援策を」との意見が相次いだ。

 そんな中、門川大作市長は、来年10月ごろの導入を目指す宿泊税の一部を京町家保全にも充てる方針を示した。支援策の裏付けとなる財源が一定、示されたのは前進だ。今後の具体策を注視したい。

 条例が本当の意味で機能していくかは、京町家に市民がどれだけ関心を持てるかにも大きく左右される。事前届け出制度は、個人の財産に行政が関与し、所有者にとっては負担となる。違反には行政罰として過料5万円を徴収する場合があるほか、重要京町家などの指定は所有者の同意を不要にした。京町家が担う景観や文化的な価値、継承する所有者の実情に対する市民の理解がなければ、保全に向けた気持ちも生じないだろう。

 京町家は最近、高級ブランド店などの用途で商業利用も広がり、不動産市場で「古家付き土地」としか認識されていなかった時代から様変わりした。このような時期に条例が成立したことを好機とし、保全継承について市民を巻き込んだ議論が広がることを期待したい。

[京都新聞 2017年11月29日掲載]

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