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舞鶴市とウズベク交流 抑留の歴史、未来の財産に

舞鶴支局 高山浩輔
抑留関連の調査でウズベキスタンの中央公文書館を訪れた舞鶴引揚記念館の関係者ら(2017年11月、タシケント)
抑留関連の調査でウズベキスタンの中央公文書館を訪れた舞鶴引揚記念館の関係者ら(2017年11月、タシケント)

 舞鶴市は2020年東京五輪・パラリンピックに向け、ホストタウンとして中央アジアのウズベキスタンと交流を進めている。同国には終戦後、旧ソ連のシベリア抑留で日本人が強制労働に当たった過去があり、その足跡が多く残っている。今後関係が深まることで「引き揚げのまち」の市が取り組む抑留関連の資料収集や情報発信の充実につながることが期待される。

 「折り紙で遊びました」「将来、日本で勉強したい」。首都タシケントにある東洋学大付属アルマザール校を訪れると、生徒たちが流ちょうな日本語で迎えてくれた。昨年11月、五輪の事前合宿の覚書取り交わしでウズベクを訪問した舞鶴市代表団に同行した。学校関係者は「開校当初から日本語を学ぶコースがあり、日本への関心は非常に高い」と話した。

 ウズベクには旧ソ連により約2万5千人の日本人抑留者が移送された。抑留者は旧ソ連四大劇場の一つナボイ劇場や水力発電所などの建設に携わり、現役で使われている施設もある。日本人墓地や現地の民間人が開設した日本人抑留者資料館など、さまざまな形で抑留の過去に出合った。

 ウズベクでの抑留者の多くは舞鶴に引き揚げており、市がホストタウンに手を挙げたのは、そのような歴史的な背景がある。現地で「日本人の勤勉さはよく知られている」「重要施設を建設してもらい心からお礼する」との言葉をよく耳にした。親しみある雰囲気には抑留の過去が関係していると感じた。

 訪問では、舞鶴引揚記念館の関係者らが抑留関係の調査を行った。市は、所有するシベリア抑留と引き揚げ関連資料が国連教育科学文化機関(ユネスコ)「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録が決まって以降、海外調査に力を入れている。記念館の山下美晴館長は「シベリア抑留は極寒の中の重労働といったイメージが強いが、抑留者の仕事ぶりが尊敬されたウズベキスタンのような例もある。抑留を多面的に理解し、発信することが必要だ」と話す。

 一方、調査の結果、ウズベクでは抑留の学術的な研究はほとんどされておらず、公文書の閲覧が難しいことが分かった。同行した市ユネスコ世界記憶遺産有識者会議会長の黒沢文貴・東京女子大教授は「当時の写真や記事、証言が貴重な資料になる。情報共有のため、現地とのパイプ作りが大切だ」と指摘する。

 息の長い関係を築くことが求められるが、市とウズベクとの交流は2年前に始まったばかりで、市民の関心の高まりは十分でない。「歴史は対立の火種にもなれば、友好の糧にもなる」。黒沢教授が現地で口にした言葉が胸に残っている。抑留という「負の遺産」を五輪をきっかけに未来につながる財産にするためにも、市の今後の取り組みがますます重要になる。

[京都新聞 2018年1月10日掲載]

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