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和束町が茶畑景観条例 観光振興策農家に説明を

京田辺・学研総局 逸見祐介
傾斜地に畝が並ぶ和束町の茶畑。美しい景観だが、ところどころに作業が及ばず草が生い茂っていたり、災害で崩れていたりするところもある(同町釜塚)
傾斜地に畝が並ぶ和束町の茶畑。美しい景観だが、ところどころに作業が及ばず草が生い茂っていたり、災害で崩れていたりするところもある(同町釜塚)

 傾斜地に鮮やかな緑の畝が列をなす。日本遺産「日本茶800年の歴史散歩」構成文化財である京都府和束町の茶畑の景観だ。誇るべき観光資源でもある眺めを守り継ごうと、町は2018年度中に景観条例を制定する方針を示した。

 23年度の新名神高速道路の全通に合わせ、新名神と同町を結ぶ府道宇治木屋線・犬打峠のトンネル化が計画されており、アクセスが飛躍的に向上することで工場や住宅も含めて町内での開発が進むことが見込まれている。条例は景観を守るために有効になるだろう。

 ただ、茶畑景観は茶農家の仕事によって保たれている。町は条例について、単に建物の高さや色を規制するだけでなく、大雨などにより被災した茶畑の復旧支援など、茶園継続を後押しする内容を盛り込むことも検討している。

 背景には担い手の減少がある。町によると、17年の町内の茶農家数は287戸で、高齢化などによって10年間で約100戸減った。荒廃地は10年前の約1ヘクタールから昨年は18・3ヘクタールにまで拡大した。

 「今までの農業では、いつまでも景観を守れない。条例を作り、観光によって町にお金が落ちる仕組みができれば、新規就農や雇用にもつながる」と、同町白栖の「和束茶カフェ」を運営する一般社団法人「えん―TRANCEわづか」代表で茶農家の上嶋伯協さん(62)は期待する。

 しかし、町が茶畑景観の観光活用を打ち出し始めたのは、町内の茶畑が京都府の景観資産第1号に認定された08年で、ほんの10年前にすぎない。急速に進んだ観光は、課題も投げかけている。

 全国的に知られる「原山の円形茶園」の周辺では、車で訪れた観光客がしばしば狭い道に立ち往生している。私有地の茶畑に入り込んで写真撮影するマナー違反も絶えず、複雑な思いを抱く茶農家は少なくない。

 茶農家が観光でメリットを実感できない現状もある。多くが個人農家で、大半は全ての茶葉を農協や問屋に卸すため、観光と収入が結びつかないためだ。近年の抹茶ブームで町内の茶の売上高は増える傾向にあり、茶農家にとって観光の必要性が切迫していない側面もある。

 町での宿泊施設計画を発表した星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路社長は、進出の理由として「お茶と美しい景観」を挙げ、観光での大きな可能性を示した。人口減少が進む地域を活性化するチャンスでもある。

 星野社長は「お茶作りをする人たちも、この町の魅力の一つ」とも強調した。裏を返せば、町内で足並みがそろわないまま観光重視路線を続ければ、魅力を欠いた観光地になりかねない。町は茶農家らの理解が得られるよう、観光振興の具体策や将来像を今以上に説明すべきだ。

[京都新聞 2018年2月7日掲載]

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