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鳥羽伏見の戦い150年 記憶残す取り組み前へ

報道部 住吉哲志
鳥羽伏見の戦いの伝承を聞こうと、会場一杯に集まった来場者たち(京都市伏見区・区役所)
鳥羽伏見の戦いの伝承を聞こうと、会場一杯に集まった来場者たち(京都市伏見区・区役所)

 今年は、明治維新の扉を開いた「鳥羽伏見の戦い」から150年にあたる。戦いの始まった正月に合わせて、鳥羽伏見の戦いや、その後全国に広がった戊辰戦争と京都の関わりを取材した。150年前の記憶を歴史にとどめる必要と同時に、3世代、4世代とまたがる口伝から歴史をたどる難しさを実感した。

 取材を通じて数多く耳にしたのは「伏見の住民から、代々伝わる生々しい話があまり聞こえてこない」という、地元に住み郷土史を長く研究している人たちからの言葉だった。

 鳥羽(京都市南区)から淀(伏見区)にかけて、町なかや寺社境内などに残る石碑、激しい戦いの様子を建物に刻みつける弾痕、花を供えられた慰霊碑を見ると、当時の様子をしのばせる遺物はある。時間がたってから建立された石碑もあり、折りに触れて過去を忘れまいとした思いの跡だろう。だが、当時誰しもが関わったはずの戦いの記憶が薄れているとすれば、危機感を覚えるのも無理はない。

 地元の自治会や商店街などの団体でつくる「鳥羽伏見の戦い150年プロジェクト会議」は、歴史を発信するイベントを企画するかたわら、鳥羽や伏見周辺に住む90歳前後のお年寄りからインタビューしている。両親や祖父母の世代から語り伝えられている話を思い出してもらい、記録していく取り組みだ。1月に伏見区役所で歴史講座に合わせて開いた中間報告会には、予定より多い200人以上が集まった。150年に合わせて幅広い市民の関心の高まりをうかがわせた。

 「家の柱に残る弾痕を切り取り、建て替え後にも見られるように保存した」「薩摩兵が土足のまま上がって来るのでゴザを敷いて対応した」といった生々しい話が報告され、当時の様子や同時代を生きた人の思いが伝わってくるようだった。聞き取りしたメンバーによると、これまでに郷土史家の間で知られていない内容も多かったという。

 聞き取り調査は来年3月まで続けられ、報告書としてまとめられる予定だ。内容を基にしたびょうぶ絵の制作も同時に進められている。

 一方、聞き取りという手法の難しさもわかった。「(学術上)明らかになっている事実と矛盾している」という例や「テレビや本で得た知識が、伝聞と混在している」といった例もあったことが、合わせて聞き取りの担当者から指摘された。語り手に他意はなくとも、戦争を間近で見た世代だった曽祖父から祖父、父、子へと記憶の口伝が重ねられていくなかで「誤差」が生じることや、うわさ、俗説が混在することはありうるだろうと、取材を通じて受け止めた。

 記憶の途切れるまでに時間はない。一人でも多く、伏見以外の地でも150年前の記憶を書き留める意味は大きいのではないかと思った。

[京都新聞 2018年2月14日掲載]

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