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福知山の公共交通空白地 住民視点、見直しに必要

北部総局 井上真央
住民団体が自家用車で運行する有償運送を利用して、町外の商業施設に来た高齢者(福知山市多保市・PLANT−3)
住民団体が自家用車で運行する有償運送を利用して、町外の商業施設に来た高齢者(福知山市多保市・PLANT−3)

 「外に出るなと言われている気がする」。福知山市三和町の住民団体が実施する有償運送を取材した際、利用者の女性(80)がこぼした一言が重かった。過疎化で公共交通の再編が進む同市の山間部では、高齢者らの足の確保が課題となっている。買い物や住民間の交流など日常生活にも影響があり、さらなる人口減を招きかねない。誰もが手軽に利用できる住民の視点にたった交通手段が必要だ。

 同町では昨年末に町唯一のガソリンスタンドが閉店、2月にはスーパーも撤退した。町外で最も近い商業施設は車で約15分かかり、市街地へ出るバスは1時間に1本。山あいに家々が点在し、バス停も少ない。取材で回っていても、車がないと生活できない環境だと感じる。免許を持たない高齢者を中心に、地域から生活の基盤が消える不安を訴える声は多く耳にする。

 福知山市は2006年、三和、夜久野、大江の旧3町と合併し、人口約8万人の北部第2の都市となった。しかし合併後の12年間で高齢化率は約6ポイント増え、全国や府の平均を上回る29・3%に。特に山間部の旧3町は、空洞化に歯止めがかからない状況だ。

 市は16年、財政負担の軽減や効率化を目的に、公共交通網の再編を始めた。17年には、乗車率や収支率などの評価基準に基づき、市内を走るバス30路線中、16路線を減便や予約型運行とし、代わりに有償運送やスクールバスの活用などを進める計画を発表。見直し対象となった大半が、旧3町の路線だった。

 三和町は計画実施のモデル地域に指定された。住民団体は昨年10月、府や市の助成を受け、自家用車による町内限定の有償運送を開始。4月にはスーパーの閉店に対応するため、週1度、町外の商業施設への運行も始めた。だが、利用は市の想定の1日5人に対し、1・5人と伸び悩む。

 その要因の一つが運賃の高さや予約の手間だ。市バスの場合、町内は片道一律200円だが、有償運送は片道400円。町外の商業施設に行くには往復1600円がかかる。利用には2日前までの電話予約が必要で、時間も限られる。生活費への影響を考えれば、財布のひもは自然と固くなる。他人の手を患わせているのではと感じる人もいるだろう。友人とのたわいない会話や気ままな買い物など、日常の小さな楽しみが、手に入りにくくなっている。

 市は本年度を有償運送の検証期間とし、運営形態を見直す予定だが、運賃の改定にはタクシーなど民間事業者の承認が必要でハードルは高い。運送の担い手である住民の負担も、長期的に考慮するべきだろう。代替の交通手段の模索が続く中、市は夜久野町や大江町でも住民と協議を進め、20年度を目標に、公共交通の再編に取り組むという。

 三和町では、「通院など必要外の外出は控える」と話す高齢者もいた。時代に応じた交通網の見直しは必要だが、効率化の結果、一部の住民が不便や我慢を強いられては、さらに地域の疲弊は進む。車があっても無くても楽しく生活できる−。手軽に利用できる交通手段の整備は、過疎高齢化が加速する地域の魅力づくりに直結するはずだ。

[京都新聞 2018年5月2日掲載]

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