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京大の管理強化 「学風」と裏腹、対話重視を

報道部 広瀬一隆
新たな立て看板規定が施行される前の百万遍交差点周辺(4月25日、京都市左京区)
新たな立て看板規定が施行される前の百万遍交差点周辺(4月25日、京都市左京区)

 「自由と対話」。京都大の山極寿一総長がいつも強調する学風だが、学外受けを狙った「宣伝文句」に過ぎなかったのだろうか。最近の学内を見るとそう思える。立て看板騒動や吉田寮の退寮問題を巡り、京大の管理強化と異論抑圧への批判が学生や教職員の間で渦巻いているからだ。

 立て看板を巡る問題で京大は5月、道路に面した場所の看板設置を認めない規定を施行し、13日に撤去へ踏み切った。看板を設置してきた学生は「話し合いもなく一方的な決定」と憤る。同様に看板を撤去された京大職員組合は「組合の看板が対象と知ったのは5月。看板設置は数十年の労使慣行で、京大執行部の対応は拙速で認められない」と批判する。

 教員からも非難が上がる。各部局を代表する教員約20人からなり、学生生活全般にわたって協議する学生生活委員会のある教員は「委員会では規定について市側や学生との交渉を経るべきという意見があり継続審議となったのに、昨年12月に突然、当局の既定方針として伝えられた」と明かす。

 もちろん法令順守は当然だし、景観において京大を例外とするのは無理がある。だが学問を営む大学としてもっと「表現の自由」を守る試みは必要ではないか。外に向けメッセージを発信できる設備を敷地内に作るなど法令の範囲内でできることを学生や教職員、京都市との対話で模索できないのか。京大は「ホームページで学生から意見を募っている」とするが、とても対話が十分とは思えない。

 吉田寮退寮問題でも、大学へ不満が噴き出している。

 築100年を超える吉田寮について、寮生と大学側は老朽化対策に向けて議論を重ねてきた。しかし2015年11月に就任した学生担当の川添信介理事は、「確約」という形で積み重ねてきた寮生との合意事項は引き継がないと通告した。従来の団交形式ではなく代表者同士で話し合う方法などを提案したが寮生は反発。話し合いができないまま昨年12月、京大は今年9月までの全員退去を通知した。

 寮生は4月になって話し合いの方法をおおむね受け入れることとし、対話の公開などを求める文書を渡したが、実質的な回答はないという。寮生は「大学は文書では『いつでも話し合いに応じる』とうたうが表面だけ。話し相手と見なしているなら、一方的に退寮期限を区切らないはずだし、こちらの文書にも誠実に回答するはず」と批判する。

 大学も寮生も早急に老朽化対策をしたいという思いは同じだろう。山極総長は普段から「大学の自治」を強調するのだから、学生の自治にもっと配慮できないか。従来の方針を転換した寮生に、大学側が歩み寄ってもよいはずだ。

 山極総長は3月の卒業式で、「自分と考えの違う人の意見をしっかりと聞くこと」と強調。現代は多様な考えの共存が危ういと指摘し「自由な討論の精神を発揮し課題に向き合って」と送り出した。

 短期間で研究成果が求められたり、政権批判する学者を目の敵にする政治家がいたりする今だからこそ、「自由と対話」や「大学の自治」を重んじてきた京大には期待したい。しかし現状では、卒業生へのはなむけの言葉が皮肉に響いてしまう。

[京都新聞 2018年5月23日掲載]

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