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外国人の日本語教育 国挙げ仕組みづくりを

南部支社 堤冬樹
少人数のクラスで授業を受けるパッデャさん(右)。教科担当とは別に、講師の女性(左奥)が難しい日本語を言い換え理解を助ける=5月17日、京都市南区・鳥羽高
少人数のクラスで授業を受けるパッデャさん(右)。教科担当とは別に、講師の女性(左奥)が難しい日本語を言い換え理解を助ける=5月17日、京都市南区・鳥羽高

  5月末に本紙山城版で連載「ともに暮らす〜国を超えて」を始めた。在留外国人数が昨年末、256万人と過去最多となる中、地域の実情や共生への鍵を探るのが狙いだ。第1部は「学び」をテーマに、取材班が学校や日本語教室を訪れた。学習者の意欲とは裏腹に、指導や支援の態勢は十分でない。政府は働き手不足を背景に、外国人の受け入れ拡大を進めようとしている。支援関係者の熱意や善意に依存せず、場当たり的でもない日本語教育の仕組みづくりを、国を挙げて進める時に来ている。

 「学校はとても楽しい」と話すのは、鳥羽高定時制(京都市南区)の1年パッデャ・アリャル・ディパックさん(16)=城陽市平川。昨春ネパールから城陽市で働く両親の下にやって来た。日本語で知っていたのは「ありがとう」だけ。祖国で義務教育は未修了だったが、日本では「学齢超過」となり、行政から就学情報はなかった。

 日本語教室を運営する市国際交流協会を訪れたことで道が開ける。日本語の学習を始めたほか、協会職員らが市教育委員会に掛け合い、4カ月後の昨年11月、地元の中学3年に編入。今春には目標の鳥羽高定時制に合格した。協会の大久保雅由事務局長は「今回は本人がたまたま国際交流協会に来たので存在を把握できた。通訳を探すのも一苦労で、一度に複数人だったらどうなっていたか分からない」と薄氷の対応を振り返る。

 学校でのマンパワー不足も顕著だ。中東出身の4人がいる南山城小(南山城村)は加配がなく、地元教委が日本語指導教員を配置。八幡小(八幡市)の日本語教室は7カ国15人が学ぶ中、指導者1人が複数の授業を同時にこなす。

 文部科学省によると、公立小中高校などで日本語指導が必要な児童生徒数は4万3947人(2016年度)と、10年前から約1万7千人増加。京都府内は442人(同)で、うち4人に1人は指導者不在などで特別な指導を受けられていない。日常生活が送れているので、学習言語が不十分でも日本語教育は不要と判断する例もあり、「実際は数字よりもっと多いはず」(府国際センター)。

 大人を主な対象とする地域の日本語教室も貴重な学び場だ。空白地だった久御山町では増える技能実習生の要望を受け、住民が講師や場所探しに奔走し今春開講。運営費は講師と受講生が賄う。府内18の日本語教室でつくる「京都にほんごRings」の渡部真理代表は「教室は学習以外に、よりどころの役割も大きいが、数が足りていない。講師の大半はボランティアで、善意で成り立っている」。

 課題が山積する中、5月末に超党派の国会議員連盟が「日本語教育推進基本法」(仮称)の要綱を了承。日本語教育の推進について、国や地方自治体の責務を初めて明記した。日本語教育に詳しい浜田麻里・京都教育大教授は「もっと地方のことに踏み込まないと、自治体が行うべき施策の道筋が見えない」と注文。「外国人を『労働力』としてみるだけでは孤立化を招き、問題も起きる。日本語を身に付け社会参画できる多文化共生社会は、国際化の中で強みになる」と指摘する。

 連載では今後、労働や生活に目を向ける。多様で暮らしやすい社会へ、記者として、一市民として考え続けたい。

[京都新聞 2018年6月6日掲載]

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