The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

「甲賀忍者」日本遺産認定1年 観光振興の妙案見えず

甲賀支局 門田俊宏
甲賀忍者の日本遺産構成文化財の一つで、10〜12月に大開帳で本尊が公開される櫟野寺(甲賀市甲賀町櫟野)
甲賀忍者の日本遺産構成文化財の一つで、10〜12月に大開帳で本尊が公開される櫟野寺(甲賀市甲賀町櫟野)

 「甲賀忍者」が昨年4月に文化庁の日本遺産に認定されて1年が過ぎた。日本遺産は、地域の文化財や伝承を観光に結びつけることを支援するもので、甲賀市も忍者観光振興へ模索を続ける。ただ忍者の実態が分かりづらいことに加え、観光になじみのない地域柄もあり、効果的な一手はなかなか見えない。

 「忍者観光の致命的な欠点は、訪れた人に『これがそうだ』と示すのが難しいこと。隠密行動で史料が少なく、地域の外で活動していたため市内に活躍の現場がない」。忍者にまつわる古文書を自宅で発見した渡辺俊経さん(80)は指摘する。「新名神高速道路で名古屋と京阪神の中間点にあり、地の利はあるのに」と、有利な条件を誘客に生かせていない現状を残念がる。

 同じ年に日本遺産に認定された信楽焼の産地である同市信楽町は、いち早く観光誘客に着目。毎年4月上旬に窯元有志が「ぶらり窯元めぐり」を、4〜5月の大型連休には陶器店らが「春のしがらき駅前陶器市」を開催するなど、住民主催の催しも盛んだ。

 市観光企画推進課によると、2017年の信楽町の観光客数は142万900人。甲賀忍者の日本遺産構成文化財12件のうち、多くの城館群や寺社がある甲賀町と甲南町は計31万200人にとどまり、4倍以上の開きがある。

 市は、信楽への来訪客を忍者観光にどう誘い込むかを課題に挙げる。注目するのは、同遺産構成文化財である櫟野(らくや)寺(甲賀町櫟野)の33年ぶりの大開帳だ。今年10〜12月、本尊の十一面観世音菩薩(ぼさつ)坐像(重文)が公開される。16〜17年に同寺の仏像20体を紹介する特別展が東京国立博物館で開かれ、21万人を動員する人気だった。市は大開帳を観光誘客の好機と捉え、コミュニティーバスの臨時ルート運行を計画する。三浦密照住職(39)は「過疎化で信徒が減っており、寺が生き残るために観光が必要。市の支援に期待している」とする。

 市内には今、民間の「甲賀の里忍術村」(甲賀町)、「甲賀流忍術屋敷」(甲南町)以外に忍者関連の観光施設がない。市は新たな集客施設を甲南町に整備する方針を打ち出し、本年度予算で計画策定費2千万円を計上した。  ただ、周辺は農村と工場、新興住宅地が混じる地域で、市観光協会の横川正己事務局長(63)は「観光なんてよそ者相手で面倒だと考える人も少なくない。地域がそれでは観光客は離れていく」と話し、まず住民の意識改革が必要と訴える。

 82年に甲賀の里忍術村を開業し、忍者観光の先駆者である甲賀株式会社の柚木俊一郎社長(67)は「忍者の観光案内ができる市民の養成や、市内に200〜300ある城館群を観光用に整備するなど、大胆なアイデアで行政にしかできないことをしてほしい」と市にハッパを掛ける。

 観光は多くの自治体が力を入れ、地域間競争も激しい。海外でも知名度の高い「NINJA(忍者)」というコンテンツをどう使いこなすのか、今後の動きに注目したい。

[京都新聞 2018年6月13日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP