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生殖細胞保存、がん患者を支援 京都など病院連携広がる

がん患者の生殖細胞保存ネットワークがある都道府県
がん患者の生殖細胞保存ネットワークがある都道府県

 抗がん剤や放射線療法によって若いがん患者が子どもをつくる能力を失った場合に備えて、患者の卵子や精子などを凍結保存する医療機関のネットワークが全国で広がっている。若いがん患者の生殖機能に関する情報不足を病院間で連携して補う狙いで、大学病院を中心に京都府や滋賀県など15府県で発足している。日本がん・生殖医療学会は「医療者の認識も十分でない中、さらにネットワークが増えれば」としている。

 白血病や脳腫瘍、乳がんなどの治療で使われる抗がん剤や放射線療法では、種類によっては治療を終えてから月経がなくなったり無精子症になったりするリスクがある。治療を始める前に、卵子や精子などを凍結保存すれば、将来子どもをつくる可能性を残すことができる。ただ医療関係者の中でも、こうした手段は十分には知られておらず、同学会によると、患者ががん治療を終えた後、不妊の悩みを持つケースは多いという。

 京都府では今年6月、京都大医学部付属病院などが中心となって、府内の17の病院やクリニックでつくる「京都・がんと生殖医療ネットワーク(KOF-net)」の運用を開始した。卵巣や卵子、精子を凍結保存できる医療機関と、生殖機能の温存に積極的に取り組んでいるがん治療施設が参加している。

 ウェブサイトでは、生殖機能が失われる可能性のあるがんの治療法を示す一方で、卵巣や卵子、精子を凍結保存した場合の利点とリスクを説明している。医療関係者は、同ネットワークを参考に、凍結保存できる施設へ患者を紹介することができる。ネットワーク構築に関わった京大医学部付属病院の堀江昭史医師は「保存できても将来、必ず子どもをつくることに成功するとは限らないが、希望を残すことはできる。より多くの患者さんや医療関係者にネットワークの存在を知ってもらいたい」と話す。

 滋賀県では2015年7月に、滋賀医科大付属病院を中心に県内のがん治療施設16病院などが参加して「滋賀がん・生殖医療ネットワーク」が発足した。ネットワークを立ち上げた同大学の木村文則准教授は「がん患者が子どもを持てる可能性を残すには、医療的な情報だけでなく公的な補助が必要」と指摘する。

 卵子や卵巣の凍結では1回につき数十万円、精子は数万円かかる。県は全国で初めて16年度から、1回につき女性は10万円、男性は2万円の助成制度を設けたが、まだ十分ではない。木村准教授は「国からの支援の必要性を訴えていきたい」と話す。

 13年に国内で初めてのネットワークを岐阜県内で作り、日本がん・生殖医療学会の広報委員長を務める岐阜大医学研究科の古井辰郎教授は「各ネットワークで運用の実態に差が生じている点が課題。今後、ネットワークの拡大と効率的な運用を働きかけたい」としている。

【 2017年09月13日 17時20分 】

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