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コラム凡語:石牟礼道子さん

 10日に死去した熊本在住の作家、石牟礼道子(いしむれみちこ)さんの祖母、モカさんは精神を病んでいた。幼少時、祖母に付き添うのは孫娘の役割だった。不知火海のほとりで遊ぶ時も、祖母と一緒だった。

 自伝的作品「椿の海の記」では、「おもかさま」と周囲に呼ばれた祖母との暮らしが描かれる。人々は「おもかさまには荒神さんがついた」と言い、つかれたように孫を連れて歩き回る祖母を受け入れていた。

 水俣病患者の姿を伝える代表作「苦海浄土(くがいじょうど)」(1969年)を読み返した。患者や家族を同情を排して描いている。水俣病は当時、「奇病」と呼ばれたが、患者らと対等に交流を重ねた背景には、幼い頃の祖母との暮らしぶりがあったのだろう。

 同書には、視力を失い四肢も不自由になってきたのに大病院での治療をかたくなに拒む少年が登場する。理由は「殺されるから」。

 姉やいとこは、既に病院で亡くなった。石牟礼さんは「暗がりの中に少年はたったひとり、とりのこされている」と書いた。淡々とした筆致が事態の深刻さを伝える。

 水俣地域では、他人の苦しみを放っておけない人を「悶(もだ)え神さま」と呼ぶという。被害救済を訴える集会などで患者が掲げた「怨」の旗や「水俣死民」のゼッケンは石牟礼さんが考えた。自身がまさに「悶え神さま」だった。

(京都新聞 2018年02月14日掲載)

【 2018年02月14日 15時00分 】

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