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「日本美術に風吹いた」 細見美術館20年、館長に聞く

細見コレクションの名品が並ぶ「はじまりは、若冲」展の会場(京都市左京区・細見美術館)
細見コレクションの名品が並ぶ「はじまりは、若冲」展の会場(京都市左京区・細見美術館)

 細見美術館(京都市左京区)が今年で開館20周年を迎える。実業家の細見古香庵(1901~79)に始まる3代が集めた琳派や伊藤若冲など江戸絵画を柱に、仏教美術、茶の湯美術などを所蔵する。琵琶湖疏水脇の美術館はけして大きくはないが、コレクションを中心に質の高い展覧会を開いてきた。細見良行館長に聞いた。

■若冲、琳派軸に 地道に魅力伝える

 「日本美術に全く風は吹いていなかった。印象派とかメジャーな西洋美術に対して、マイナーなイメージ。どうやって集客するかばかり考えていました」

 98年のオープン当時を細見館長はそう振り返る。「日本美術の美術館を作るといったら、周りから無謀やと言われたぐらい。若冲でさえ、ほとんど知られていなかった」。今でこそ若冲の知名度は上がったが、人気に火が付くのは2000年の京都国立博物館「没後200年若冲展」以降だ。開館1周年は若冲だけでは心もとないため、田能村竹田との組み合わせの展覧会を催した。来場者は少なかった。それが今では、若冲の講演を開くと、地方でも行列ができる。「この20年で、時代が変わった」と実感する。「70年かかって、戦後の呪縛が解けたのかもしれない。日本の芸術を素直に認められるようになった」

 開館から毎年開く琳派展は、今年20回目。地道にその魅力を広めてきた。14年の「琳派400年」では、その努力が実ったといえる。「商工会議所で琳派の講演会をすると、最初は病気の話をするのかと思われた。女性は着物などで琳派について知っていたが、おじさんたちにも知名度が広がったのが大きい」。琳派と若冲は美術館にとってまさにエースと四番だ。一昨年の若冲生誕300年では日本中を所蔵品が巡った。

 この年の春画展開催は歴史的な展覧会になった。「大英博物館で春画展を企画した学芸員が知り合いで、直接見に行った。もともと春画は公開されたり、飾られたりしていないものなので、とても色が美しい。変に隠したり、覆ったりしていない展示なので、きれいだった。いやらしさはなかった」。京都展の会場を引き受けた。不安はあったが、最終的に同館最高の8万人を超える入場者となった。「一度きりのお祭り騒ぎになってはいけない。春画については今後も展覧会を開きたい」

■記念展もぜいたくに

 新春を飾る20周年記念展第1弾は「細見コレクションの江戸絵画 はじまりは、若冲展」(2月25日まで 有料)。2代目が集め始めた若冲だが、展覧会名は初心者にも絵画を好きになるきっかけになってほしいという意味合いが込められる。館蔵の若冲19点すべてが出品される。「雪中雄鶏図」は独特の粘着質の雪の中、生命の塊となってエサを探すたくましい鶏の姿に若き若冲の姿がダブる初期作。多種類の11匹の虫たちが等しく合理的な視点で描かれた「糸瓜(へちま)群虫図」など名品ぞろいだ。同館の若冲は水墨が多いが、極彩色の図鑑的な絵画に比べ、筆の走り、勢い、息づかいがダイレクトに伝わってくる。特に初期は墨の発色が今も美しい。ネズミの婚礼、子犬などのモチーフは、小さな世界へ向ける画家の穏やかな視線も感じる。

 また、琳派の絵師らが数点ずつ展示の江戸絵画も、ぜいたくなラインナップだ。俵屋宗達「双犬図」、「伊勢物語図色紙『大淀』」のほか、尾形光琳「柳図香包」、乾山は「色絵唐子図筆筒」。池大雅や青木木米らも並ぶ。春の記念展第2弾は「琳派展20」として、江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一らを取り上げる。

【 2018年01月11日 16時30分 】

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