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しめ縄文化

 師走も下旬に近づき、迎春準備が各地で進む。先日、地域の役回りで氏神神社のしめ縄作りを体験した。鳥居や本殿などに飾る十数本、最長で3メートル以上ある▼農家から分けてもらった餅米のわらを用い、ねじり、つなぎ、結い合わせていく。餅米のわらは柔らかく、作業がしやすいそうだが、それでも力わざの連続だ。名人を中心に10人ほどで手分けし、半日がかりで完成させた▼しめ縄の「しめ」は、「占める」を意味し、邪気など悪いものが侵入しないよう結界を作る役割があるとされる。いわば魔よけである▼その形状などから日本人の蛇信仰との深いつながりを説いたのは、今は亡き在野の民俗学者吉野裕子さんだった。蛇は古くは縄文土器にも登場し、畏敬と嫌悪の双方のまなざしを集めてきた存在である。魔よけの象徴になったとしても何ら不思議ではない▼もっとも近年は、しめ縄に必ずしも稲わらが使われなくなったと聞いて驚いた。玄関などを飾る市販のものに外国産の水草が用いられることが多いという。見た目が青々として美しく、手間をかけずに作れることなどが理由のようだ▼新年に清浄な場を作り、農耕や穀物の神「年神様」を迎える。そんなしめ縄の目的から言えば、稲わらとは本来不可分なはずだが、考えさせられる変化である。

[京都新聞 2018年12月19日掲載]

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