凡語 京都新聞トップへ

沖縄戦

 この夏、話題を集める一本の記録映画を見た。太平洋戦争末期、日本で最大規模の地上戦が行われた沖縄戦の裏面史に迫る「沖縄スパイ戦史」だ▼民間人を含む20万人以上が犠牲になった沖縄戦は、1945年6月23日に組織的戦闘が終わる。だが、北部では10代半ばの少年を中心にした過酷な遊撃戦が続いていたことを映画は教える▼少年たちの部隊は秘密戦教育の特務機関、陸軍中野学校出身の青年将校によって村ごとに組織され、「護郷隊」と呼ばれた。正規部隊に編入された学徒の少年兵部隊「鉄血勤皇隊」とは別の組織である▼そのゲリラ戦で戦車への特攻など絶望的な戦いに挑み、約160人が戦死した実相が元少年兵らの証言であぶりだされる。精神に異常をきたすなど足手まといになった者は、命令で幼なじみの手で射殺されたという▼情報が敵に漏れないように住民をマラリアのはびこる島へ強制移住させる、住民同士を監視させて密告させる組織をつくる、さらにスパイ・リストに基づく住民虐殺…。映画が伝えるのは、軍が住民を手駒のように使い、本土決戦に向けた「捨て石」とした沖縄戦のやりきれない闇の深さだ▼軍隊は本当に住民を守る存在なのか。監督した三上智恵さんと大矢英代さんの問いは、今も続く沖縄の問いでもあろう。

[京都新聞 2018年08月15日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)