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京アニの惨事、息子重ね悲痛

福知山露店爆発で犠牲男児の母

 花火の見物客3人が死亡、55人が重軽傷を負った福知山市の露店爆発事故から15日で6年となるのを前に、10歳で亡くなった京都府京丹波町実勢の山名空君=当時小学5年=の母三千代さん(45)が14日までに取材に応じた。七回忌をともに執り行うつもりだった夫が5月下旬、急逝した。「天国にいる空が旦那を迎えてくれる」と悲しみをこらえる。7月18日、京都市伏見区で京都アニメーション放火殺人事件が発生した。福知山事故と同じく、ガソリンの炎が70人に襲いかかった。「大勢の人が空と同じような苦しい思いをしたと考えたら、言葉が出ない」と悲痛な胸中を語った。

きょう6年

 事故は2013年8月15日に発生。露店の店主が開栓した携行缶のガソリンに屋台の火が引火、大爆発を起こした。空君は祖父や友達、同事故で亡くなった同町の竹内弘美さん=当時(44)=とともに、打ち上げ花火を観覧するため由良川河川敷を訪れ、爆発に巻き込まれた。

空君が小学1年生のころに描いた桂司さんの似顔絵。三千代さんが優しいまなざしで見つめる(8日、京都府京丹波町)
空君が小学1年生のころに描いた桂司さんの似顔絵。三千代さんが優しいまなざしで見つめる(8日、京都府京丹波町)

 5月に夫急逝、「つらいけど2人へ祈り」

 「お母さん、おる?」。転院のため搬送される救急車の中、全身にやけどを負った空君はか細いながらも、精いっぱいの声を振り絞った。事故の4日後、空君は入院先で息を引き取った。

 三千代さんは事故後、募る悲しみから、夫の桂司さん(44)とぶつかり合うこともあった。しかし、年月の経過とともに空君の死を少しずつ、受け入れられるようになった。夫婦で「今年の夏、空の七回忌をしっかりしてやりたい」と話していたさなか、桂司さんが脳出血で倒れ、帰らぬ人となった。

 空君が少年野球を始めると、桂司さんは、経営する美容院の仕事が多忙でも息子の練習相手をしていた。仏壇の前には、空君が小学1年生のころに描いた桂司さんの似顔絵が飾られている。「空は優しい息子。『父ちゃん、来たんか』と話しながら、キャッチボールをしているのかな」と三千代さんは思い浮かべる。

 7月18日に発生した京アニ放火殺人事件は、そんな三千代さんの胸中を一変させた。「ガソリン」「携行缶」「爆発」「やけど」。事件を伝えるニュースには、露店爆発事故の時と同じような言葉が並んだ。空君と同様、事件数日後に亡くなる人もいた。「空は助かる、大丈夫、と思っていた。でも、体はすごく傷ついていた。やけどの怖さを思うと、京アニ事件の遺族の気持ちは痛いほど分かる」と苦しい表情で打ち明ける。

 容疑者本人が入院した状況も同じで「償いなんかより『いっそこのまま…』と思う半面、どうしてこんなことを犯したのか、知りたいと思う気持ちもあった」と当時の複雑な思いを吐露した。

 7月上旬、空君の七回忌と桂司さんの四十九日法要を一緒に営んだ。三千代さんは「周りの人からは『無理していないか』と言われる。本当はつらい。けど、いつまでも悲しんでいないで、心を入れ替えて二人のことを祈りたい」と遺影に向けて語りかけた。

【2019年08月15日掲載】