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党首討論  国民不安に応えられず

 安倍晋三首相と野党4党首による党首討論がきのう開かれた。今国会で初めて、昨年6月から約1年ぶりの開催だった。
 焦点となったのは、老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁金融審議会の報告書に端を発した年金問題だ。
 夏の参院選での争点化を狙う野党側の全党首が取り上げ、政府の掲げる「100年安心」は崩れていると語気を強めた。これに対して、安倍氏は、制度の持続性を高めていると繰り返した。
 全体で45分の短時間では双方が言いっ放しで、選挙向けの各党演説会と映った面は否めない。
 今回の党首討論は、野党の求める衆参両院の予算委員会の開催を与党側が拒み、代わりに提案した。選挙前の国会を「安全運転」で乗り切る戦略だ。国政全般の論戦舞台となる予算委は、2019年度予算が成立した3月から衆参とも開かれていない異例の事態となっている。
 短時間のやりとりで済む党首討論なら、野党が攻勢をかける「見せ場」を減らせるとの思惑は、安倍氏の討論姿勢にも表れた。
 立憲民主党の枝野幸男代表は「政府は安心ばかり強調し、実態や不安に向き合っていない」、国民民主党の玉木雄一郎代表も「報告書を受け取らず、都合の悪いことを隠蔽(いんぺい)する態度が不安を与えている」と批判した。
 これに対し、安倍氏は報告書で「大きな誤解を生じた」とする一方、「給付と負担のバランスを取ることで持続可能にしている」と制度の説明に終始。旧民主党政権時と比べ経済成長や雇用拡大で年金財政が改善したと誇った。
 議論はかみ合わず、国民に渦巻く不安を拭えたとはいえない。
 野党側も、短い持ち時間を安倍氏の説明で食われないよう、一方的な政策主張が目に付き、迫力を欠いた。
 国会の会期末が迫っているが、内閣不信任決議案を巡る攻防で対決モードを強める前に、徹底した審議で争点を明確にする努力を求めたい。
 党首討論の形骸化は何度も指摘されてきたが、深まらない議論は国会の現状を象徴している。真摯(しんし)で建設的な論戦を通じ、政治課題を浮き彫りにすべき「言論の府」の存在意義が問われている。
 討論を実のあるものにするには時間や回数の増加、テーマの絞り込みなど抜本的改革がいる。論戦の空洞化が続けば、国民の政治への関心を遠ざけるばかりだ。

[京都新聞 2019年06月20日掲載]

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