社説 京都新聞トップへ

辺野古土砂投入  民意背く強行許されぬ

 沖縄の民意をないがしろにした強行であり、許されるものではない。
 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設に向け、政府がきのう土砂投入に踏み切った。
 玉城デニー知事の中止要請や対話に応じない政府の姿勢は、対立を深めることにしかならない。
 来年2月24日に実施される、移設の賛否を問う県民投票を前に、埋め立て工事を既成事実化する意図がうかがえよう。
 安倍晋三首相は「沖縄に寄り添う」と言うが、むしろ県民感情を逆なでしていることに気づかないのだろうか。
 普天間返還の日米合意から22年。その後、返還後の県内移設が決まり、県民は反発した。早期返還を求める一方で、移設を「新たな基地」負担と受け止めている。
 悲惨な沖縄戦を経験し、米軍基地に県土の多くを占有される県民にとって、やむにやまれぬ反発だろう。本土で同じように移設強行できるのか、との声も聞こえる。
 玉城氏を知事選で大勝させたのは、保守層も含めた民意だ。このまま辺野古移設に突き進めば、安全保障の土台が不安定になりかねないことを、安倍政権は真剣に考えるべきだ。
 土砂投入で移設は新たな局面を迎えた。埋め立て予定海域約6・3ヘクタールに土砂が入る。これまでの護岸工事よりも海の生態系に与える影響が大きく、美しいサンゴの損傷が懸念される。いちど壊れてしまえば原状回復は難しい。
 同じ日、県の申し出で総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」の初会合が開かれた。埋め立て承認撤回の効力を国が停止したのを不服としたことの審査で、2月に結果が出る。過去の例から却下される公算大だが、県はその場合、効力回復を求め高裁に提訴することも検討している。政府と県の争いは長く続きそうだ。
 土砂投入の前日、玉城氏の直談判を受けた岩屋毅防衛相は「丁寧なプロセスを踏んだ」として予定通りの工事を表明した。しかし、県との集中協議は1カ月足らずで打ち切っており、形式的に手続きを進めたようにしか見えない。
 日米合意から20年余りたち、安全保障環境や米軍配備に変化がみられる。そうした中で、政府は沖縄の民意に向き合い、米国と移設問題の解決について積極的に協議しただろうか。
 「普天間返還のためには辺野古への移設が唯一の解決策」と繰り返すだけでは、何も解決しない。

[京都新聞 2018年12月15日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)