京都新聞
紙面特集

清川あさみ「千年後の百人一首」原画展
建仁寺塔頭・両足院

繊細な糸紡ぐ 歌の小宇宙

蝉丸「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」

 「清川あさみ『千年後の百人一首』原画展―糸で紡ぐ、歌人のこころ」が21日から、京都市東山区の建仁寺塔頭・両足院で開かれる。百人一首の百首を糸、布、ビーズなどで表現した作品で、古典の世界を繊細かつ現代風に描き出す。

 制作した清川あさみは兵庫県南あわじ市生まれ。写真に刺しゅうを施す手法で注目され、2007年以降、俳優やミュージシャン、漫画のキャラクターを題材にした作品「美女採集」などに取り組んでいる。

 「千年後の百人一首」(リトルモア、17年)は百人一首をテーマに、清川と詩人・最果タヒの作品を組み合わせた本。朝露にきらめく木々、澄んだ水面、果てしない銀河など歌人たちの心象を表すような風景が糸やビーズ、多様なイメージを転写した布で表現される。恋を表現した歌には横たわる女性のシルエットが描かれるなど、詠まれた思いがいまも生きていることを感じさせる。  

小野小町「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」

 大納言公任の「滝の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞こえけれ」は青の背景にビーズを連ねて流れ落ちる滝を表現する。滝に向かって小舟をこぐ人の姿は、記憶や歴史、永遠などの深い底に沈んでいくようだ。

 大僧正行尊の「もろともにあはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もなし」は、ひっそりと咲く桜に向けて伸ばした手を淡いピンクと緑の色調で表現し、作者と花が静かに心を通わせていることを物語る。

 各作品の大きさは約443×348ミリ。細やかな手法と色彩が、それぞれの歌の小宇宙を形づくる。


紀貫之 「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」
式子内親王 「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする」

陽成院 「筑波嶺の 峯より落つる みなの川 恋ぞ積もりて 淵となりぬる」
元良親王 「侘びぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ」

建仁寺両足院
清川あさみさん
案内

※作品はすべて©AsamiKiyokawa

■会期11月21日(水)~12月10日(月)会期中無休
■会場建仁寺塔頭両足院(京都市東山区大和大路通四条下ル)
■開場時間午前10時~午後5時(入場は閉門30分前まで)
■主催京都新聞、朝日新聞社、ASAMI.inc、リトルモア
■入場料一般1000円、中高大生800円、小学生以下無料
■問い合わせリトルモア03(3401)1042
■その他一部の作品はグランマーブル祇園(京都市東山区祇園町南側)2階カフェスペースで展示
(鑑賞にはカフェ利用が必要。午前11時~午後7時半)。
【2018年11月20日付京都新聞朝刊掲載】