京都新聞
紙面特集

「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」
美術館「えき」KYOTO


「ハマヒルガオと少女」1950年代半ば キャンバス、油彩

子どもの尊厳を描く

 いわさきちひろと聞いて作品が頭に浮かぶ人も多いだろう。「子ども」「花」「かわいい」。16日から美術館「えき」KYOTOで開催の展覧会「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」は、それらの印象でとらえられがちな作品を、制作背景、凝らされた技術などから4章構成で読み解く。

 1章は少女時代から1945年まで。18年に生まれたちひろは大正デモクラシーの潮流に触れて育ち、先鋭的な画家が活躍する絵雑誌「コドモノクニ」にあこがれた。成長とともに岡田三郎助、中谷泰らに学んで画力をつける。

 2章でちひろの世界は広がる。終戦後、日本共産党に入党、「原爆の図」で知られる丸木位里・俊夫妻らとの交流で技術を磨いた。社会運動系の刊行物の表紙絵なども多く描いている。

アトリエにてスケッチするちひろ 1970年(51歳)

 48年、日本童画会に入会。この頃、党の活動で知り合った松本善明と結婚、長男猛が生まれる。作品モチーフは「子ども」が多くなるが、ただ愛らしく描くのではなかった。水彩や鉛筆などの使い方に工夫を重ね、絵本の絵は「文の説明であってはならない」とし、「あめのひのおるすばん」など絵自体が物語るシリーズを生み出す。3~4章はちひろが「豹変」と呼んだ、これら表現上の発展を紹介する。

 アニメーション映画監督の高畑勲はちひろの絵を「(描かれた)子の気持ちをこちらが推測せずにはいられない」と評した。子どもの尊厳を見つめる姿勢は「戦火のなかの子どもたち」などに強く表れる。いわさきちひろとはどんな画家だったのか。その生き方とともに見つめ直す展覧会だ。

「指をくわえるあかちゃん」1967年『育児の百科』
岩波書店 洋紙、インク
「焼け跡の姉弟」1973年 『戦火のなかの子どもたち』岩崎書店 洋紙、鉛筆・墨
「蝋石の絵と子どもたち」1960年 『あいうえおのほん』童心社
洋紙、水彩・クレヨン
「小犬と雨の日の子どもたち」1967年
絵雑誌『こどものせかい』1967年7月号 至光社
洋紙、水彩・クレヨン・鉛筆
案内
■会  期11月16日(金)~12月25日(火)会期中無休
■会  場美術館「えき」KYOTO(京都市下京区、ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
■開館時間午前10時~午後8時(入館は閉館30分前まで)
■主  催美術館「えき」KYOTO、京都新聞、ちひろ美術館、日本経済新聞社
■協  賛野崎印刷紙業
■入 館 料一般900円(700円)、高大生700円(500円)、小中生500円(300円)※かっこ内は前売および障害者手帳提示の人と同伴者1人。
■問い合わせジェイアール京都伊勢丹075(352)1111。
■関連イベント「モーニング・ミュージアム」開館前に、ちひろの長男で、ちひろ美術館(東京都練馬区、長野県松川村)常任顧問・松本猛さんの案内で展覧会を鑑賞する。11月26日(月)午前9時15分(9時受付)~10時。千円。定員50人。075(342)5692へ申し込む。
「ギャラリー・トーク」(上島史子・ちひろ美術館主任学芸員)11月16日(金)午前11時から30分。申し込み不要。入館券が必要。
※作品はすべてちひろ美術館蔵
【2018年11月15日付京都新聞朝刊掲載】