京都新聞
紙面特集

華ひらく皇室文化―明治宮廷を彩る技と美
京都文化博物館

日本の粋、結実。精緻極まる逸品

2代川島甚兵衛「金華山鳳凰文様 紋織壁張試織・試刺」 内謁見所(鳳凰之間) 1887(明治20)年ごろ 川島織物文化館蔵

 明治改元から150年を記念する特別展「華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美」が10月2日、京都文化博物館で開幕する。激動の時代を経て極まった美術工芸、宮殿を飾った調度品、絵画、意匠を通して、明治の美をひもとく。

 同館の開館30周年記念展。皇室、旧宮家、華族、府などが所蔵する初公開を含む計124件を出展する。

 全国を巡る同展だが、京都会場は特別出品16件を加える。特に、明治前史としての第1章に力が入る。明治天皇の父・孝明天皇ゆかりの品として、幕末の京で決行した行幸を描いた「加茂行幸図屏風(びょうぶ)」、天皇元服の着物の一部など51点の裂地を貼り交ぜた屏風を展示。天皇が近衞邸の糸桜を詠んだ和歌巻(後期)に、狩野派による庭園画「近衞邸糸桜図」を添えて特別出品する。天皇の皇后・英照皇太后の遺品と伝わる金蒔絵(まきえ)の手箱、皇族の出産の際に用いられた屏風、御胞衣桶(おんえなおけ)など貴重な品も公開する。

 第2章以降、維新から明治へ。錦の御旗や、戊辰戦争勃発直後の騒然とした御所を描いた絵を通して歴史をたどれる。明治天皇に関連して祐宮(さちのみや)(同天皇)8歳時の絵、日常用の冠を着用した天皇の写真は珍しい。

 明治政府は文明国を目指し、積極的に海外の賓客をもてなした。迎賓施設の延遼館や鹿鳴館の調度品は豪華で、宮中の午餐(ごさん)などで明治天皇皇后の昭憲皇太后が着用したドレスは、華麗な交流を物語る。皇室の中心施設だった明治宮殿の室内装飾を手掛けたのは、西陣織の職人たち。戦災で宮殿は幻になったが、その緞帳(どんちょう)や壁掛けの試し織りや草稿画、天井画を飾った漆芸家柴田是真の花の下絵から、面影をしのぶことができる。饗宴(きょうえん)で配られた銀製菓子器「ボンボニエール」は、意匠を凝らした掌中の美を楽しめる。

 一方で、政府は殖産興業の一環として美術工芸品の輸出を奨励。優れた技術の保護、育成のため、帝室技芸員制度を創設した。京の画家今尾景年や陶芸家3代清風与平をはじめ、さまざまな分野で技の粋を集めた帝室技芸員の傑作が並ぶ。また、近代京都の漆芸界で活躍した戸嶌光孚(こうふ)や迎田(こうだ)秋悦の優美な技も光る。

 象徴的なのが、明治に生まれ、明治とともに消えてゆく七宝だ。絵画のような無線七宝を手掛けた関東の濤川惣助、深い黒の釉(ゆう)薬にみずみずしい花鳥を息づかせた京の帝室技芸員並河靖之、その工房に携わった中原哲泉ら。現代へ受け継がれる日本人の手技の原点がある。

12代西村總左衛門「刺繍孔雀図屏風」 明治後期 京都国立近代美術館蔵=前期
6代錦光山宗兵衛
「色絵金彩花鳥文花瓶」
1884(明治17)年以前 霞会館蔵

「通常礼服」 昭憲皇太后着用 明治(19世紀)
曇華院蔵
「藤尾長鳥蒔絵提重」昭憲皇太后遺品 明治(19世紀)

ボンボニエール 和船形
学習院大史料館蔵
柴田是真「明治宮殿天井画下絵(山吹)」 1886(明治19)年 東京芸術大蔵=前期
今尾景年「富士峰図」 泉屋博古館分館蔵 明治後期―大正期

竹内忠兵衛/七宝会社製「七宝草花文双耳花瓶」
明治前期 霞会館蔵
並河靖之「菊御紋蝶松唐草文七宝花瓶」 明治初期-中期(19世紀) 泉涌寺蔵
撮影©山崎兼慈


京都会場 特別出品作品

狩野派「近衞邸糸桜図」 江戸中-後期 特別出品=後期


「明治天皇像」 1872(明治5)年
内田九一撮影 特別出品
「御胞衣桶」 江戸後期 特別出品
案内
■会     期10月2日(火)~11月25日(日)月曜休館(祝日の場合は開館、翌日休館、10月22日は臨時開館)
展示替えあり
前期=10月2~28日 後期=10月30日~11月25日
■開 室 時 間午前10時~午後6時 金曜日は午後7時半まで(入場は閉場各30分前まで)
■会     場京都文化博物館(京都市中京区三条高倉)
■主     催京都府、京都文化博物館、毎日新聞社、MBS、京都新聞
■入  場  料一般1400円(1200円)大学・高校生1000円(800円)中・小学生500円(300円)
かっこ内は前売り、20人以上の団体 障害者手帳提示の人と付き添い1人まで無料。
■問い合わせ京都文化博物館075(222)0888
■連続講演会▽13日=「岩倉具視と幕末の朝廷」 講師は松中博氏(京都市歴史資料館研究員)
▽27日=「明治期京都の七宝-産業と美術工芸の狭間」 講師は畑智子氏(京都文化博物館学芸課長)
▽11月17日=「帝室技芸員-その成立と役割」 講師は塩谷純氏(東京文化財研究所文化財情報資料部)
いずれも午前10時半から、同博物館3階フィルムシアターで。定員160人。無料。同展入場券が必要。
■開館30周年記念で無料開館9月26~30日 同館2階総合展示とフィルムシアターで
【総合展示】
「近衞家 王朝のみやび 陽明文庫の名宝8」▽「袿(うちき)」▽「祇園祭-油天神山の名宝-」
【フィルムシアター上映予定】
9月26、28日「夜の河」▽27、30日「赤線地帯」▽29日「炎上」
平日は午後1時半と6時半、土日は午後1時半と5時の上映
【2018年9月25日付京都新聞朝刊掲載】