日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

「思いやり」の継承

橋詰秀彦
株式会社日立製作所 京都支店長
橋詰秀彦

日本人の所作や言葉遣いには、常に相手への「思いやり」が込められていると感じます。特に、日本の歴史や文化を色濃く受け継いでいる京都では非常に強く感じる次第です。
社会インフラ(社会・生活環境)事業を担う弊社は、この「思いやり」という日本人の心を忘れてはならないと常日頃感じています。便利な社会を追求していくのは私共の使命でありますが、それは持続可能なものでなければなりません。いかに便利なものであっても、地球環境に負荷をかけたり将来にツケを残したりすることがあってはならないのです。つまりは、次の世代への「思いやり」が重要であると考えています。最近ではヘルスケア事業にも力を入れております。このたび、京都市上京区内に建設予定の「永守記念最先端がん治療研究センター」に、京都府初となる陽子線がん治療システムを納入させていただくことになりました。体への負担が少ない次世代のがん治療システムで、2018年度中の稼動を目指しております。
日立では、グループの技術と総合力を発揮し、予防から検査・診断・治療、介護に至るまで、「思いやり」の精神から医療業界を包括的に支援していきたいと考えています。人々が健康で、安心・安全に暮らせる社会を目指し、持続可能な未来をこれからも探求してまいります。

株式会社 日立製作所
京都支店=京都市下京区四条通烏丸東入ル 四条烏丸FTスクエア4階
Tel.075-223-5611/http://www.hitachi.co.jp/area/kansai/

おもてなしの心
~分煙社会の実現に向けて~

中村健一
日本たばこ産業株式会社 北関西支社長
中村健一

京都は、1894(明治27)年、村井吉兵衛氏が日本で初めて両切り紙巻きたばこの製造・販売を行ったことから、「たばこ発祥の地」ともいわれております。村井氏はこのたばこ販売により、一代で巨万の富を得、今でも彼の足跡は京都市内に数多く存在し、観光客の目を愉(たの)しませております。
さて、JTでは、植物由来の原料を使用しており、また「事業を支えてくれる自然に感謝し、京都が守り抜いてきた伝統や文化を大切にしたい」との思いから、2年前より京都造形芸術大学、京北銘木生産共同組合と、京都が育んだ伝統産業である銘木「北山杉磨き丸太」の利用方法を検討してまいりました。昨年12月、京都市や地元の皆さまのご理解をいただき、たばこを吸われる方、吸われない方が共に快適に過ごしていただけるよう、景観にも配慮した喫煙所を高台寺公園に整備。ベンチとして利用できる「磨き丸太」も設置した上で、京都市へ寄贈させていただきました。
京都市はご承知の通り、観光都市の中で2年連続世界ナンバーワンとなり、多くの観光客で賑(にぎ)わっております。「心のふるさと京都」に訪れる多くの観光客の皆さまを、「たばこを吸われる方にとっても吸われない方にとっても快適で共存できる」という「おもてなしの心」でお迎えできるよう、分煙社会を実現したいと考えております。

日本たばこ産業株式会社
北関西支社=大阪市北区大淀南1-5-10 JT大阪ビル4階
Tel.06-7637-1930/http://www.jti.co.jp/

外向き志向で
未来を拓け

鈴木順也
日本写真印刷株式会社 代表取締役社長
鈴木順也

当社は近年、文部科学省のスーパーサイエンススクールの認定を受けた地元の高等学校が独自に主催する国際科学研究フェアの一環として企業見学を受け入れています。
科学技術人材の育成を目的としたプログラムで、同校は世界21カ国から生徒を招き、研究発表を通じて国際交流を深めています。生徒たちが当社を訪問する数時間の中で、毎年私は30分程度の授業を担当。科学が研究だけにとどまらず、具体的に人々の生活の役に立つべきであるのとの視座から、当社における技術開発と事業展開の関連性について教えています。生徒たちは印刷技術の応用領域の広さに驚く一方で、質疑応答の時間では積極的に手を上げます。製品サプライチェーンなど事業に関する質問に加え、企業の社会的責任(CSR)への当社の姿勢について聞く生徒がおり、今や高校生の知識レベルは大人顔負けです。とりわけ他国の生徒は積極的な発言が目立ちますが、日本人の生徒は英語力に自信がないこともあってか、こういう場面に不慣れな印象を受けます。
次世代では、私たちの世代以上に政治、経済、倫理、競争、文化など多くの面で世界との距離が短くなります。そのなかで存在感を発揮するために、若いうちには地元のこと以上に、世界の動向に関心を持ち、積極的な関与を通じて学び、行動する機会を設けてほしいと思います。

日本写真印刷株式会社
京都市中京区壬生花井町3/Tel.075-811-8111
http://www.nissha.com

京都の街から
漢字文化を発信する

髙坂節三
公益財団法人日本漢字能力検定協会 代表理事 会長
髙坂節三

「社会生活に必要な日本語・漢字の能力を高め、広く日本語・漢字に対する尊重の念と認識を高める」ことを理念とし、わが日本漢字能力検定協会は「日本漢字能力検定」(漢検)の実施をはじめ、普及啓発・支援活動、調査・研究活動、日本語能力育成活動を行ってまいりました。
年末の風物詩となった「今年の漢字」は昨年で21年目を迎え、公募により最も応募の多かった漢字「安」を清水寺森貫主にご揮毫(きごう)いただきました。また3年目を迎える「今、あなたに贈りたい漢字 コンテスト」も、毎年多くの応募をいただき、物ではなく漢字を贈るからこそ伝わる、素直な気持ちに深く感動いたしました。このように、表意文字である漢字をあらためて見つめることで、普段忘れてしまっている日本語の素晴らしさを再認識することができます。
弊協会は今年、京都市東山区祇園に「漢検 漢字博物館・図書館」を建設します。まさしく京都の中心から、世界へ向けて漢字文化を発信する拠点として活動してまいります。日本語、漢字を学ぶ楽しさ、面白さを創造し、皆さまの学びを支え、わが国における生涯学習の振興と日本文化の発展に寄与してまいります。

公益財団法人 日本漢字能力検定協会
京都市下京区烏丸通松原下る五条烏丸町398/Tel.075-352-8300
http://www.kanken.or.jp/

時を超えた
コミュニケーション

浜田英敏
富士ゼロックス京都株式会社 代表取締役社長
浜田英敏

本業を通じての社会貢献活動として「複写機を使用しての古文書複製活動」を始めて、今年で8年目になります。これまで200冊(巻)を超える複製の贈呈をしてきました。
最近の活動では、地元京都の老舗商家の「家訓」やユネスコの記憶遺産に登録された舞鶴引揚記念館の「白樺日記」、京都府立総合資料館の「東寺百合文書(ひゃくごうもんじょ)」など幅広い資料の複製作業ができるまでになりました。また活動地域も京都だけではなく、北は福島や新潟、南は鹿児島まで広がってきました。
これらの文書は全て先人の知恵が詰まった、現在・未来の日本人に残された貴重な資産です。これまでの「複製活動」により、貴重であるが故に大事に蔵の奥に保管されていたものを、「手に取って触れることができる」存在にすることができました。しかしながら、たった200?300年前の日本人が書いた文書¦和紙に墨で手書き¦に何が書かれているのかを読み取り、そして理解できる現代の日本人は数少ないのが現実ではないでしょうか。
真の「時を超えたコミュニケーション」を実現させるには、外観の複製に加え、内容をどう現代人に理解できるようにするかが必要で、それが今年からのチャレンジかなと感じています。

富士ゼロックス京都株式会社
京都市中京区三条通烏丸西入御倉町85-1 烏丸ビル7階
Tel.075-255-3091/http://www.fujixerox.co.jp/ktx/

おもてなしの
イノベーション

福永晃三
株式会社フクナガ 代表取締役
福永晃三

地方創生の目玉に観光が注目を集めています。インバウンド(訪日外国人)が過去最多を更新し、年間2千万人に届く時代を迎えました。観光関連産業は、裾野が広く小売商業に及ぶため、京都は他より一段階早い景気回復も見られる恵まれた土地柄です。いま訪日客増加と東京オリンピックに備えて、政府は観光を地方創生の原動力と捉えて広域観光政策を進めています。観光にここまでスポットが当たるとは思ってもいませんでした。
昨年9月、パリで「観光産業におけるイノベーションとサービスの質向上」をテーマにフォーラムが開催されました。フランスは8400万人が訪れる観光大国で、多くの側面から学ぶことができます。京都は独自性、優位性、国際性などに優れているものの、観光業界の産業化意識が遅れています。観光産業は経済とつながり、100パーセント人間関係をベースとする「おもてなし産業」です。先進国フランスで体系化した観光学やマネジメントに、この京都の「おもてなし」精神が連結できないか模索中です。
フクナガは、紅茶文化のベンチャーとして昭和に始まり、85年を経て、少子高齢化時代に突入しました。若者も、熟練者も、新鮮な発想力を持つことが肝心です。高品質なおもてなしをイノベーションするフクナガとして、食文化の質の追求と日本の真心で未来に貢献したいと思います。

株式会社 フクナガ
京都市中京区高倉通御池上ル柊町584番地/Tel.075-221-0593
http://www.fukunaga-tf.com/

人間としての
摂理を忘れない

福井正憲
株式会社福寿園 代表取締役会長
福井正憲

地球の端々まで、旅をすることが好きな私は、ミラノ万博に行く機会に、十字軍騎士団の本拠地だったマルタ島とダイアナ妃が最後に過ごされたイタリアのサルデーニャ島を訪れました。その旅の途上で母娘二人連れと同席することがありました。この際、娘さんに何気なく「ご結婚は」と語り掛けたところ、「私は嫁がほしいの」とおっしゃったのに驚き、思わず苦言を呈してしまいました。「あなたは、あなたである前に人間であり、さらに人間である前に生物であることを忘れないでほしい。すべての生物には天命があります。それは、夫婦で尽くす人類への使命です。その天命を忘れては困ります」と説教調になってしまいました。後刻、再度お母さんにお会いした時、深く感謝の礼を言われたのでほっとしました。娘さんは理系の研究員で、男性以上に仕事ができるのだそうです。だから嫁がほしいという発言になったのでしょう。しかし人間社会で、その人が優秀であればあるほど、天命を果たすべきです。
人間社会は人と人との間の交わりによって成り立っています。そこにはお互いに守るべきルールや規制があって初めて自由と平等が享受できるのです。特に天が与えた摂理は、人間として、生物としてその使命を果たし、神が決めた天命のもと、人間が決めたルールの中で、自由と平等で平和な社会を人間として築く努力をすべきだと思います。

株式会社 福寿園
京都府木津川市山城町上狛東作り道11/Tel.0774-86-3901
http://www.fukujuen.com/