日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

京都発のグローバル化

村田晃嗣
同志社大学 学長
村田晃嗣

急速な少子化とグローバル化が日本の社会と大学に迫っています。この二つのトレンドの故に、その土地固有のもの(ローカリティ)や伝統が一層重要になってきているように思います。外では得がたいもの、量産しにくいものに付加価値が高まるのです。京都の町と文化は、その典型ではないでしょうか。また、グローバルな通用性をもつには、自分自身の専門分野や仕事といった狭い領域にとどまらず、文化を語り、芸術に親しみ、宗教について思い巡らすなどをして、幅広い視野と知識、関心を育まねばなりません。京都はそれに最も適した町といえます。
教育、とりわけ高等教育にとっても、個性の尊重や多様性の重視、そして、数値では測れない質的な側面が、ますます大切になってきています。掛け値なしに、同志社は京都の地で140年の歴史を重ねてきました。老舗のグローバル化―それが、この地にあって同志社大学の目指す教育の目標です。
また、グローバル化には外国語の運用能力だけではなく、宗教への理解や感性が不可欠です。個々人が信仰深いかどうかは別にして、宗教的な人々や社会に多様に対応し、交流していかなければなりません。寺社仏閣の町の中心に位置し、キリスト教を徳育の基本とする本学は、この宗教の視点をさらに大切に育んでいきたいと考えています。老舗のグローバル大学として、京都発のグローバル化に寄与してまいります。

同志社大学
京都市上京区今出川通烏丸東入/Tel.075-251-3120
http://www.doshisha.ac.jp/

世界の仲間と
未来を創ろう

小林達生
東京海上日動火災保険株式会社 京都支店長
小林達生

京都は長い歴史を経て貴重な文化財や京料理などの伝統文化が継承されている一方、世界の最先端ともいえる優れた技術革新を生み出す「ものづくり」に挑戦する気風や良き文化が育まれています。こうした京都が育む「知恵・工夫・こころ」は、京都を訪れる外国人観光客・留学生に各所で深い共感を得て、魅了しています。
こうした中、本年はオリンピック・イヤーであり、わが国では東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた準備が本格化してまいります。
世界の人々が注目する東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、世界に向けて、わが国が誇る利便性の高いインフラ技術・テクノロジーを発信するばかりではなく、京都においても培われた「日本人のこころ」であるおもてなしの心や、きめ細かな気遣い、感動体験を世界の人々に共感していただくことが期待されています。
東京海上日動は、東京2020オリンピック・パラリンピックゴールド損害保険パートナーとして、損害保険商品・サービスについての知見・技能などを提供し、大会運営を支援いたします。世界のさまざまな人々が集まり、注目する東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への支援を通じて、素晴らしい財産である「日本人のこころ」を世界の人々にお届けしていくことに微力ながら貢献してまいります。

東京海上日動火災保険株式会社
京都支店=京都市下京区四条通麩屋町西入立売東町22
Tel.075-241-1151/http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/

生命・暮らしを守る
医療の職人たれ

武田隆久
武田病院グループ 理事長
武田隆久

近年、注目を浴びる日本の品質。50年の運行で死者がゼロという新幹線。3億キロもの距離にある小惑星から微粒子を持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」など、飽くなき品質追求を行う日本人の特性は、「総職人気質」であるといえるでしょう。
こうした職人が活躍するのは、エンジニアの世界だけではありません。われわれ医療の世界も、医師、看護師、事務職員に至るまで色濃い「総職人気質」です。チーム医療に取り組み、治療・安全のための職人技を日夜磨いています。
日本の医療技術は、国の成長戦略にも掲げられ、国際的貢献が求められています。ここ京都でも私が大会長となり、国際観光医療学会学術集会を開催するなど、世界に目を向けた活動が活性化しています。
その一方で、国内の医療を取り巻く環境は厳しく、社会保障費の増加を抑制するため予算の絞り込みが行われています。予算(診療報酬)が総枠で減らされていく中、どうやって十分な医療を患者さんに提供していくか、現場はいつも苦慮しています。
冒頭の偉業と比べると小さなことかもしれません。それでもお一人お一人の生命・暮らしを支えるため、医療の職人たちは日々努力を続けています。今後も当グループでは「思いやり」の心を大切に、地域社会への貢献を目指してまいります。ご支援、ご協力をお願いいたします。

武田病院グループ
京都市下京区塩小路通西洞院東入東塩小路町841-5
Tel.075-361-1351/http://www.takedahp.or.jp/

「育てよう、未来の種」

瀧井傳一
タキイ種苗株式会社 代表取締役社長
瀧井傳一

私たちが毎日食する野菜や癒やしを与えてくれる美しい花。種苗業はそのもとである種を扱うことを生業(なりわい)としています。
当社は昨年、創業180周年を迎えることができました。「より良い種子の創造と安定供給により社会に貢献する」という企業理念のもと、10年先、20年先にどのようなものが求められ、世の中に受け入れられるのかを予測し、それに向かって一段ずつ積み上げて新しい品種を開発しています。人々や社会の要望に応えるべく夢のある優良品種を創造するとともに、その種を安定的に供給し続けることが当社の社会的責任であり、種苗業で最も大切な「信頼」に繋(つな)がります。
古来より農業は、自然と向き合いながら地道な作業を積み重ねることによって豊かな実りを獲得する営みであり、農業は日本人の精神性や文化を育む上で大きな役割を果たしてきました。スピード優先の時代だからこそ、四季の移ろいを感じ、一つ一つ小さな歩みを大切にする、日本人の根底に流れる心が以前にも増して重要になるのではないでしょうか。
豊かな食文化と潤いのある生活の実現のために、豊富な遺伝資源と確かな技術、そして農業への深い愛情をもって、これからもタキイは「未来の種」を育てていきたいと考えています。

タキイ種苗株式会社
京都市下京区梅小路通猪熊東入/Tel.075-365-0123
http://www.takii.co.jp/

京都の知恵を合わせて、
より良い地球環境に

武田一平
ニチコン株式会社 代表取締役会長
武田一平

1200年の歴史を誇る古都、京都ではまだまだ若輩ですが、皆さま方のご支援により、当社は昨年8月に創立65周年を迎えることができました。
烏丸御池の交差点を夜ごと行き交う人々の足元を、行燈(あんどん)のようにほんのりと照らす当社の本社ビルも、ずいぶんおなじみになったのではないでしょうか。そこに使われる電力の一部は、屋上に設置した蓄電型太陽光発電システムから生まれた自然エネルギーです。
京都のみならず、地球を永く未来にわたってより良い環境にするために、当社では家庭用蓄電システム、電気自動車の普及を後押しするV2Hシステムや急速充電器などの環境関連商品を市場導入しています。また、昨年も「京都地域スーパークラスタープログラム」という産学・産産連携の開発プログラムにて、京都大学、ローム株式会社と共同研究することで次世代半導体材料シリコンカーバイド(SiC)を用いた、高効率のSiC電力変換モジュールを開発することができました。今後もさらに開発を進め、環境関連商品へと展開する予定です。このように新商品開発には独自技術のみならず、京都の大学や企業との連携が大きな役割を果たしています。
これからも京都の知恵をより合わせ、地球環境に寄与するような商品づくりを通じて、100周年の時も京の都をほんのりと照らし続けていきたいと思っております。

ニチコン株式会社
京都市中京区烏丸通御池上る/Tel.075-231-8461
http://www.nichicon.co.jp/

「京都鉄道博物館」
開業を迎えて

岩崎悟志
西日本旅客鉄道株式会社 執行役員近畿統括本部京都支社長
岩崎悟志

わが国に鉄道が初めて誕生したのは1872年のことでした。それから143年の時を重ね、安全性と快適性を追求し、蒸気機関車(SL)から新幹線へと進化した鉄道は、私たちの生活とともに歩んできた一つの文化であると思います。
そんな鉄道をさまざまな角度から体感していただける「京都鉄道博物館」が、いよいよ4月29日に梅小路に誕生します。
京都の皆さまに43年間お世話になった梅小路蒸気機関車館から引継ぐ車両も含め、53両の貴重な車両を展示する日本最大級の鉄道博物館となります。
コンセプトは「地域と歩む鉄道文化拠点」。
子どもから大人まで楽しく学ぶことができるよう「見る、触る、体験する」を重視した展示を行うとともに、周辺施設などとの連携により地域の活性化に取り組んでまいります。また、京都鉄道博物館の開業により、梅小路公園などがある梅小路地区は家族連れの皆さまに、よりお楽しみいただける地域になります。これを契機とし、京都駅から梅小路地区までの賑(にぎ)わいの創出と回遊性の向上を目指す「梅小路みんながつながるプロジェクト」を通じて、地域の皆さまと共に地域の魅力の創出に貢献してまいりたいと思います。
こうした営みを通じて、私どもは鉄道事業者の使命である安全性の向上に努めるとともに、地域共生企業となることを目指してまいります。

西日本旅客鉄道株式会社
京都市南区西九条北ノ内町5番地5/Tel.075-682-8004
http://www.westjr.co.jp/

京都人の度量II

齋藤 茂
株式会社トーセ 代表取締役会長
齋藤 茂

ここ数年、京都には多くの外国の方が訪れており、インバウンドの業界も活況となっています。われわれが作る日本のコンテンツは東南アジアで絶大な人気があり、それがインバウンドの増加に繋(つな)がっている側面もあるでしょう。私は錦市場によく行きますが、最近はほとんどが外国の方ばかりという時もあり、売れる商品も今までとは全く違うものになってきていると聞きます。
一方で、今の状況を迷惑に思う方も少なからずおられるようです。道は混雑し、常識の違いに困惑し、祇園では舞妓さんが追いかけ回されたり、引っ張られたり…。
ですが、このような状況でもデフレで暗かった時の日本より、海外から人気のある現在の日本の方が良いと思われませんか。当社は1993年に中国へ進出し、現地の友人もできると国や文化への理解が深まりました。2013年に進出したフィリピンも、行って分かった良さがたくさんあります。日本は周りに海があったおかげで、歴史年表を見てもずっと同じ国名が続いてきた世界でも類をみない国家ですが、今まさにグローバルな時代への変化が訪れています。
このような時こそ、京都人の度量の深さを見せ、外国の方に広く心を開き、温かな気持ちで接することで、ますます、そして末永い支持が得られるのではないでしょうか。

株式会社 トーセ
京都市下京区東洞院通四条下ル/Tel.075-342-2525
http://www.tose.co.jp