日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

「忘」・書=森 清範 清水寺貫主 
写真=中田 昭

取り組みと目的

日本人の忘れもの

この美しい国ではぐくまれた宝ものがあります。
遠い祖先が積みあげてきた技。
磨きをかけた暮らしの知恵と作法。
花と語らい、鳥と遊び、風をたのしみ、月と戯れ
その花鳥風月に命を見つけ、神が宿ると信じて
草木国土悉皆成仏のこころで、
畏怖と親しみを自然に抱いた日本人。
自然をともに感じ合うための、もてなしや遊び心など
ゆたかな文化を創造してきた、京都から
「こころ、ここに」
日本に伝えたいことがあります。


・・・明治維新後、日本は欧米など西洋文化を追い求め、近代化への道をひた走りました。第2次大戦の敗戦を機に米国を中心とした欧米文化の吸収力は、単なるあこがれや模倣ではない自国文化として昇華し、その原動力は経済大国といわれるまでになりました。
一方で経済、文化などのグローバリズムがすすむ中で、昨今の混沌とした空虚感に満ちた世相を顧みると、我々日本人が悠久の歴史のなかで培ってきた"心"までも捨て去ってしまったのではないかとさえ思われます。
我々が置き去りにしてきた"心"とは、たとえば"大自然"にいのちが宿るとする"山川草木悉皆成仏"の考え方であり、質素な生活を心がける"始末のこころ"、四季を通して自然と共生し生活する"生き方"、 道徳観や倫理観など人格形成に影響を及ぼす"しつけ教育"、"読み書きそろばんなどの基礎教育"、合理化を追求することで失われた"もてなしの心や遊び心"です。
このような日本人が持っていた"心"は近代化の道でその多くが置き去りにされ、便利さや損得など個人や団体、ひいては国家のエゴを正当化する社会の流れになり、現代の希薄な人間関係を招いたのではないでしょうか。
京都は1200余年の歴史に裏打ちされた生活の知恵をもとに、文化を創造してきた街であり、文化、経済、宗教、教育など様々な分野の"日本人の心"が今なお残る街です。

京都新聞では2011年より、文化、経済、宗教、教育など様々な分野の"日本人の心"が今なお残るこの京都から「日本人の忘れもの」を取り戻すキャンペーンを実施し、現代日本人が忘れたもの、取り戻すべき心、新たに必要な価値観は何かを発信してきました。そして2014年、その考え方を継承し発展させていくため、未来を生きるために必要となるものを模索する「日本人の忘れもの知恵会議 ~未来を拓く京都の集い~」を発足。同会議では、趣旨にご賛同いただいた文化人の方々や企業、団体の代表者の方々とともに、これからの社会において必要なことは何か、未来(次世代)に伝えていくべきものは何かを考え、発信し続けていきたいと考えています。


主催:京都新聞
企画協力:株式会社日商社