京都新聞
紙面特集

特別展「フルーツ&ベジタブルズ 東アジア 蔬果図の系譜」
泉屋博古館

目で味わう秋

 とれたての新鮮野菜、たわわに実った果物、秋の収穫。有史以来、人は自然の恵みへの感動と喜びを絵にしてきた。京都・錦小路の青物問屋主人だった伊藤若冲をはじめ、日本人絵師たちも多様な「蔬果(そか)図」を手掛けた。そんな大地の恩恵を描いた絵画を紹介する特別展「フルーツ&ベジタブルズ」が3日、泉屋博古館で開幕する。

呉春「蔬菜図巻」 江戸時代 泉屋博古館蔵 前半部分=11月3~21日 後半部分=11月22日~12月9日
伊藤若冲「菜蟲譜」(重要文化財) 江戸時代 佐野市立吉澤記念美術館蔵 前半部分=11月3~21日 後半部分=11月22日~12月9日

 蔬果図の源流は、中国・宋代。丸々と太った果実の生命力は子孫繁栄、吉祥の表象へつながり、泥土の中で育っても清廉な色や形を見せる蔬菜は、高潔なイメージを連想させる。蔬果図は、中国から朝鮮を経て中世日本に伝わった。同展は、そうした野菜果物画51点が集結する。

 江戸中期、京の町で2人の絵師が長大な野菜絵巻を描いた。1人は若冲、もう1人が呉春だ。若冲「菜蟲譜(さいちゅうふ)」(重要文化財)は10メートルを超える画面に、約100種類の野菜や果物が楽譜のようにリズミカルに並んでいる。この若冲の絵に触発されたらしいのが、呉春だ。美食家の呉春は、京都近郊でとれた京野菜をモチーフに「蔬菜図巻」を描いた。流れるような自由な筆遣いで、野菜たちが精彩を帯びる。若冲とはひと味違う情趣を見せる。

伊藤若冲「果蔬涅槃図」(重要文化財) 
江戸時代 京都国立博物館蔵 
11月22日~12月9日展示
富岡鉄斎「野菜涅槃図」 明治時代 個人蔵

 初公開の富岡鉄斎「野菜涅槃(ねはん)図」もみどころ。釈迦(しゃか)に見立てた二股大根の臨終に、さまざまな野菜たちが集う。「最後の文人」と呼ばれた鉄斎らしい奔放な筆致が楽しめる。関連が指摘される、若冲晩年の大作「果蔬涅槃図」(同)も出品する。

 ほかにも元代の「草虫図」(同)、日本最古のトマトのスケッチといわれる狩野探幽「草花写生図巻」、円山応挙「筍(たけのこ)図」、雪村周継「蕪(かぶ)図」など盛りだくさん。味覚の秋は、目でも味わいたい。

案内
「草虫図(右幅)」(重要文化財) 
元時代 東京国立博物館蔵 
11月3日~16日展示
TNM Image Archives
■会  期11月3日(土・祝)~12月9日(日)
月曜休館 展示替えあり
■開館時間午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
■会  場泉屋博古館(京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町)
■主  催公益財団法人泉屋博古館 毎日新聞社 京都新聞
■入 館 料一般800円 大学・高校生600円 中学生350円  小学生以下無料
※20人以上の団体は2割引き障害者手帳提示の人は無料
■関連イベント▽特別展示「蔬果を愛でる-文人の書斎から」=11月3日~12月9日
同館内各所 しつらえ・佃一輝氏(一茶庵宗家)
▽佃一輝スペシャルトーク=11月10日午後2時半、同館講堂 当日先着100人
▽体験型講座「伊藤若冲『菜蟲譜』をひらく-お話と複製鑑賞体験」=11月17日午後1時半、末武さとみ氏(佐野市立吉澤記念美術館学芸員)
同館講堂 定員50人 要予約 同館075(771)6411
▽講座「呉春から読み解く蔬果図の世界」=24日午後1時半、講師は実方葉子氏 (同館学芸課長) 同館講堂 当日先着100人
※イベントはいずれも入館料が必要
【2018年11月2日付京都新聞朝刊掲載】