The Kyoto Shimbun |
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(18)レイ・ハラカミ 「lust」電子楽器で紡ぐ複数の音色最新機材は使わず 京に拠点、世界へ
CDアルバムは、電子音で作られているが、牧歌的で、どこか懐かしい曲で始まる。別の曲に移るとテンポが早くなり、宝石のような音のきらめきに心が躍る。 ミュージシャンで作曲家のレイ・ハラカミさん(35)は、テクノ・エレクトロニカと呼ばれるジャンルの第一人者。電子楽器を使い、ジャズやクラシックなど幅広い音楽の要素が混じった作品を送り出す。 2005年に発表した最新アルバム「lust」は、自宅の機材で1年間かけて制作。若者らの支持を集めただけでなく、前年にアルバムづくりに参加して知り合った歌手の矢野顕子さん(ニューヨーク在住)からも絶賛された。 ハラカミさんの曲作りは「打ち込み」と呼ばれる方法で行う。まずコンピューターソフトの画面で楽譜を書く。それで電子楽器を制御し、複数の音を同時に奏でる。 曲のコンセプトを最初から決めず、あえて言語化しない。むしろ作業は彫刻に似ているという。「もやもやとした形が頭にあって、ちょっとずつ削っていって形が見えてくる」。何度も試聴して音色や楽譜を修正して仕上げていく。 曲に主旋律はない。さまざまな音が次々と現れ、映像のように曲のムードが作られていく。「自分の耳に気持ちいい音を引き立たせるように曲を構成している。きれい、悲しいといった一色の曲は作りたくないし、安易に帰結させたくない」と話す。「高価な機材から良い音が生まれるわけでない。音楽は、音色の目新しさより構成が大事」と最新式の機材は使っていない。 音楽との出合いは、小学校の時にピアノを習ったのがきっかけ。高校ではマイク付きのカセットテープレコーダーを使った多重録音に興味を持ち、自宅録音の音楽を作った。1989年に京都芸術短期大(現在、京都造形大)の映像コースに入学。自ら撮影した映像に音楽を付けるため、友人からシンセサイザーなどの機材を借り、「打ち込み」音楽を本格的に始めた。 バブル崩壊後の就職難の時期に卒業。実験的な映像を手がける一方、食べるために、企業案内のビデオやビジネスショーのビデオのテーマ曲などを請け負った。「明るい曲、さわやかな曲などクライアントからの要求に合わせて曲を作った。器用なので仕事はこなしたが、むなしさを感じ、そこから逆に自分のやりたいことが見えてきた」と話す。 96年、たまたま東京のレコード会社に送ったデモテープが、電子音楽の責任者の目に止まり、テクノアーチストのケン・イシイさんのアルバム作りに参加。これがきっかけとなって98年に自身のCDデビューを飾った。 京都のロックバンド「くるり」の曲に新たな音の素材を加えて再構築したり、歌手のUAらに曲を提供している。原曲と全く違う曲調に仕上げて、新たな魅力を加えるアレンジ手法の評価は高い。 仕事は増えたが、東京に行こうとは考えていない。学生時代から、京都に住み続けているが、仕事上、レコード会社やスタジオの集中する東京から離れている不便さは感じないという。 ブロードバンド環境が整った今は、膨大な容量を必要とする音楽データの転送は自由自在だ。矢野顕子さんのアルバム作りに参加した時も、京都の自宅で作った音声データをメールに添付してやりとりした。 「京都では情報に振り回されないため、創作に集中できる」と創作上の利点を話す。 これまでに、フランスやドイツなど海外でライブを行った。「地味な自分の音楽で、観客が盛り上がってくれるのはうれしい。作り続けていれば、理解される」。活動の舞台は、京都から世界へと広がっている。 [京都新聞 2006年3月26日掲載] |
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