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「eスポーツ」はスポーツか まずは選手の声聞いて

運動部 後藤創平
所属チームでサッカーゲームの練習に励むeスポーツのプロ選手・黒豆さん(大阪市内)
所属チームでサッカーゲームの練習に励むeスポーツのプロ選手・黒豆さん(大阪市内)

 コンピューターゲームの腕前で勝敗を競う「eスポーツ」が注目を集めている。大会の盛り上がりだけでなく、五輪種目採用への動きもあり、ニュースで取り上げられる機会も増えてきた。その度に問われるのが、eスポーツはそもそもスポーツなのかという点だ。取材を通じて、eスポーツで活躍する複数のプロ選手と出会った。ゲームはスポーツじゃないと一蹴するのは簡単だが、まずは選手ら現場の声を聞いてほしい。

 「明治安田生命eJリーグ」に出場したプロゲーマーの黒豆さん(26)は、サッカー専門のeスポーツ選手だ。中学までは部活動でサッカー部に所属。京都の高校を卒業し、大学時代に誘いを受けてプロになった。「肉体的な疲労はないが、思考を続ける集中力が必要で疲れる。日によって調子は変わるし、毎回ベストのパフォーマンスを出せるわけじゃない」とトップレベルで戦う難しさを語った。

 画面の中で選手を操り、相手の守備をどう崩してシュートまで持っていくか。戦術は現実の競技と同様に奥深く、日々進化する。研究と操作技術の鍛錬が不可欠な世界だという。インタビューの最中、普段のスポーツ選手への取材と同じような感覚を持った

 京都のゲーム制作会社のクリエーター板垣護さん(34)は「ゲームに真剣になるなんて恥ずかしいという概念を変えたい。ゲームを楽しむことで人生は豊かになる」と力を込める。大人になってサッカーや野球に夢中になるのは誇らしく、ゲームは隠れて楽しむもの−という考えは、確かに理由がよく分からない。

 子どもの頃に家庭用のテレビゲーム機で遊んだ世代が親となり、ゲームを身近な存在と感じる人は圧倒的に増えているはずだ。学校の部活動にゲーム部ができ、甲子園のような大会が誕生しても不思議ではないと思う。時代とともに、言葉や物事の考え方は変わる。

 ゲームやeスポーツに否定的な意見の理由として、暴力的な内容への懸念や依存の問題がある。明らかに殺りく性を含んだものは論外だが、格闘技のような対戦型ゲームを観戦しているとボクシングを見ている時のように力が入る。世界保健機関(WHO)はオンラインゲームなどに過度に依存する「ゲーム障害」を新たな疾病に追加したが、スポーツ界でも行き過ぎたトレーニングが原因で、けがをしたり心の健康を害する事例はある。ゲームでもスポーツでもリスクをしっかりと説明した上で、誰もが熱中できる環境づくりが必要だろう。

 スポーツの語源は、日々の生活を離れた気晴らしや遊び、楽しむことにあるとされる。eスポーツがスポーツか否かの議論は、芸術とは何かという問いと似ている。個人の考えによる部分が大きく、答えを出すのは難しい。時代の空気にも左右される。

[京都新聞 2018年8月1日掲載]

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